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『{ARIAKE THEATRE夏}vol.1 いまの小劇場演劇のいま』、観劇の目がリフレッシュされる

2013年7月20日、午後にりんかい線東雲駅から歩いて10分くらいの有明教育芸術短期大学で

「Ariake Theatre夏」

プログラム〈vol.1いまの小劇場演劇のいま〉

を「受講」しました。

いつもの如くお芝居を観る感覚で何の緊張感もなく予約申し込みをいたしまして・・。
受付でチケットではなっく受講証を渡されたのにはちょっとびっくりでしたが・・・。
単なる演劇の公演というよりは、一般にも開放された、大学の公開講座的な扱いだったのですね。

内容はといえば、
とても分かりやすく巻き込み、随所になるほど感を与えてくれる演劇トークと
驚きと見応えをもった2本の舞台の鑑賞でありました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

演劇2本の感想を

・ 『つながらない点と点、その間に、私たちは生きています』

作     :芸術教養学科現役生+OB

構成・演出:中野成樹

出演    :荒木舞花、君塚恵実、黒田智栄、武山裕香、渡辺可奈子(芸術教養1年)

小俣実優、日下部里歩、長縄莉穂、長谷川恵美、馬場優子、本島愛美(演劇コース2年)

大平舞子、友重舞香、谷口善紀、森みどり(演劇コース卒業生)
   


芸術教養学科演劇コース現役とOB作・出演とのことなのですが、
お世辞抜きに面白かった。
平均演劇経験が1年数か月の役者達だそうですが
複雑にニュアンスを組み合わせることは難しくても、
一つの表現を貫く力はきちんと持ち合わせていて
シークエンスをこなしたり、リピートをしたり
バリエーションを少しずつ変化させていったり・・・。

で、そこに織り込んでいくコンテンツがこの上もなくビビットで、ユニークで、面白い。
難しく組み上げたのではきっと上手く伝わらない感覚が、
ワンショットの会話やバリエーションで
すっと切り出されてくる。
単純なルールや
2~3行の台詞やほんの一ひねりだからこそ
インパクトやニュアンスをもって訪れてくるものがあるのです。

役者達も、舞台のテンションをしなやかに作りこんで、
観る側をそらさないし、
ちゃんと掌に載せ身体にまで落とし込んでいる感覚だから
曖昧さがなく、エッジも立っていて、
ブレがなく、安定していて。
また、観る側をすっと掴んでしまうような、
魅力的な個性や演じ方をもった役者が
何人もいる。

ある意味シンプルな、
切り取った刹那をルーズに積み上げたような作品なのですが、
そのトーンでやってくるものひとつずつや重なりに、
目を奪われ、心を惹かれ続けてしまいました。

『スピードの中身(新キャスト)』  

原作   :ブレヒト『了解についてのバーデンでの教育劇』
誤意訳  :石神夏希 
上演台本:中野成樹、熊谷保宏

演出   :中野成樹
出演   :村上聡一、福田毅、竹田英司、田中佑弥、洪雄大 野島真理、石橋志保、斎藤淳子、北川麗

この作品は、以前にアゴラ劇場で観たことがあったのですが、
今回はいろんな工夫が加わり、一方で全体によりシェイプアップされていて、
従前に観たものよりもわかりやすくなっていました。
良い意味でシンプルになったというか、
不要な滞りがなくなっているような感じ。
なんというか、要所がきちんと整理されていることに加えて、
前回見たときにはなかった、
シチュエーションや視座が変わるときのインパクトに溢れる外連なども繰り返し差し込まれ、
シーンというか視座の区切りが分かりやすくなっているというか。
描かれるものが深くくっきりと伝わって来たように思う。                                                                                                                                                                                             

最初に観たときには
かなり不思議な印象が残る作品だったのですが
今回は、単に作品に描き出されたもの眺めるだけではなく
もう一歩踏み込んだ人が生き死すことへのシニカルで確かな感覚にも捉えられて。
なにか、作品のさらなる表情を見たような気がしたり。
また、キャストが変わることで、お芝居の肌触りがかなり印象がかわるのだなぁと感心したりも

見終わって、作品のあらたな一面に触れつつ、
舞台というものは、こんな風に幾様にも研がれていくのだなぁとも感じたことでした。

*** ***

ちなみに、冒頭のトークショーのようなレクチャーも
カジュアルで、奥が深く、目から鱗が落ちるような話もあって
日頃、自分が舞台に感じていることを再確認できたりも。
また、実習(?)というか、2本立てのお芝居で、
演じる力の多様性や
日頃あたりまえのように観ている
キャリアを持った役者たちの表現の奥行きの凄さを
改めて目の当たりにしたような気もしたり・・・。

舞台たちの秀逸さに目を奪われ、楽しみつつ、
演劇に触れる感覚がリフレッシュされたようにも思えたことでした。

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