Moratorium Pants(モラパン)『恋する小説家』似て非なる映画と演劇の親和性
2014年8月2日ソワレにてMoratorium Pants『恋する小説家』を観ました。
会場は下北沢オフオフシアター。
映画と演劇のセット券が用意されていたので、最初に映画、それから演劇を観ました。
元々の映画があって、その映画をとりこんでの作劇ということだったようですが、ただ、単にコンテンツをコピーをするわけではなく、そこには演劇として表現しうるものへの新たな創意がしたたかに組み込まれていて・・・・。
まあ、物語の骨組みも同じ部分が多く、出演者も相当数かぶっていて、両作品を観て、映画と演劇の似て非なるテイストを味わいつつ、でもそれぞれが互いを膨らませていく感触にも心捉えられました。
ありそうで、なかなかできない、良い試みだったと思います。
(ここからネタばれがあります。ご留意ください)
★動画★
現在、こちらから閲覧することができます;
http://www.jimjim.jp/098/098.html
(2014年 8月12日現在 リンクの貼り付け自体に問題があるようでしたらご連絡ください。対応いたします)
☆演劇☆
脚本:上田慎一郎
演出:上田慎一郎・橋本昭博
出演:橋本昭博(モラパン)、佐山花織(モラパン・38mmなぐりーず)、秋山ゆずき(フィットワン)、福田英史、青海衣央里(東京タンバリン)、佐藤もとむ(温泉きのこ)、岡本裕輝、山中くみ、鈴木明日香、米川幸リオン、星亜沙美、片岡哲也(劇団黒テント)、
(日替わりで高山都、滝沢めぐみ、おかもとえみ(ボタン工場/科楽特奏隊/exTHEラブ人間)
映画は、ちょっととほほな感じで始まるのですが、仕組が次第に見えてくると、その妄想の世界のふくらみと小説とのリンクのさじ加減のうまさが実に良く、どんどん引き込まれていく。
最初に現れる女子高生に不思議な実存感があって、そこにテイストの被ることなく被害者という次のキャラクターが現れ、さらに被ることのないキャラクターが差し込まれ広がっていく感じが、小説が研がれていくグルーブ感とうまく重なって、惹き込まれてしまう。
その結末も、とても映画的で、次につながる時間があって。観ていて全く飽きることがありませんでした。
そして、その後に観た演劇は、最初こそ、映画の記憶をどこかひきづっていたけれど、やがて、同じ設定の中に異なる世界が浮かび上がっていくことに心を捉われる。多くの役者さんが同じロールを演じていたりもするのですが、そこには映画の世界とは異なる空気感や魅力があり、また、その顛末も、映画のスムーズさとは異なる演劇としての歩みや密度を持って舞台を満たしでいく。
観終わって、よしんばタイトルやベースにあるアイデアが同じであっても、同じ世界が描かれているという印象はあまりなく、よしんば同じ表情が随所に見られても、これは同じ骨組みから生まれた別々の作品だと感じました。
でも、続けてみると、不思議なことに、映画の風景におかれたものと演劇の空間に編まれたもの、それぞれの観る側に入り込んでくるものが異なっていることで、それぞれの作品がテイストにもう一段の深さを与えているようにも感じられて・・・。
同じ役者たちが演じるものにも、映画だからくっきり見える感覚と同じ空間だからこそ受け取りうるひとりずつの肌触りがあって.。
なんだろ、映画で描きうるものと、演劇で表現しうるもの其々の限界が、両方の作品の交わり部分でうまくカバーされているようにも感じられて。 映画と演劇の異なりを受け取ることで、それぞれの媒体というか表現の良さを再認識したように思いました。
演劇作品としての魅力もしっかり担保されていて、時間を忘れてまるっと観てしまいましたが、単にそれだけではない、観る側にとっていつもと少し異なる余韻がのこる舞台でありました。
よい、試みだったと思います。
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