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劇団子供鉅人『組みしだかれてツインテール』、学園ラブコメを昇華させる作劇の底力

2015年6月9日ソワレで劇団子供鉅人『組みしだかれてツインテール』を観ました。

会場は下北沢シアター711。

結成10周年記念公演の第一弾とのこと。

一流シェフが作ったB級グルメ的な要素もあり、エンターテイメント作品を楽しむように気楽に入り込み、その語り口に引き込まれるように見入り、面白くて、しかも一流シェフの料理なので観終わった後にはたっぷりの充足感に加えて主人公たちの過ごした時間の肌触りがとてもしなやかに残りました。

いろんなベクトルに作り手や演じての底力を感じた舞台でもありました。

6月16日(火)まで上演。

 

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください。)

作・演出・出演 : 益山貴司

振付・出演 : 益山寛司

出演 : 

 

キキ花香、影山徹、億なつき、山西竜矢、ミネユキ、益山UG、うらじぬの、米澤知実、東ゆうこ、治はじめ、佐藤ぱぴぷぺ、古野陽大、稲川悟史、

 

 

初日の上演時間は約120分、それなりにボリューム感を持った舞台でしたが、キレとスピードに裏打ちされた語り口で編まれるシーンたちには、関西出身の劇団ならでは設定のかぶき方や下世話さやの尖り方や瞬発力をもった笑いが紡ぎ込まれていて、観ていて圧倒的に楽しいし、観る側を手放さない物語の起伏もあって、時間をまったく感じませんでした。

ステレオタイプに学園ラブコメの看板どおりの世界、設定は高校生の日々に組まれているし、登場人物は先生以外は制服や体操服が中心だし、体育祭や文化祭などという学園もの定番の設定もベタに差し込まれている。不良の雰囲気に純正のラブコメというよりはギャグコミック的なテイストへの寄せ方を感じたりしながら、気軽に昔のコミックを読むような世界に取り込まれ、でも、気が付けば裏側に幾重にも作りこまれた作劇の手練と役者達の研がれた力に引き込まれているのです

入り口から貫かれる表層こそ観る側を欺くがごとくに薄っぺらいのですが、妄想と現実の扉を半開きにしたまま歩みだす物語の枠組みに導かれ良い感じのリズムやベタさを持った語り口で紡がれる世界に誘い込まれてしまうと、舞台に仕掛けられた作意やデフォルメに織り込まれた寓意がじわりとやがて溢れるように観る側に入り込んでくる。

主人公の虚実のボーダーを曖昧にしたHな妄想から始まって、クラスの中のグループのことやヒエラルギーのこと、主人公と友人たちとの距離や関係、クラスメイトにも運動能力抜群の女性がいたり今流行の歴女がいたりと個性が作りこまれ、仲間の感覚や嫉妬なども織り込まれて。それらが滞ることなくサクサクと、面白おかしく、でもその刹那が登場人物の抱く日々の感覚をスッと削ぎ出し、透かし、バイアスがかかった表層を感覚のリアリティに染め変えていく。いくつもの引出しの組み合わせでキャラクターの表裏を支え、その一瞬の印象を舞台に出し入れする役者達それぞれの芝居の切れ、想いの色や深さに加えてそれらが移ろう速度のしなやかさ、ダンスに編まれた創意や身体の細かな使い方がキャラクター達やそこにある時間自体のシンプルなパワーとふくよかな感性と揺らぎを束ね、美術に支えられた場所の舞台への出はけのフレキシビリティや速度が更にそれらを研いでいく。

観ていて最後までへたれることなく貫かれたベタな世界なのだけれど、そこに切り取られた主人公や登場人物たちの1年間の歩みには、この舞台でなければ描きえないであろう、軽くも重くもバイアスをかけられることのないビビッドな時間や想いの感触や質量が残るのです。

散々笑い、ずり下げられたバンツに心奪われておいてなんなのですが、観終わって、主人公たちのその時間のありようが、従前の作品にも感じた、作り手の
醒めた、クリアな、でもあたたかさと尖らず柔らかなペーソスに満ちた視座からの風景として刻まれたことでした。


ずいぶん昔ですが、ディズニーのキャラクターが入ったうん十万円の超高級腕時計を知り合いに触らせてもらったことがあって、最初は値段も知らず文字盤などを見る限りはちょっとレトロな感じでもっと良いデザインの時計がいくらでもあるやろと思ったのですが、手に持たせてもらって驚いた。なんだろ、自分がはめていた安物の時計も分かりやすく今の時刻を教えてはくれるのですが、その時計には、文字盤を眺める自分の時刻ということではなく時計がキャラクターと共に刻む時刻があるのです。持ち主曰く、手練の職人によって作られた時計の数多くの歯車やムーブメントのひとつひとつの精度や組み合わさり方で醸される時計の中の世界があって、それが文字盤のキャラクターを通して伝わってくるとのこと。

観劇後、余韻に浸って遅くなっての帰り道、終電が気になりその時と同じ安物の時計を眺めて、ふっと学園ラブコメの舞台が内包していた世界の感触の精緻さや深さとその超高級腕時計から訪れたものの記憶が重なったことでした

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