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劇作家女子会×時間堂presents 『劇作家女子会!』女性が描き込まれつつ、色の異なる4作品

2013年6月13日ソワレにて、劇作家女子会×時間堂presents 『劇作家女子会!』を観ました。

会場は王子小劇場。

4人の劇作家女子の作品は、それぞれに、これまでにも観たことがあったのですが、
今回上演された作品には、もれなく作家としての作品の新しさを感じることができて。

その作家ごとの作品の彩や踏み出しと、
さらには時間堂や客演の役者の力をたっぷりと楽しんでしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

演出 :  黒澤世莉(時間堂)

黒川陽子「彼女たち」

出演 : 佐々木なふみ 長瀬みなみ

公演の冒頭と最後を使って、2幕物として上演。
美容師と客の二人芝居。
前半に、一人の男を巡る二人の感覚が発覚して
後半には休憩室での二人の会話が描かれていきます。

互いに男を自らの手のひらに載せていない事実と、
相手に奪われたくない見栄が
それぞれの話を膨らませていく。
相手の言葉に揺らいだり、
相手を揺らがせるための言葉に紡ぎこんだ嘘が
自らに刺さりこんでいったり・・・。

年齢を重ねているから見えているものと
年齢を重ねているがゆえに抗えないもの。
若いがゆえに見えているものと、
若いがゆえにつかみきれないもの。

一人の男を巡るボクシングのような時間の面白さは、
やがて、どちらも勝者になりえない結末へと導かれて。
その共感部分に至るまでの攻防から
さらなる踏み出しが用意されているのです。

二人の女性の距離感や感情が、
一シーンごとにしっかりと作りこまれていて、
それぞれの心情の変化がだまにならずに
観る側に伝わってくる。
ひとつの台詞や一本の電話ごとの心風景が
二人の距離や空気をよりあからさまに操って・・・。

役者たちマージさせる空気と貫く部分が、
単に物語を進めるだけではなく、
互いの強さや脆さを際立たせていくあたりにも瞠目。
描かれるロールは異なる太さや肌触りをもっているのですが、
それが乖離することなく、
でも交じり合うことなく、
それぞれの心情を互いに惹きだしていく。

戯曲の仕掛けとそれを支える役者それぞれの
異なる色の力量にがっつりとつかまれました。

・オノマリコ「Compassion」

出演 : 菅野貴夫、阿波屋鮎美

冒頭のシーンから、観る側の取り込みがしたたか。
二人の会話がどこかかみ合わないなかでも、
次第にシチュエーションが組み上げてられていく。

最初はかかわりすら拒絶していた男が、
次第に女へとのめりこんでいく、
そのワンステップごとに、本当に見応えがあって・・・。

不思議な物語ではあるのですよ。
始まってからしばらくは、
男と女の距離は近くとも関係は水と油で、
そこには接点すらも感じられない。
にも関わらず、セパレート状態になったドレッシングを
ゆっくりゆするように、
少しずつ、境界線が交じり合い、
最初は厄介払いの如く渡されていた現金のニュアンスが変わり
男の想いや支えていたラインが混濁し、
やがて、財布に抱えていた現金が手渡さればらまかれていく。
そしてその先に浮かび上がる、
男女の心風景があって。

全体から見れば、そんな馬鹿なと思うような展開なのですが、
一つずつの会話に揺れる男の想いを
観る側が否定することができない。
で、一旦受け入れてしまうと、そこからの踏み出しも、
同じように受け入れうることに思えて・・・。
常に違和感がありつつ、おかしいというアラームの音が聞こえる気がしつつ、
気が付けばその歪みに抗うことができなくなっているのです。
中盤以降には、男女それぞれの
表層とは異なる姿があからさまに垣間見えて、
観る側にその更なる歩みと、会話の行き先を追い求めさせる。

まあ、誰でもが演じ得る舞台ではないと思うし
役者たちのそれぞれに、
観る側の印象を少しずつ崩していく精度と切先があり、
その歩みを維持していく持久力があるからこそ
観る側もその違和感から目を背けることなく
目が乾くほどに舞台をみつめつづけてしまったとは思うのですが、
役者に舌を巻くと同時に、その空気やテンションを導き出した、
この戯曲のしたたかさにもすっかりはまりこんでしまいました。

