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うさぎストライプ『みんなしねばいいのに』

2016年10月23日にアトリエ春風舎でうさぎをストライプ『みんなしねばいいのに』を観ました。10月31日に再見。

公演情報についてはこちらをご参照ください。(リンクの貼り付けに問題があるようでしたらご一報ください)

http://usagistripe.com/minna

(ここからネタばれがあります。ご留意ください)

ステージが始まると、まずは、ちょっと下世話で漫画チックな日常があって、そこから次第に日常からすこしズレた非日常が紡がれていく。冒頭の芸術的にチャラい男(超褒め言葉)と仕事に疲れた女性のシーンから、次第に彼女とそのマンションの住人達の様々なありようが引き出される。すこしずつあらぬ方向に外れていくその語り口には、最初こそ違和感があるのだが、やがて部屋に幽霊があたりまえに存在したり(シーンOから置かれているのもなかなかにしたたか)、建前とモラルハザードのありようや人間関係が紡がれたり、役者達がうまく密度を与えながら編みあげる様々な住人たちの苛立ちや鬱屈や懈怠を観ているうちに、次第に彼女たちの生活の実存感と描かれる世界の非現実性というか妄想のボーダーが崩れ、崩れた先に女性たちが漠然と抱いている澱や感情や様々なものが歪み、滲みだし、あふれ出す。

現実と重なりつつ次第に乖離していく様々なこと、腕を切られることの繫がりやコンビニ店員の二面性、羊の擬人化、外の世界を支配している狂気など、どこかルーズに繋がるいくつもの色の糸が差し込まれ、交わり、それぞれの更なる踏み出しとなる。

それが、ハロウィンの、クリスマスやイースターなどとは異なる歯止めをなくした悪戯な箍の外れ方として観る側までを巻き込んでいくことを、最初は訳もわからず可笑しく眺めていたが、そこに女性達のどこか行き場を失った現実が透けて見えだしてからは、この語り口だからこそ描き得る女性たちひとりずつの漫然とした閉塞の実存感に引き込まれる。タイトルの「みんなしねばいいのに」という言葉が、なにかへの売り言葉から冗談に一つまみの実感のこもった感覚に変容するころには、作り手の企みに、しっかりと女性たちの抱く感覚を渡されていたことに気づく。音楽や照明、音響などもその世界に観る側を浸し巻き込んでしまうよい仕事であったと思う。

一人ずつの女性の風貌を芯に描き込む女優たち(小瀧万梨子 緑川史絵 長野 海)の力量に加えて時に女性の視座からのバイアスのかかった態での男優(亀山浩史 芝 博文)の人物の作り方も良く研がれていた。また、彼らが描き出す世界にありつつ、染まらず、淡々と距離を保ちながらゆうれいを演じた立蔵葉子も好演だった。

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