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一人芝居ミュージカル短編集Vol.1

11月10日ソワレに一人芝居ミュージカル短編集Vol.1を観ました。

会場は

西荻窪 Atelier Kanon

公演詳細については以下のリンク先をご参照ください。

https://note.mu/rickytickyasu/n/ne264b66ffa02

用意された10作の作品(男女5作品ずつ)を一回の公演で3作品ずつ上演していく企画、3作それぞれに息を呑み、他の作品を観ることができないことが実に残念に思えました。

 

(ここからネタばれがあります。ご留意ください。)

観ることができた三作品の印象を思いつくままに・・・

*** ***

「それでも私は踊る」

題材:イサドラ・ダンカン
主演:福麻むつ美
脚本:村本篤信

役者がステージ衣装を晒し背中をみせたとき、その背筋にこの人はダンサーだと思った。印象は裏切られることなく、空間は彼女の身体と歌唱のパワーに満たされていく。華のある舞台、一瞬の切れ、舞台にとりこまれ、でも、気がつけば、それは一人のダンサーの生き様に重なり、生きることとのユニゾンとなり、やがて彼女自身に心を捉えられていく。終演時には、高揚の中にステージの時間の輝きから垣間見えるバックステージの彼女の生きる素顔がともに深く刻まれていた。

 

「生殺しの蛇」

題材:ジュディー・シル
出演:ハマカワフミエ
脚本:黒澤たける

美術に観る側を絡めとる創意があって、舞台中央に垂らされていくものが蛇の寓意と寄り合わされ女優が描くものに具象とその先の時間の実存感や奥行きを与える。女性の様々なテンションや内に抱えたものや感情の色、役者には、それを様々な時間のありように連ねるだけではなく、女性の表裏や移ろいとして観る側までをその心風景に取り込む力があり、それらが満ち溢れ出すような彼女の歌が幾つもの光景や心情の立体感の先にあることにも強く繋がれる。
終演時にはまったく異なるいくつかの印象をひとつに纏った女性の姿が、とても生々しく、ビビッドに思えた。

 

piano black

 題材:バルバラ

 主演:岡田あがさ

 脚本:須貝英(monophonic orchestra

描かれるのはひとつの夜に流れる時、そこに彼女の人生が浮かび上がる。女性の風貌に捉われ、その歌に心を奪われ、彼女の言葉に刹那の彼女が抱くものを受け取りつつ、でも訪れるものはそこに閉塞せず、彼女の記憶の俯瞰として観る側に残る。演じるものの存在感に追い込まれながらも、それがただ熱となって観る側を焼くのではなく、むしろその奥の醒めたベルベットのような虚無とともに彼女の時間となることに閉じ込められる。終演時には解像度を持った深く、でも塗りつぶされることのない彼女の記憶の質感に浸されていた。

*** ***

一つずつの作品に異なって心を染められがっつりと満たされていたし、ミュージカルを観た後の充足感も目一杯あった。更に細かい精度が欲しい部分も皆無ではなかったのですが、そんなものはたやすくすっ飛んでしまい、もう大満足でした。
でも、そのこととは別に、一人芝居ミュージカルというのは、いわゆるミュージカルとは似て非なるものだとも思いました。

なんだろ、音楽と物語の関係がミュージカルと今回の作品達では真逆、ミュージカルは歌で物語を編み世界を膨らませて行くのに対して、一人芝居ミュージカルでは物語が役者によって紡がれその世界が歌に結実していく。そこには歌の印象から、もしくは歌の印象に至るまでに、役者たちの手練によってミュージカルとは異なった描かれるものの切っ先を違和感なく差し入れるスペースがあって、歌や音楽(ダンスなども)に明確な意図やニュアンスを与え、歌の隙間にある滲みや曖昧さをキレイに取り去る。ミュージカルとしての広がりや時としてエンターティメント性なども担保しながら、一方で描かれる世界は役者達が紡ぐ言葉や空気の解像度で音楽をとりこみ、描かれる時間を研ぎ、言葉だけでは語りえない登場人物の心風景に観る側を閉じ込めてしまうのです。観ていて、それぞれの歌の力に取り込まれつつ、そこに至るまでに役者達によって描かれたものを塗りつぶすのではなく、照らし出し、際立たせ、映えさせることにぞくぞくした。でも、それは、いわゆるミュージカルに現れるものとは異質のものに感じられ、新しい領域の表現とも思えた。

繰り返しになりますが、上演された他の作品を観ることができなかったのがかえすがえすも無念。作品の再演や続編があれば、それはもう是非に観たいと思いました。

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