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田上パル『プロジェクト7』男女の普遍の意外すぎる導かれ方

1月5日ソワレにて田上パル『プロジェクト7』を観ました。

会場はこまばアゴラ劇場。

しっかりと中華料理店風の舞台美術、その雰囲気の上に編まれた筋立て・道具立ての先に浮かぶ、この語り口だからこそ観る側に伝わってくる男女の結びつきの普遍に心を捉えられました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 田上豊

出演 : 阿久津未歩(田上パル)、飯田一期、ギリコツカサ、島田曜蔵(青年団)、土田祐太、長野海(青年団)、日高啓介(FUKAIPRODUCE羽衣)、福田健二、堀夏子(青年団)、堀りん(田上パル)、安村典久

場内にはいり、まず目に飛び込んでくる中華料理の回転テーブル、設えられた部屋の雰囲気、ある意味目になじんだ具象舞台ではあるのだけれど、そこがどこでどんな物語がやってくるのかは、開演してから暫くの間もまったく想像できませんでした。冒頭からそれぞれのシーンに置かれるものは寓意に満ち、誇張され、遊び心もいっぱいなのですがそれらが素直に物語のテーマに組みあがってはくれません。
でも、後半になると、そのよくわからなさこそが観る側にやってくるもののベーストーンとなり、主人公たちやそれを取りまく登場人物の想いの肌触りと重なっていく。

一歩ずつ、シーンを紡いでいくその歩みにあわせて、観る側に登場人物たちの状況や、なによりも一人の女性とその女性を生涯の伴侶と望む男性の想いが、少しずつほどけていきます。
それは、ちょいとまどろっこしい感じもあるのですが描かれるものを一瞬に立ち上げるのではなくいろいろに試行錯誤をし、時には袋小路にはまり込み、急ぎ、留まり、苛立つことで、初めて少しずつ浮かび上がってくる景色がある。
中華料理店の空気の向こうに、やがて、男女の記憶のありようや、心の闇の質感や、歩み寄りの逡巡や、想いのほどけ方がしなやかに歩みだし、舞台が塗り換わっていきます。
そこに訪れるものは、直球勝負の台詞で説明されると急に薄っぺらくなってしまうような類のもので、でも、今回の舞台のような語り口だと、観ていて魔法のように、感覚として伝わってくる。

中華料理屋さんの風景の先で観客が受け取ったのは、ありようをそのままに語られてもきっと実感し得ないであろう、ビターさと温度の普遍をもった、男と女の歩み寄りと歩みだしの姿でありました。

観終わって暫し呆然、舞台の表層の作りこまれた風景からは全く想像していなかった物語の組みあがりと紡がれる男女の想いの繊細な感触に驚き、作り手の創意とそれを一つの歩みに紡ぎ上げた役者達の力に舌を巻いたことでした。。

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