« 範宙遊泳『さよなら日本-瞑想のまま眠りたい-』異なる次元に織り上がる世界 | トップページ | オーストラ・マコンドー『岸田國士原作コレクション(B)』ほんと、岸田國士がおもしろすぎる »

オーストラ・マコンドー『岸田國士原作コレクション(C)』岸田國士がおもしろすぎる

2013年5月25日ソワレに、オーストラ・マコンドー『岸田國士原作コレクション(C) 』を観ました。

会場はJR両国駅や地下鉄森下駅から歩いて10分ほどの blank A。

3バージョンの公演、まずはCから・・・。

岸田戯曲のおもしろさと、研がれた表現を目いっぱい楽しむことができました。

(ここからねたばれがあります。十分にご留意ください。)

原作 : 岸田國士

振付 : 野上絹代

まずは、5/25ソワレにてCの三作を・・・

「モノロオグ」

演出 : 上野友之

出演 : 一色洋平

女性の一人語りなのですが、演じるのは男優。
役者が登場の際にはちょっとびっくりするのですが・・・。
女優が演じると、ちょっと生々しくなりそうな戯曲が
ジェンダーが変わることで、骨格のおもしろさや、
良い意味で上手く削がれた想いの姿として
織り上がっていく。

しかも、役者の身体の使い方が、なにげすごいのですよ。
左右の足の動きが、しっかりと直線で内外に交差して、
ぶれない。
そのタイトさが、女性の線の細さとなり、
その上にのる手や首の動きも
女性のものとして観る側に女性が醸す様々なニュアンスを伝えていく。

最初こそ、男性の演じる女性という印象で観ていましたが、
ちょっと客をいじる枕のような時間の中で、
語られることは紛うことなき女性の物語になって。
しかも、女性がことばを濁し隠すような想いの内側すら
男優だと逆に違和感なく舞台に乗せられていって。

戯曲に描きこまれた女性の心情が、
女性の色で揺らぎ、観る側に伝わってきたことでした。

「クロニック モノロゲ」

演出 : 上野友之

出演 : :金子侑加、熊谷有芳

短編の戯曲なのですが、構造がちょっぴり複雑で、
物語の進行にしたがって、
その場のありようや、物事の真相が
変わっていく。
戯曲がもつ構造を、二人の女優がジェンダーを乗り越えて、
一歩ずつ観る側とともに歩んでいきます。

この作品の展開にも、
役者たちの身体の使い方がさりげなく裏打ちされていて、
台詞に加えて、女性らしさと女性を超えた男性らしさが
その動きの一つずつで担保され重ねられて。
舞台を満たしていた冒頭の女性の視座が
やはり女優が演じる男性の表層に導かれ、
次第に塗り替わり、
男性の想いの表裏の様相に置き換わっていく。
作品が2人芝居として演じられるなかで、
表見上の男性を女優が演じることが、
冒頭の女性が二役の如く
その内心の声となることの違和感を拭い去っていて。
それは、冒頭から女性の色香がしっかりと描き込まれ、
男の所作が、身体の使い方も含めて
良く作りこまれていることを際立たせてもいく。

この作品を同じジェンダーの2人で演じることで
戯曲の構造に内包されているニュアンスが
さらに鮮やかに伝わってきたようにも思え、
役者の一瞬を紡ぐ力に加えて、演出の創意にも舌をました。

最初の2作品は上野演出でしたが、
ともに女性の振舞いや伝わってくる内心が
とても細微に女性の質感や美しさを伝えていて。
役者たちの力に加えて、
女性の美しさをあざとさを持たずにとてもナチュラルに導き出す
演出家ならでは演出の力量にも強く惹かれたことでした。

「風俗時評」

演出 : 倉本朋幸

出演 : 金原直史、久保田南美、後藤剛範、小林涼太 斉藤麻衣子、島岡亮丞、武本健嗣、土屋咲登子
      でく田ともみ、中田麦平、 NIWA、野口卓磨、 蓮根わたる、松木大輔、宮崎雄真、村上直子
      安川まり カトウシンスケ、兼田利明


休憩をはさんで、場内の雰囲気も緩んだ場内に、
いきなり20人近い役者たちが、制服や戯画的な衣装を纏って
それこそ軍靴の音を響かせるように入り込んでくる。
元々そんなに広い会場でもないわけで・・・。
役者たちが客席的なエリアすら舞台に変えて
場内には一気に溢れかえるような混沌が形成されます。

章がコールされ、様々なシーンが重ねられていく。
最初は、医院で、突然ある部位を痛みに襲われるという奇病を治療する姿なのですが、
やがて、警察や学校、さらには床屋や家庭やホテルにまで舞台は移り、
突然痛みを発する人を軸に次第にその時代の、様々な階層のありようが
切り出されていきます。

章ごとに、どこか突飛で、時代の匂いとバイアスがかかっていて、、
時に薄っぺらくコミカルでもあるのですが、
役者たちには、シーンや0人物のありようを支え
見識や思想の深浅をしなやかに担保するに十分な力量があって。
会場を満たし続けるテンションと、積み上がるそれぞれのシーンの色合いが、
時代の様々な断片を風景や表現に変え編み上げていく。

まあ、役者たちのそのパワーや色があるからこそ、
成り立ち、見続けうる作品でもありまして・・・。
気が付けば、その時代の様相や閉塞に
会場全体がどっぷりと浸されていて・・・。

また、舞台全体の動きやミザンスにも力感と繊細さがあり、
舞台のフォーメーションや所作や、
台詞で紡がれる世界観を
群舞のごとき動きが要所でしっかりと支えていることにも
思い当たる。

最後に、作品自体が、2.26事件の直前の
姿の描写であることが明かされます。。
(戯曲のまま)
舞台は映像などとともに
しっかりとその座標をさだめて・・・
そこに、時代の、生き物の如くの、
抗うことのできないうねりを感じて、
底知れない感覚に深く捉われたことでした。

*** ***

観終わって、岸田戯曲の面白さに驚嘆。
まだ、公演期間の前半ということで、
この舞台、さらに様々に熟していく予感もあって。

他のバージョンを観ることも本当にたのしみになりました。

|

« 範宙遊泳『さよなら日本-瞑想のまま眠りたい-』異なる次元に織り上がる世界 | トップページ | オーストラ・マコンドー『岸田國士原作コレクション(B)』ほんと、岸田國士がおもしろすぎる »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オーストラ・マコンドー『岸田國士原作コレクション(C)』岸田國士がおもしろすぎる:

« 範宙遊泳『さよなら日本-瞑想のまま眠りたい-』異なる次元に織り上がる世界 | トップページ | オーストラ・マコンドー『岸田國士原作コレクション(B)』ほんと、岸田國士がおもしろすぎる »