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なかないで、毒きのこちゃん『ハロー!新宿ちゃん』、素敵に尖った短編集

2013年5月12日ソワレにて、

なかないで、毒きのこちゃん『ハロー!、新宿ちゃん』を観ました。

会場は新宿眼科画廊0(1F)。

一筋縄ではいかない様々な創意があって、
やられたと思ったり、前のめりになって取り込まれたり、じわじわと世界に引き込まれたり。

観終わって、たっぷりの充足感がありました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

新宿眼科画廊のこのスペースは
作り手たちがいろいろと壁面に描くものも楽しい。

場内に受付が設えられていて・・・。
舞台側の描かれる新宿の線画に目を奪われつつ、
開演を待ちます・・・というか、待っていたつもりだったのですが。

・「すーぱーうーまんちゃんさん」

作・演出:鳥皮ささみ

出演 : 田村優依 谷藤彩

まあ、いろいろにトリッキーな始まりではあるわけです。
たまたま、ちょっとしたきっかけのあとに
その場の空気の密度が作られたのと、
役者の一瞬間を取る表情にアっと思って、
そこから見入る。

描かれるのは、ある意味シンプルな物語というか、
予約の「後藤さん」を待つ態から一気の
女性たちの想いのふくらみなのですが、
冒頭のだまし討ち(褒め言葉です)に加えて衒いもなにもなく、想いを前に進め、
圧倒的な高揚に至らしめる舞台の歩み方が凄い。
冒頭の本来寡黙であるべきロールのシチュエーションから、
細心かつ荒っぽく、本音が少しずつ滲み出して。
やがて、その歩みに二乗でパワーを加えていく様やり方で、
場に人物の内なる想いがあふれ出してくる・・・。

あるレベルからさらに進めば、
叫ぼうが歌おうが
牛タン屋の店長の息子とお見合いをしようが
もう歯止めがない・・・。
朝、早起きして牛タンを切る妄想のくだりに舌を巻く。

計略込みで観る側を一点に引き寄せておいて、
場内のあいまいな空気を束ねつつ、
そこから強引にレールを敷いて、
観る側を登場人物の世界に閉じ込めてしまう。
これまでにはあまり体験したことのない、
その強引とも思える作劇の腕力に、
がっつり惹きつけられてしまいました。

支える役者のふたりは初見でしたが、
初々しさからの演技の跳躍力に目を瞠る。

見事にやられてしまいました。

「むっつりすけべくん、おやすみ」

作・演出 : 竜史

出演 : 古木将也 川田智美

短編集ですから、時間の制約との戦いでもあるだろうに、
役者たちは最初に1曲まるっと踊って見せて、
観る側を、物語のトーンに浸しこんでしまう。

そのうえで、幼いころからのエピソードを
トーンのしたたかなラフさに乗せて積み上げていきます。
膝を折って時間をもどしたり・・・。、
しなやかで切れをもった身体の使い方が場面の時を導いて。

記憶から切り取られた二人の時間は
どこか意地っ張りで、でもピュアで、
表見とは異なる感触を内に編み込んでいて。
だから、個々の時間がPOPで薄っぺらくならず、
しかも、透けて見えるそれぞれの内心に
違和感がないのです。

そんなふうに舞台にトーンが作られているから、
終盤の、なんというかあからさまで、
それだけが語られるとちょっと引いてしまうような
男性からのプレゼント(避妊具)とともに封入されたメッセージに込められたものが、
その裏側に縫いこまれた想いの瑞々しさとなって
観る側に伝わってくるのです。

避妊具と下世話な劣情とともに描き出されるあるシーンが
うるっとくるほどにピュアに昇華して・・・

二人の役者には、
観る側をとらえるに十分な、
一瞬ごとの魅力的な個性があって。
このふたりがが演じるからこその作品のテイストを作り出す力が、
物語をさらに広げておりました。

「幸不幸ミスマッチ」

作・演出 : 目先剛

出演 : 伊予輪我無 山田佳奈

最初にジェンダーを交換したときには
ちょっと無理があるかなぁと思ったのですが、
無理がないのですよ、これが。
暫くは、女性を演じる男優と、男性を演じる女優の世界だったのですが、
お互いが其々のジェンダーの要所をうまく捕まえていて
次第にその逆転が不自然なことではなくなってくる。

細かい演技力に裏打ちされた
役者たちのジェンダーの切り取りが実にしたたかで
戯画的に見せる態に、それぞれの特徴を実にしなやかに
挟み込んでいて・・・。

そのテイストに重ねられる、
性格のベクトルの失笑系の真逆さが
交換されたジェンダーだと、なぜかとても馴染み、
とても生き生きと感じられるのです。

2つのデフォルメが、
互いの醸すニュアンスや可笑しさを
作品としての膨らみに変えて、
それぞれに内包されている、表層とは異なる感触が、
とてもふくよかに思えて。

作り手の目論見が、やくしゃの力にがっつりとはまって・・・。
見応えがありました。

・「君と暮らせば」

作・演出 : 鳥皮ささみ

出演 : 猪股和麿 真嶋一歌

話を思い出す分には、役者の身体が表現するものが、
とても腑におちるのですが、
冒頭、観客はそのどこかファニーな身体の動きに
ただただ見入るだけ・・・。

二人が夫婦であることがわかっても、
女性の語ることの、箍がはずれたような踏み出し方が
常軌を逸するかどうかのボーダーあたりにまで
どんどん広がっていく。

それはそれで、面白くもありつつ、
なによりも、
描かれていくものが、ただとっちらかるのではなく、
舞台の密度でしなやかに束ねられていて、
だからこそ、男の風情にも、
女性の姿にも、
振り切られることなく、どんどんと引っ張られて・・・。

そうは言っても、流石にどうにもならないくらいに
女性のとりとめのなさが舞台が満ちて溢れそうになったとき、
その世界の現実、妻の死が視座に差し込まれ、
目の前の世界が踵を返して
観る側を浸潤していく・・・。

全てが男性の抱く記憶に収束して、
女性のしぐさのひとつずつ、
その歌舞きかたも、静かな時間も、
おいしくない漬物の味までが、
現実との端境を失った
記憶の色合いで織り上げられていくのです。

役者のお芝居には、
それぞれにこれまで見た舞台とは異なる
新たな表現の質感があって。
観る側からすると間口がひろがったような印象もあって。

また、冒頭の作品とは異なる構造の作品の構造であっても、
想いを剥ぎだす良い意味での作り手独特の力技の秀逸を感じて。
2作品に共通する観る側をどこか凌駕するような語り口が、
この先どんな作品を編んでいくのかもとても楽しみになりました。

*** ***

4作とも、そんなに長い感じはしないのですが、
一方で上演時間よりもはるかにボリューム感を感じて、
でも冗長な感覚はまったくなく、
とても充実していて。

観る側がどっぷりと取り込まれる短編集でありました。

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