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月刊根本宗子『お酒との正しい付き合い方』酔いに映えるロジックの切れ

2013年8月16日ソワレにて月刊根本宗子『お酒との正しい付き合い方』を観ました。

会場は四谷三丁目近くのBAR夢。

今回も、一歩踏み越えた作品の世界に目を瞠りました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 根本宗子

出演     : 梨木智香 ・ 根本宗子


近隣の工事現場からの騒音の激しさに耐えかねて
眠るためと称して酒を飲んでいる夜仕事の姉妹の話。
前半は、その音との掛け合いのように会話が進んでいきます。
二人の役者とも腕は確かで、劇団員どおしというだけに留まらない場の作り方や会話の呼吸のしなやかさを感じる。

酔っ払いの態ということだけで言うと、良い部分とちょっと硬く感じる部分があって。
恣意的に作られたであろう微妙な空気の噛みあわなさや、しつこさや、
場のテンションの推移などは 十分に及第点のお芝居だし、
たとえば無理矢理にカーラーを外す仕草や、
片方が電話しているときに、
歯止めをなくしたチャチャを入れる感じも
うまいなぁと思う反面、
四肢の動きやテンションがさがった時の声のトーンなど
酔っ払いの細かい所作の一部には、
刹那の仕草が上手く切り取られ過ぎて
全体としてやや細部に縛られた印象に陥った部分があったりも。

でも、そんな中でも、酔っ払いどおしの会話の可笑しさは
きちんと担保されていて、
しかもそんな表層部分の笑いなどで終わらないのが、
この作り手の凄いところで・・・。

後半も姉妹間の酔った態での不毛なアイドル男子の取り合いまでは
まあ、ふつうにある展開なのですが、
そこに酔いで箍が外れたようにこぼれ出た迷惑メールの話が絡み、
アイドルを騙ったそのメールに乗っかる滑稽さが加わり
さらには酔っているからこそあからさまに話せてしまうような、
メールに編み込まれた仕掛けへの俯瞰へと踏み出し
アイドルが与える夢とリアルの世界の関係性までが晒されてしまうに至って
観る側は呆然。
その、どこか表裏をひっくり返した視座が取り込まれた上でのロジックの展開の切れや、
フライデーで引かれたボーダ-ラインの感触や
夢の醒め方の鮮やかさに思わず目を見開く

観終わって、
作り手が一見とりとめのない酔っ払い姉妹の会話に組み上げた、
作品への企みとその貫き方に舌を巻く。
また、その中で、前半のふたりの酔い方が
後半の展開を、単なるアイドルファンの想いのありように留まらない、
別の次元への踏み出しを舞台のトーンとして支えていたことにも思い当たって。
その酔いっぷりの演技自体には、さらに旨味を醸し出す若干の余地を感じたものの、
それが刹那の笑いを引きだすに留まらず、
作品の一番の見せ場をしっかりと際立たせていることに
感心したことでした。

それにしても、この作家は書けるよなぁ・・・。
作品として従前と同じようなカテゴリーや尺の作品群と比べても、
一味異なる新たな切っ先があって。
40分程度の尺なのですが、長さでは計りきれない充実感があって、がっつりと楽しませて頂きました。

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