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月間根本宗子『夢も希望もなく。』鼓動をもった二つの時間の繋がり

2013年1月14日ソワレにて、月間根本宗子『夢も希望もなく』を観ました。
会場は下北沢駅前劇場。

舞台の仕掛けの中で、リンクしていく時間にぐいぐい引き込まれ、そこから溢れるように訪れる感慨にがっつり捉われました。
秀作だと思います。

(UPモレで少々掲載が遅れてしまいました。)

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出・出演 : 根本宗子

出演 : 福永マリカ、郷本直也、杉岡詩織、長井短、田坂秀樹、鈴木智久(StudioLife)、小林和也(レボリューションズ)、水澤賢人、大竹沙絵子(国分寺大人倶楽部)、片桐はづき、梨木智香(月刊「根本宗子」)

劇場に入ると、舞台には同じ作りの二つの部屋が並んでいて・・・。
そして中央に大きな溝のようなものがあって。
よく見るとテレビやビデオデッキなども下手側は時代がかっていて
上手側は今様で・・・。

開演すると、それぞれの空間に異なる肌触りの物語が紡がれていきます。
下手側には、どこか初々しいカップルの、上手側には、日々の生活を感じさせるちょっと懈怠を感じる男女の朝の光景が置かれて・・・。

そこから、ルーズに互い違いに物語が歩んでいく。舞台上手と下手のキャラクターのつながりは当日パンフレットからもわかるし、舞台を暫く観ていてもすぐに理解できる。
でも、この作品にとってそれはスタート地点で、そこから二つの空間の時間の流れと繋がりが実に強かに描き出されていきます。

異なる時間のひとつのキャラクターをシェアする役者達が、互いにキャラクターの雰囲気を寄り添わせていくのですが、
それが単に容姿とかだけではなく、むしろ言動のトレンドや性格などの現しかたでより結ばれていて。
エピソードの細かい部分の重ねてあわせ強かで
下手から上手へと貫かれるクリスマスケーキやフライドチキンのエピソードや、下手ではバイト先の友人の得意料理のカレーがそのまま商売になったり、下手でプロポーズをした劇団の主宰が上手ではテレビドラマの準主役になっている。
そうして隔てて歩む二つの時間が単純な出来事や表現の結びだけではなく、編みあがる物語のつながりのなかで
次第に経年変化をした10年間がにび色の鼓動とともに観る側を包み込んでいくのです。

やがて舞台にはエピソードのリンクに留まらない、登場人物たちの日々の質量が生まれて、よしんば、下手の歌が上手に踏み出だしたとしても、その日々の俯瞰に至り、ラストシーンでキャラクターが時間の枠を踏み出して過去の自分を抱きしめる姿が違和感なくとてもいとおしいひと時に思える。

また、どちらかの側の時間が紡がれる間、他方の時間が止まっていないのも上手いのですよ。
二つの時間の鼓動が常に重なっていることで、キャラクターたちの過去と今に、静的重ねあわせに留まらない感覚的に伝わってくる因果があって。それは、舞台にこれまでに体験したことのなかった時間に、これまでの体験したことのないような立体感を醸し出していく。

その常ならぬ感覚から訪れる、キャラクターたちの歩んだ時間への感慨に浸りつつ、その先にある見えない未来にさらに足跡が刻まれていくことにも思い当たって。

上手側から照らされた下手側に刻まれた時間の必然を受け取りつつ
下手側から編みあがった上手側の今の肌触りに深く心捉われたことでした。

作り手の作劇の才が、ここ1~2年の公演の積み重ねでさらに開花したように思う。
今年の作り手の更なる飛躍がとても楽しみになりました。

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