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月刊根本宗子『モスキート』ミステリーを土台にした会話のおもしろさ

2013年11月4日ソワレで月刊根本宗子『モスキート』を観ました。
会場は四谷三丁目のバー夢。

ミステリーの顛末を追いつつ、その中に役者たちが透かしいれる愛憎にも見応えを感じました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本 : 河西裕介

演出・出演 : 根本宗子

出演 : 梨木智香 大竹沙絵子 あやか

中央のテーブルが主舞台なのですが、一見場外のように思えるカウンターの向こう側にも演技があって、会場全体で舞台が構成されていく。
謎を解くということだけではない、バー公演ならではの語り口にうまく乗せられた感じ・・・。

客席から始まる冒頭の入りからよく工夫されていて、
物語がとても自然に観る側に切り出されていく。
ミステリーですから、伏線の張り方が勝負みたいな部分もあるのですが、
そこだけをあまりあからさまに感じさせることなく、
でも明らかに何かが仕掛けられている感じを展開に漂わせつつ、
4人の女性たちの芝居が組みあがっていきます。

この作品、ミステリーとしての醍醐味がちゃんと織り込まれつつ、、
登場人物の個性の交わりを観ているだけでも結構面白いのですよ。
役者たちが背負うロールのそれぞれに
ベクトルの異なる色があって、その重なりと歩み出しを追いかけているだけでも、引き込まれてしまう。
中央のテーブルでの会話にがっつり嵌りつつ、
客席の真ん中での語りにしても役者のかもすトーンが生きているし、
これまでの公演では使われなかったカウンターの内側の役者が、
さりげなく、深く、パラレルに、空気を染めている感じにも捉えられて。

梨木智香には語る物のクリアさに加えて場の刹那にボリューム感を与える力があって。この人の演技の強さが舞台の骨となって物語を引っ張っていく。
大竹沙絵子には語る想いの切先があり、なおかつ会話を受けるときにその世界を受けて増幅するような力があって、舞台を骨組みから空気へと広げていく。
根本宗子は場の空気を上手くコントロールしながら場の空気を会話の対立だけのテンションから更に深いテイストに変えていきます。他の役者たちの会話の外側で見せるカウンターの内側でのさりげない演技のしたたかさが、観る側の無意識の領域も強かに物語に引き込んでしまう。
あやか は物語の狂言回し的な部分を担いつつ、3人とは異なるこの人ならではの語り口で物語にさらなる色を作り出していく。
それぞれの役者の個性が本当によく生かされている舞台だなぁとも思う。

古畑任三郎風の解決編もあって。 醸し出されていた場の空気感が翻って納得感にかわる。
でも、そこからの更なる踏み出しがあって、 更なる大外枠で冒頭のシーンとラストを繋ぐ その鮮やかさにも唸ったこと。

従前の劇団のバー公演とはまた一味違った新機軸、重箱の隅をつつくようにすれば突っ込みどころが全くないわけではないのですが、それが気にならないくらいに良く舞台が作りこまれていて、ミステリーとしても、女性四人の愛憎劇としても楽しませていただきました。

こうしてみると、月刊根本宗子、まだいろんな引き出しがあるのだろうなと思う。作品を楽しみつつ、作り手の力に加えて役者や作家にも恵まれた今回の作品を観て、団体のさらなる様々な可能性を感じたことでした。

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