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tea for two『人数の足りない三角関係の結末』仕掛けに嵌って生まれる視野

2013年10月18日ソワレにてtea for two『人数の足りない三角関係の結末』を観ました。

会場は下北沢劇小劇場。

作り手の作劇の企みに、あっけなくがっつりと嵌ってしまったことでした。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・出演 : 大根健一

出演 : 西尾早智子、大岡伸次、小森健彰、湯澤千佳、羽立喬介、柳江麻、天野弘愛

当パンには、3つの物語の出演者がクレジットされています。中央に高い舞台が設えられて、その周りに高さの異なる台が置かれて。そこに役者たちがそれぞれの物語を紡いでいく。

最初の物語はかつて一世を風靡した料理対決番組のオープニングではじまる。そして、時間を巻き戻してそこに至るまでの楽屋の風景が編まれていく。
番組の表層が観る側の記憶から引きだされ、次第にその内幕が解けていくのですが、そこにコミカルさとちょっと恣意的な薄っぺらさがあって。
やがて、料理人が看板にしていたの親からの血筋の嘘や、キャバクラ好きの素顔、さらに裏側の番組の制作者側のご都合主義が切り出され、そこに観る側から取り込まれ、番組の新たな料理人に仕立てられた、市井の食堂の母であり一人の女性のとまどいがしなやかに重ねられる。
また、舞台がそこからさらに踵を返し、そのいい加減さの可笑しさを踏み台にして、テレビに出演するプロの料理人としての矜持をしなやかに切り出すことに瞠目。
冒頭のシーンのリフレインにはもはや全く異なる見え方での世界の広がりと冒頭との感覚の落差によるウィットが作りだされていて、うまいなぁとおもう。

二つ目の物語は、ぼろぼろの服を着た女ふたりと男一人。
唐突にも思えるシチュエーションが少しずつ解けていく感じを、気がつけば前のめりになって追わされていてる。
解けてくる中に、女性達の先輩後輩の戦いからひとりの男の存在が浮かび、さらに、それぞれの想いの顛末がひとつに束ねられていく感覚が、じわじわと面白い。
冒頭の会話がゲームの一部に色を変えたり、互いに五十歩百歩だったりの女性たちの想いの行く末が、上質なコメディの下世話さと変化の理とともに観る側を引き込んでいく。
しかも、そこに見えないさらなる男の姿が垣間見えて、物語のフレームがさらに覆ったりも。
物語の全貌が明らかになっての観る側の解かれ感の先には、さらに指輪の顛末を二人の女性に告げる男の嘘があって観る側の耳をさらに物語へと傍立たせさせる。ちょっとほろ苦くて、でも強かで粋な物語の終わりかただなぁとも思ったり・・。

そして最後の物語は、一見前最後の二話とは脈絡なくはじあ物語は、結婚式の花嫁の控え室の風景。
父親は、そこでもなかなかに虐げられていて、
タイトな花嫁衣裳をちょっと緩める傍にいただけで変態呼ばわり。
ちょっと苛立つ花嫁と、妙に醒めて冷静な母親。
なにかなにげに辛口な家庭劇をみているよう・・・。
でも、その展開からいろんな違和感が生まれ、
観る側をその歪みに引き入れてしまうのです。
一番はじめに感じた違和感は、花嫁の年齢と両親の夫婦生活の期間の不整合だったのですが、さらに、両親が20年前から離婚を決めていたことなども、どうにも勘定が合わず・・・。
で、そこに、従前の二つの物語の影がかさなって、両親が其々の物語に姿を現さなかった二人であること、さらにはこの作品全体の、時間や場所が、大震災にフォーカスを結び浮かび上がってくるのです。

結婚式のあいさつの態で、花嫁によって語られる、3人が共に暮らすために作られた家庭の10のルール、立ち切れた時間と失ったものたちのなかで、立ち切ることのできなかった柵のとともに、仮初の家族がそのルールを元に歩み、生きてきたことが、今、被災地にある現実を切り出し、描きだし、否定することも美化することもなく、ウィットをもって、でも息を呑むほどの作意のキレとともに冷徹に描き出されていく。

よしんばその糸が演劇の嘘によって紡がれていたとしても、舞台上にある花嫁の言葉から導かれる風景には、ミッシングしたものを繕いつつ、歩み続けることの舞台だからこそ表現しうるリアリティがあって。
幾重にも、取り込まれ、覆され、その仕掛けに感嘆するその先に、作品に込められたであろう創意が鮮やかに訪れて。

観終わって、震災が奪ったものと、そのなかで生きていく知恵や、生々しい現実感や、強さのようなものが、どこかほろ苦い可笑しさと時間の感覚とともに残る。それは、言葉とか、画像とか、映像では説明しきれない、舞台という手段だからこそ導くことのできる質感に思えて。

作り手の企みに満ちた「演劇」の力を改めて実感。
作り手は、この舞台をもって、tea for twoとしての舞台は暫くお休みし、一人芝居などを上演するtea for oneに力を傾注していくとのことですが、そうであっても、きっと舞台だからこそ描きうるものを供してくれるはず。

今後のtea for oneの舞台もとても楽しみになりました。

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