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ナカゴー『ポジション』舞台を怖さにまで昇華させる描き込み

2013年5月4日マチネにてナカゴー『ポジション』を観ました。

会場は王子駅からほど近い北とぴあ。

劇団員のみの公演。
そこには、これまでの作風を受け継ぎつつも、
ここ数作とはことなる語り口の試みが生み出す、
物語のクリアさや精度も感じて。

そして、いろいろにぞくっとする舞台でもありました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本 ・ 演出 : 鎌田順也

会場は、14Fのカナリアホール。
パーティやボールルームにもなりえるスペースなのですが、
そこに囲みの客席が設えらえ、
舞台スペースには、ちゃぶ台とおざぶ、
さらには様式便器と男女の靴が並べられて・・・。
何の違和感もなく、演劇の空間としての空気に
浸されて。

やがて役者たちが現れて、
最初にト書きのように語られる
登場人物や前提となるシチュエーションが
観る側をしたたかに物語に導いていきます。

元生徒と結婚した先生の他の生徒との浮気がばれた中での
当事者たちの気まずい雰囲気に一気に取り込まれる。
その空気だけでも十分に密度があっておもしろいのですが、
でも、それは描かれるものの入口にすぎなくて・・・。

むしろ、その状況が収束した態から、
揺り戻しのように浮かび上がってくる、
それぞれのロールが互いに抱く
染みつき消えることのない想いの在り様に
じわじわと捉われてしまう。

「こういう女」を演じる鈴木潤子が演じあげる
芯に焼付いたものが滲み出してくるような
想いの粘度が実に秀逸。
また、それを受ける側の、田畑菜々子が紡ぐ
表層に作られたかりそめの純真さにも、
垣間見せる想いの禍々しさにも、
鈴木同様に、
観る側の想像力を踏み越えてやってくるしなやかな実存感があって。

その間に置かれた篠原正明が演じる夫の日和見さにも、
女性の揺らぎを更に際立たせる密度があり、
狂言回し的なポジションの女性を演じる日野早希子の、
自らの想いも垣間見せつつ、
一方でどこか理不尽に取り込まれる感じも、
物語にさらなる厚みを作り出して・・・。

妻から夫に執拗に繰り返されるという
二人の間での「30人31脚」の記憶のエピソードも
タイトルに表された、二人の女性の内なる確執と
それぞれの長年に積もった想いを端的に炙り出していてうまいなぁと思う。
そして、ポップコーン一袋で描き出される、
箍が外れ、抑制を失った女性の想いの溢れる姿に目を瞠る。
役者達の演技の秀逸が、
ボーダすれすれの女性の揺らぎをしっかりと描き出しているから、
やがて踏み越えた女性のありようが、突飛なものとならず、
その所作や表情のひとつずつが、
理とリアリティを持った狂気の溢れ方として観る側を震撼させていく。
黒いごみ袋ふたつ(一袋でないのが妙にリアル)が想起させるシーンが、
想像を導き出し「、観る側を戦慄させつつ、
現実を超えたさらなる世界に、とてもしなやかに導いていく。

ラストの夫のとりつかれ感も、
現実世界からの踏み出しも、
そこまでに組みあがった世界にしなやかに担保されて。

恐怖にどこか心を凍らせたままで、終演の拍手をして。
滑稽さをまったく感じなかったわけではないのですが、
正直、怖さがずっと勝っていた。
でも、「ああ怖かった・・」であとは霧散するということではなく、
一呼吸おいて、作品に作りこまれた人の想いのありようが
心を満たし、しっかりと印象に残っていて。

会場の使い方も、客席を部屋の壁となし、
定義として空気で舞台を建込み
その内外までをつかうのがとてもしたたか。

従前の作品より、
刹那の表現の肌触りは軽くなったようにも感じたのですが、
でも、それは決して作品に内包されるものが薄くなったということではなく、
新たなベクトルの洗練での賜物なのだと思う。
そして、このテイストでこそ描きうる質感もあって。
作劇の切れ味が、
従前にも増してさらに研がれたからこそ、
作り手が新たに表現しうるものが生まれているようにも感じたことでした。

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