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ラフメーカー『面影橋で逢いましょう』場を繋ぎ広げる手練

2013年9月9日ソワレにてラフメーカー『面影橋で逢いましょう』を観ました。会場は桜台 JOY*JOYステーション。

この作品、春に西荻窪ギャラリーRAGANでも観ているのですが、今回は完全版とのこと。
作品として、さらにそこによい具合に枝葉が伸ばされていて、東京に生きる女性たちが纏う時間の質感にすっかり取り込まれてしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

脚本 ・ 演出 : 天有隼佑

出演 : 谷恵莉衣(ラフメーカー)、小鶴璃奈(ラフメーカー)、紺乃タカフミ(八角家)、高橋一真、杉浦雄介、丸山小百合、立田聡実(テアトルアカデミー)

作り手には、場や物語を組み上げるリズムが舞台にあって、最初はちょっと戸惑うのですが、やがて、そのシーンの切り出し方や、ちょっとした音の使い方や、抽象的な美術に馴染んでくると場ごとの空気が、とても自然に思え、舞台に繋がれ流れる時間に取り込まれていく。

長回しのシーンはあまりなく、サクサクと刹那が積み上がり、
でも、そのどこか不規則な重なりが、やがて、ロールたちの日々を生きる感覚のようなものに昇華して。
シーンたちを繋ぐ間というか出捌けなども、ステレオタイプにならずよく作りこまれていて、物語の流れを単調にせず、
舞台にしなやかに時間を編み上げていきます。

一冊の大学ノートがコミュニケーションツールに変わり、やがては物語の綴じ糸になっていく感じが実にしたたか。
一人の女性がその想いを閉じ込めておくはずの日記がルームシェアをしている相手との交換日記に変わっていくことに無理がないというか、寧ろロールから垣間見えるちょっとしたいたずら心と相手を想う気持ちの縒り合されたような感覚に惹かれてしまう。
書く側の台詞としてではなく、受け取る側が時を挟み自らの想いに重ねて、相手の言葉を読み上げることでロールの想いが内と外から観る側にやってくる。、
その1ページずつが舞台の時を進め、季節をひとつずつ越えていく中で、ふたりの日々がばらけさることなく、しなやかに観る側に渡されていくのです。

ノートがさらにコンビニで働く女性を二人の世界に撚りあわせていく展開のやわらかなグルーブ感が
東京に暮らす女性たちの歩みと交わりの熱と質感を導き出して。

役者たちには、刹那ごとの場の空気とロールたちの色をしなやかに携え、さらにはその一歩内側の想いを観る側にしっかり渡す力があって。シーンが細かく繫がれたり、ある意味不規則に作りこまれても、物語が散漫になったりあいまいになることなく、
観る側にしなやかなに積もってくれる。

観終わって、舞台に流れる時間が、少しだけ不器用で、切なく、でもとても愛おしく感じられたことでした。

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