観終わって、役者たちの演技の地力に驚愕しつつ、
そのフィールドを描き上げた作家の作劇筋にも感心。
全体の構造もさることながら、
一つずつのシーンに観る側を閉じ込める
台詞を描き続け
、途切れることなく舞台にシチュエーションを生み出していった
作り手の力量に改めて舌を巻いたことでした。


・モスクワカヌ「バースデイ」

出演 : 直江里美 長瀬みなみ

一番上演時間の短い、どちらかといえば掌編に近い作品なのですが、
底知れぬ深さを持った作品でした。

構造も単純で、
夫の帰りを待つ妻が、
レシピにしたがってケーキを焼いている姿なのですが・・・・
どちらかといえば、感情を排した
レシピの読み上、げが、
女性の想いの抑制と重なり、
バターとマーガリンの置き換えが、
女性の不安や揺らぎを背負って、
次第にケーキ作りから女性の内心の風景へと
舞台を置き換えていくそこまででも、決して凡庸な作品ではなく、
ワンアイデアで女性の想いを観る側に開く秀作ではあるのですが
でも、この作品、そこからの更なる踏み込みがあって・・・。

女性は、想いに捉われ、
ケーキを、込められた暗喩をそのままに、
オーブンに入れっぱなしにして
黒こげにしてしまう。

役者が作り出す狂気と冷静さが、
しっかりと貫かれていて、
だからこそ、
黒く焦げたケーキが、
女性の内心の観る側を凌駕するようなありようとして、
しっかりと晒されて・・・・。
そのリアリティをもった強烈な印象に
観終わってから、一呼吸おいて、
さらにしばらくドキドキしてしまいました。

・坂本鈴「親指姫」

菅野貴夫、直江里美、阿波屋鮎美、長瀬みなみ、河南由良、佐々木なふみ、木内コギト

着想にしても、その物語への落とし込みにしても、
観る側が自然に共感できるユニークさがあって、
しかもプロットがとてもしっかりしているので、
観る側がその分、物語の筋書きにダイレクトにのめり込んでいける。

キャラクターの設定にしても、
そのパフォーマンスにしても、
観る側は何気なく受け取ってしまうのですが、
その一つずつには、
只流してしまうのではなく、
観る側の深いところに眠っていた感覚を呼び覚まされたり、
くすっとさせられたり、
恣意的なベタさに寧ろ惹き込まれたりと、
観る側をシーンごと、セリフごとに揺さぶる
色とりどりの仕掛けが紡ぎ込まれていて・・・。

シラノ・ド・ベルジュラックの如き哀愁をちゃんと抱えて、
でも、POPな感じや、軽質さや、スピード感に惹き込まれ、
舞台にはグルーブ感すら生まれて。
でも、それらを一過性のものとして霧散させない作品としての奥行きも、
きちんと作りこまれていて。
その結末が、ちゃんと観る側を満たしてくれる。

主人公の二人には、
それぞれに観る側を味方につけるだけの
ロールの作りこみがあって。
同級生の女子を演じた3人も、
役者としてのキャパの広さを観る側に印象付けるお芝居。
男子にも、しっかりとリアリティと戯画感のバランスをもっと
舞台上での存在感があって。
また、作品のアウトラインを観る側に描いていく
安定したナレーターの存在も、
作品の疾走感を素敵にしっかりと支えて。

ピュアで、ちょっぴり色香があって、
ドキドキ感も、薄っぺらさもあって・・・。
なによりも、ベタな言い方で申し訳ないのですが、
この作品、ノリがよくておもしろい。

なにか、抗う術もなく、見事に取り込まれてしまいました。

*** *** ***

4人の女子劇作家の方たちそれぞれに、
従前に拝見した作品の印象もありつつ、
どの作品にも、作り手とチャレンジのようなものを感じて・・


時間的にはそれほど長い上演時間ではなかったのですが、
なにかものすごく心地の良いボリュームを感じた
短編集でありました。

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