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アジア舞台芸術人材育成部門 国際共同制作ワークショップ上演会(3作品)の感想

2016年11月18日ソワレに東京芸術祭 交際共同制作ワークショップ上演会を観ました。会場は東京芸術劇場シアターウェスト。

 

公演の詳細については以下のリンクをご参照ください。

 

http://tokyo-metropolitan-festival.jp/program/542/

 

当日配布された資料をそのまま引用

「この上演会は、日本、マレーシア、中国の演出家を中心にした3つのチームが「化粧」という共通テーマで捜索した小作品の上演と、演出家によるアフタートークを交互におこないます。」

実際の作品を観て、あっと驚くというような斬新さはなかったのですが、むしろそうだからこそ、日本人というか日本の舞台に慣れ親しんでいる観客にとって、構えることなく自然体に新たな広がりや豊かさを感じることが出来た3作品だったように思います。

 

(ここからネタばれがあります。ご留意ください)

3作品の感想を上演順に。

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[a]

3名の出演者が舞台後]方に映し出される「a」を頭文字にした単語と身体表現をすこしずつ変化させ重ねていく。その言葉の繋がりがAppleとかの単純なものから始まってルーズに繫がり枠を超え踏み出していくのだけれど、その発想やどこか変則ドミノのような広がりの感触が、なにか日本人の発想と微妙に異なって感じられて、最初は少しとまどい、やがてじわじわと面白くなっていく。身体の使い方や、発想を次につなげるポイントや間が、それぞれの演者にとってはとてもオーソドックスに演じられているように思えて、でも3人のズレや重なりがどこか常ならなくて、終ってみれば、冒頭の「a」という滴からの波紋の広がりのような印象がのこる。その広がりに観る側の記憶の手垢のついていない新しい肌触りを感じた。

 

[enTRANCED]

冒頭、チベットの修行僧のような所作で横並びに出てきた演者たちを観た時には、寡黙な舞台かなと思ったのだけれど、とんでもない。演者たちの身体が、馴染みをもった身体の動きとどこか見慣れない身体の言葉を舞台上に混在させながら刹那を紡いでいく。やがてガムラン音楽を想起させるような身体の動かし方などが現出しするあたりから目が釘付けになった。なんだろ、動きに音の質感が編まれ、身体からリズムや旋律すらあふれ出し、組み上がる。携えている異なる身体の言語が時にバラけ、にもかかわらず同じベクトルに束ねられる。突飛さを感じることはなく、身体のバランスが時にクラシックバレエのような共通の身体の使い方に担保され、にもかかわらず音楽に身体を編みこんでいくのと真逆のベクトルで身体から発するものがリズムやメロディを編みさらにパワーを与えられ観る側を凌駕するに至る。いくつもの一瞬が観る側の掌からこぼれることなく、でもこれまでに体験したことのない新たな伝わり方で観る側の新たな引き出しを引いてくれる。観終わって更なるものが紡がれるための助走を見るような不思議な高揚感が残った。

 

[Kiss Kiss Bang Bang 2.0 (a work-in-progress)

人の距離やコミュニケーションの形態が、キスに置き替えられて舞台に描かれていく。最初はシンプルに、少しずつシチュエーションをつくって作り手の描くものから観る側に様々に想起させていく。キスを受入れるだけではなく拒否するというところから、疎外や差別の感覚が渡されたり、観客とのコミュニケーションをはかったり犬との関係を舞台にというあたりから、ステレオタイプな舞台上の関係性が、舫いを放たれキスということから垣間見える世界がどんどん膨らんでいく。キスをキーにしてあたかも言葉のように様々なニュアンスを紡いでいくその広がりが観る側の予想を素敵に超え、踏み出し、時には裏切っていくなかで、作り手や演じる役者達の個性が次第に舞台上に滲み出してくるのも観ていて楽しかった。

 

*** ***

3編はそれぞれにまったく異なるメソッドやテイストの表現だし、観る側も異なる筋肉を使って鑑賞しているような部分がありましたが、そうであっても、それぞれの表現に共通してのこれまでに体験したことのない新たな感触が訪れることに心を捉われる。
なんのこっちゃと思われるかもですが、お正月のお雑煮に三つ葉と一緒に香菜が入ったみたいな感じがあって、おもしろかった。

なにか、この創作たちの延長線上に、観る側が未体験の新たなスパイスを体験するような、其々の作り手や演じ手の新しい表現が芽生える予感もしたことでした。

 

 

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