ぽこぽこグラブ『あいつをクビにするか』@花まる学習会王子小劇場
初日を観劇。
照明に力があった。舞台の要素を時には括り、あるいは一つずつの要素ごとを映えさせていくような感じ。冒頭から舞台美術にも惹かれる。
物語もきちんと通っていたし、時間の行き来も観る側を見失わせることなく、描かれるものの骨格もまっすぐに受取ることができた。
ただ、観終わって、物語の内容に比べてとても淡々とした印象が残る。ラストシーンのなげっぱ感には本来もっと強いインパクトを醸す意図がある気がするのだが、終演時の印象は面白いくらいすっと滅失する。
今と過去の因果はしっかりと紡がれていたのだが、シーンのボリュームバランスがやや歪んでいるようにも思うし、トーンもまったく異なる。繋ぐ色や物語を解くための歯車的なものも脆弱に感じられる。一つずつのシーンには観る側を繋ぎとめるものがあるのだが、それが全体像に踏み出す時(すなわちラストのショット)に物語の切っ先というかフォーカスが作品全体からの統一した色調で訪れない。
これって初日だからたまたまなのか、実は作り手が恣意的に作り出している感覚なのかよくわからないのだが、少なくとも初日は観ていて舞台の印象がひとつにまとまらずにやや拡散したままで残った。
余談だが、主人公的なロールを演じた磯部莉菜子が抱くものやなにかの欠落した感覚の作り方には非凡さを感じた。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント