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あなざーわーくす『バブルのヒデキ』場に観客を巻き込んで

2013年5月18日夕方、あなざーわーくす『バブルのヒデキ』を観ました。

会場は駒込駅から5分ほどのところにあるラ・グロット。

高さをもった、でもタイトな印象もあるちょっと形容しがたい形状のスペースを生かし、
役者達が、観客をとことんまで巻き込んでいく。

そのパワーにおされ、役者達の演技力にがっつり惹きこまれて・・・。

観終わって不思議な高揚と満たされ感がありました。

(ここからネタばれがあります。十分ご留意ください)

脚本 ・ 演出 : わたなべなおこ

出演 :大西智子、髙木雅代、髙橋美貴、菊川朝子(Hula-Hooper)、わたなべなおこ

冒頭から、場内にはアットホームな雰囲気があって。
そして、一旦開演すると、意的にベタに組みあげられた物語には、
観る側の空気をいかようにも受け止める表層のラフさが生まれ、
自由に作りうる刹那のスペースみたいなものが担保されていて。
そこに、舞台にある一人ずつの内の役者筋が、
時にパワーで緩急を自在につけ、
あるいは刹那を細微に編み上げつつ
冷静にシーンのフレームを作りこみ、組み上げ、
あげくには観る側を舞台にまで引きこみ
観る側を浸しこんでいく。

まあ、開演前には当パンを読んでおけとのアドバイスを受けつつ、
何が始まるのかがわからない舞台に、
最初はちょっと身構えたりもしたのですが、
そのとまどいも、物語が進み、
役者たちのしたたかな舞台への導き方に次第に心を許し、
引きこまれ、共に遊んで楽しくなることで、
むしろ、後半に観る側の箍を外し
客席から踏み出すためのの振り子のようなパワーとなって。
場内もれなくいじりたおすような巻き込みにも、
役者たちが場の空気感を掌に載せていて
揺らぎやためらいがなので、
観る側も躊躇なく委ねることができるのです。
その中で、役者其々の豊かな切っ先を持った台詞や所作に
場の空気が面白いように変わり、
豊かな遊び心が客席と舞台のボーダーを消し去り
劇中での映画制作の世界にまで観る側を誘い込み、
そこに描かれた時代の雰囲気のデフォルメや、
作り手たちが幼少のころに擦りこまれたであろうその世界の感覚が
温度を持ち、観る側をも共振させていく。

時に目を瞠り、ドキドキし、
素敵に微妙な可笑しさや、
したたかに導かれる苦笑に導かれて。
そこには観る側を意識させることなくつなぎとめる密度があって、
さまざまなデフォルメや、刹那ごとの役者たちのポジションや
ミザンスも丁寧に作りこまれていて・・。
気が付けば、劇中劇の
ビデオカセット(!)に刻まれた時代の肌触りが
タイトルの時代とともにがっつりと蘇り、
その時代を見つめての、
当時と変わらない、でも紛うことなき作り手の今の感触として
観る側に置かれているのです。

舞台上のいろんな仕掛けも本当に楽しく、
しかも、それらを企画倒れにすることなく貫き膨らませる
様々な熟達があって。
たとえば、
観客に赤い糸を引かせるアイデアと物理的な工夫にしても、
驚きをワンアイデアで終わらせることなく
その舞台の状態にさらなるシーンをつなげて
 観る側から舞台のテンションを切ったり醒めたりする刹那を取り除き、
さらにのめり込ませていく力を生み出していく
作り手の創意が加えらえていて。
舞台で観客全員を引っ張り出して動かすことにしても、
あらかじめ、席で花を演じさせたりと、
観る側の逡巡をさりげなく解いているから、
場の流れが滞ることなく、気持ちよく全体がそのシーンに取り込まれていく。
しかもそこには観る側自らに伏線を置かせるような仕掛けが、
内包されていて
表見上チープな物語の終演を
舞台の熱を冷ますことなく導く企てにもなっていて。
それらが、スタッフの顔に戻っての段取りではなく、
役者たちが貫き演じるロールを脱ぎ捨てることなく行われるから、
観る側の意識も舞台の世界から離れることがなく、
まるっと乗せられてしまう。
いじられることも、ましてや舞台で体を動かすことも、
冷静に考えると、
それなりに抵抗感があることなのですが、
それが物語を追う感覚でできてしまうのは
さりげなく凄いことで・・・。
終演の高揚を更に極大化させる撒き物にしても、
ベタに見せかけて、実はとてもしたたかで上手いなぁと思う。

終わってみれば、まんまとその世界にのせられて、
冷静に考えると物語に不釣り合いなほどの
不思議な高揚感が残って。
それが少し落ち着くと、
観る側を、そこまでにしたたかに掴み取り導いていく
どちらかといえばベテランの域にまで至った、
まさに脂の乗り切った女優たちのそのパワーに思い当たり
改めて感じ入ったことでした

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