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ツリメラ レコ発ライブ『お客様の中にツリメの方はいらっしゃいますか?』秀逸なライブの精緻な企て

2013年6月3日ソワレにて、ツリメラ レコ発ライブ『お客様の中にツリメの方はいらっしゃいますか?』を観ました。

会場は渋谷にあるTOKYO VUENOS。

しっかりとしたクオリティをもったライブの充実感に浸りつつ、
その先に垣間見える演劇的な仕掛けのしたたかさに目を瞠りました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 小林タクシー

出演 : 赤澤ムック(MUKUMUKU)
      葛木英(KIRAKIRA)
      岡田あがさ(GASAGASA)

      

入場すると、
小劇場界の手練れの面々が、役者達がスタッフのロールを纏って、
観客を慇懃にその世界に導いてくれる。
受付をされ、メイド姿の女性の案内を受けて。

場内はDJ Niwashiが繋ぎ織り上げていく音に満たされて。
隣に立つ人とすら話が出来ないほどの音量なのですが、
その構成は、観る側を揺すぶり、観る側を別世界に閉じ込め、
主人公たちの登場への期待に導いて・・。
次第にフロアに人が増えていくなかで、ダンスが始まる。
場を観客のざわめきに汚すことなく、
ベクトルをつくり、醸しだされる高揚感に観る側を浸していく。
やがて、それらが満ち、期待が高まる中で、
鮮やかに登場したツリメラの3人、
その容姿にカリスマがあり、場の空気を一気に引き上げて・・。

ショーとしてのクオリティもしっかりと担保されていました。
前半は、キャビンアテンダントのような衣装、
それが、一人ずつの女性としての魅力を際立たせて。
一方でユニットとしてのコンセプトが曖昧になることなく、
一曲ごとのパフォーマンスにも、MCにも、
揺らぐことなく織り込まれていく。
ボーカルにしても、ダンスにしても、
よしんば、それが、世界に冠たるというほどに超一流ではないにしても、
少なくとも、観る側が何かを補うことなく、
身を委ねうるレベルはしっかりと作りこまれていて。
曲もキャッチーな部分をもち、
振付にも、3人のそれぞれが切っ先をもって舞台に映えるための
豊かな創意や細かい工夫があって、
さらに観る側を舞台に釘付けにしていく。
なによりも、設定というかフェイクであるはずの舞台上の世界観や、
ショーパフォーマンスが
女優たちの、紛う事なき本物の役者力にロールの実存感に塗りかわり、
冒頭の密度や温度をへこませることなく保ち、さらにふくらませて、
舞台全体にグルーブ感すらかもし出していくことに、
わくわくしてしまう。

その空気は、intermissionの間にも、
褪せることなどなく、むしろさらなる温度と色になって。

後半には、パフォーマンスに交わるように、
メイドの女性と男のパフォーマンスが差し込まれて・・・。
二人の身体や表情から紡がれるものには、
それだけでも十分にニュアンスを伝えるクオリティがあるのですが、
そこに3人が紡ぐ世界がかさなると、
双方の世界にさらなる奥行きが生まれ、映え、息を呑む。

アンコールまで、
徒に走り抜けるのではなく、
ひとつずつのナンバーとそれぞれの曲に導かれるニュアンスが
舞台上にしっかりと作りこまれていて。
そこには、ダンスやボーカルの単純なクオリティとは異なる、
ツリメラという世界でのショーパフォーマンスのクオリティが
生まれていて・・・。

観客には、GASAGASA様が6月12日からご出演のカスガイ「バイト」(大期待公演です)の
カンパニーメンバーや、
MUKUMUKU様の黒色奇譚カナリア派の方々などいらっしゃって、
空気がさらに美しく厚く織り上がって。

上質なライブを観た後の充足感を抱きつつ、会場を後にしたことでした。

帰り道、文化村のスワロフスキーのお店がちらっと見えて、
ふっと思ったこと。
たとえば、スワロフスキーは本物かといわれると、
トラベルジュエリーなんて言い方をされるように
宝石としてはとても本物に近いフェイクなわけで。
でも、一方でスワロフスキーでなければ作りえない輝きがあって、
だから、スワロフスキーは、
宝石の形をした宝石としてはフェイクであったとしても、
スワロフスキーの色を作り出す宝石の形をしたスワロフスキーとしては
本物であったりもする。

このステージに置かれた、
設定にしても、彼女たちのパフォーマンスをなすことにしても、
当然にリアルではなく、あからさまにフェイクではあるのですが、
3人のツリメラにしても、CDにしても、ポスターにしても、
バーカウンターに飾られた彼女たちの肖像にしても、
スタッフたちが様々に担うロールにしても、
DJにしても、ダンサー達にしても、
そのフェイクを磨き上げ、本物のフェイクへと輝かせるための
ぞくっとくるような力と、技量があって。
このイベント、ショーパフォーマンスとしてのフェイクの中に、
スワロフスキーの輝きの如く、
本物のフェイクを作るための、
様々な本物の力が惜しげもなく注がれているのです。

そして、その作りこまれたフェイクだからこその輝きの中に
作り手が追い求めているであろう、
本物のスワロフスキーの如き、
世界の色や質感や肌触りを感じることができたりもして・・・。

その場にいて凄く楽しかったし、おもしろかったし、高揚感も残りました。
でも、それだけではなく、今さらながらに、
会場に流れた時間の構造は、
宝石のフェイクであるスワロフスキーが
スワロフスキーとして本物であるが如くに
しっかりと、巧妙に、精緻にバイアスのかかった
演劇の世界であることにも思い当たって。

観終わって、この世界や舞台が、
さらにどのように踏み出し広がっていくのか。
そして、その中に、どんな色を見ることができるのか、
このライブの先の展開が、もう楽しみでなりません。

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コメント

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投稿: louis vuitton shoes | 2013/06/25 05:01

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