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新宿ゴールデン街ソワレ10周年記念公演~シャンソン馬鹿一代~パフォーマンスのクオリティ

2013年1月27日ソワレにて
新宿ゴールデン街ソワレ10周年記念公演~シャンソン馬鹿一代~
を観ました。

会場は新宿ゴールデン街劇場

ミュージカル仕立てのお芝居と3pcsバンドの生演奏をバックにしたライブの2部構成。
多少ラフな部分もありましたが、それをチャラにして、さらに観る側を凌駕していく
出演者たちのパフォーマンスに惚れ惚れ。

とても満たされた時間でありました。
2月7日まで。

ここからネタばれがあります。ご留意の上お読みください。

原案・劇中歌作詞・作曲・出演/ソワレ
脚本 : 吉川純広

お芝居共演/山本大介 おかまさる あけみママ(たかぎまゆ)=ナリーニとのダブルキャスト
ライブ演奏/北園優(ピアノ)うのしょうじ(ベース)BunImai(ドラム)

1月27日ゲスト 美雲 蜂鳥あみ太=四号(ex.どっシャン)

入場して開演近くなっても、場内はけっこう解けた雰囲気で、お決まりの前説などもなし。正面の幕などにも、どこか手作り感があって、開演前のテンションの低さや緊張感のなさに少々戸惑う。

そして、どこかだらっと舞台が始まります。観る側としては舞台に向かう前の緊張感がまったく作れなくて・・・。
で、妙にリラックスした状態で役者が最初のナンバーを歌い始めた瞬間、
それまでの空気からは想像もつかないクオリティに愕然とする。
歌詞がしなやかに沁みこんできて、観る側の内に広がる。
物語の雰囲気ももそのなかに折り込まれていて、ちゃんと残る。
気がつけば、ステージに前のめりになっておりました。

実のところ、そこからも、いろいろに振れ幅の大きな舞台で、
物語もびっくりするくらいシンプルでベタだし、
舞台装置や小道具も手作り感満載だし、
ライティングとて刹那を照らす以上のしたたかさがあるわけでもない。
でも、むしろそのことが、個々のパフォーマーの力をがっつり惹きだしていくことに驚愕。
歌に留まらず、振付にも抜群のキレとふくらみがあり、
舞台のミザンスの粗さなども一気に消し去って。
シーンごとに置かれたもののクオリティにぐいぐいと引き込まれていく。そりゃね、ミュージカルという枠で観ると、
さらに作りこめたり、ちょっとしたことで更なる色を作ることが出来る部分もたくさんあるけれど、
そんな箍をはずして舞台を眺めていると、
この味わいだからこそ際立つ、個々のキャストたちの表現力があって。
気がつけば、少々雑な部分に苦笑をする一方で
癖になるような充足感にどっぷりと浸されておりました。

そうそう、小休止の間に出演者が場内で缶ビールを手売りしていて、
これがきりっと絶妙に冷えていて、日頃呑んでいるビールと別物のように美味しかった。
こういう、観る側が表立って気づかないクオリティも、
しっかりと作りこまれていることに感心。

後半のライブパフォーマンスも圧巻だったなぁ。
そんなにキャパの大きい小屋には収まりきれないほどの、
至福の時間が紡がれ編み上げられて。
ゲストを含めて、とても丁寧に、深く、あふれだすように、ナンバーのひとつずつが舞台を染めて。
生バンドと歌手の呼吸が、互いを際立たせるように重なり
差し入れられるダンスにも、グルーブ感が生まれ目を瞠る。

たとえば夜のブロードウェイでは古びた劇場の壁1枚むこうで極上のミュージカルが供されるように、
あるいは、ダウンタウンの穴倉のようなジャズクラブに息を呑むようなセッションが生まれるように、
新宿の裏通りの小さな劇場に作り手や演じてたちが紡いだ時間が、
さりげなく、でもとてつもなく贅沢に思えて。
さらには、こうして様々な舞台やパフォーマンスが
毎夜あちらこちらで演じられているであろう、
新宿という街の豊かさや懐の深さにも思いを馳せる。

劇場を出て、ほんの少しだけ酔いがのこり、
街の喧騒も心地よく至福の時がゆっくりと解けていく。
満たされて、でもちょっと切ないそんな気分を楽しみながら
駅へと歩みを進めたことでした。

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