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シンクロ少女『オーラルメソッド3』4演目それぞれの作り手の慧眼

2013年5月3日午後にシンクロ少女『オーラルメソッド3』を観ました。

会場は阿佐ヶ谷アルシェ。

3公演4演目を続けて一気に・・・。、
それぞれの作品に、作り手が切り取る愛のありようが、
ときにあからさまに、あるいは寓意を込めて、
さらにはウィットとともに描かれていて・・・。

また、従前に観た作品の再演もありましたが、
作品に込められたものが
演者や会場の雰囲気とともに、
新しい色を醸し出してもいて。

役者たちの出来も良く、個々の作品世界にとりこまれてしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

この公演、3本の内2本をみると、その半券2枚でもう1本が無料になるという
システムがあって。

当初は、これまでに見たことのない作品のみを観ようかと思っていたのですが、
この「お誘い?」に抗しがたく、午後から夜にかけてずらずらっと3本まとめて観てしまいました。

よしんば過去に観た作品にも、新たな世界が生まれていて、
この仕組みがなければ、良い舞台をいくつも見逃すところでした。

脚本 ・ 演出 : 名嘉友美

・極私的エロス/性的人間

Aチームを観ました。この作品は以前に銀座のとても小さなスペースで観ていて・・・。

-極私的エロス

その男女の結婚生活から離婚までの顛末は、
包括して眺めるとちょっとびっくりしたりもするのですが
でも、リーディングの態で語られることで、
当事者自身の感情のありようと
主人公の第三者的な視点が織り上げられていて。
時間が歩み、その結末が、
観る側に腑に落ちる感覚が醸し出されていく。

読み、また紙に書き捨てられていく言葉や感情だからこそ生まれる、
純化されたあからさまなリアリティがあって、
それは、観る側が感じる表層の身勝手さを裏返し
教条的な感覚から解き放ち、
組みあがる想いや感情に理を与えていく。

そこには、この表現だから表し得る、
飾らない想いの実存感と、
その重なりに温度を持って膨らんでいくものがあって・・・。
ことばが不要なバリを削がれ、一見断片的に、
でもその時間が全体の色にめることなく、
そのシーンのあるがままに綴られたものだからこそ、
作り手一流の舞台表現としての束ねや重ねに
常ならぬ切っ先が生まれ
観る側に深く刺さりこんでくるのです。

以前に観た会場より、今回は広さも確保されていて壁の色も真逆。
また、当然に、特に菊川朝子が演じるロールなどは語り口もことなって感じられ、
その結婚生活の時間が、
従前のバージョンより、
ゆっくりと深く 過ぎていくような感覚がありました。
過去の上演を観た側にとっては
その舞台と役者の異なりがさらに主人公の個性を解き放ち、
一人の女性の生きることの
一期一会感を惹きだしていたようにも感じられて。
また、名嘉友美、中田麦平 名嘉友美、 満間昴平、深谷晃成のそれぞれが、
極めて実直に、作品の密度を編み込んでもいて。

観終わって、既知の作品であるにもかかわらず、
思索のあるがごとくの空気に巻き込まれるような感覚に
暫し呆然。

この作品、役者の異なるバージョンも上演されていて、
こちらも何とかみたいなぁと思ったりも。

-性的人間

物語の骨格自体は複雑なものではないのですが、
そこに、役者たちの感情や想いが差し込まれると、
そのシンプルさが土台となって
やがて溢れるようにやってくる、歯止めをうしなったような、
感情や劣情があって。
役者もうまいのですよ。
宮本奈津美が紡ぎあげる表情や仕草に
刹那ごとのニュアンスや存在の濃淡が鮮やかに作りこまれ、
よしんば無表情であってもそこに醸される風情から
しなやかに伝わってくる。
後藤剛範ならではの空気のコントロールが、
リアルと概念の狭間を織り上げていく。
それが、横手慎太郎のデフォルメに映え、
心情の現われ方や、態を作る薄っぺらさや、制御しえない劣情の質感が
くっきりと浮かび上がってきて。

どこかコミカルな部分もあるのですが、でも、生々しさもしっかり残って。
「極私的エロス」同様、
役者が異なることによって醸される
従前に観たとは異なる色もありおもしろかったです。

・ダージリン急行~ディレクターズカット~

東中野の小さなスペースで上演されたものを観ていて、
その時に映画を観たいなぁとおもいつつ
果たされぬままに再演を鑑賞。

今回、会場が広くなった分、
列車のキャビンのタイトな感覚が、
より役者の身体的な技量に委ねられてはいましたが
一方で車外でのシーンには
よりインドの広さが醸し出されているように感じました。

前半、母を訪ねて旅をする3人兄弟の個性を、
泉政宏 横手慎太郎    中田麦平が、
それぞれに本当に良く作りこんでいて。
劇団員同士ということもあるのでしょうか、
個々の風情の立ち上がりのよさや貫きに加えて、
一瞬につくるミザンスや、会話の間の作り方も実にしなやか。

後半に母の子どもたちへの仕切り方が、
前半の兄弟たちの所作と重なるとき、
一つの家族が束ねられた感じが凄く良い。
坊薗初菜が演じる母親にも、
このひとならではでのキャラクターの色があり
身体を豊かに使ったその表現の突き抜け方にも目を瞠りましたが、
一方で、前半の兄弟たちの風情の描き込みが、
その表現を突飛なものと感じさせず
しっかりと舞台の流れに引きこみ支えてもいて。
作品全体で醸される感慨のようなものに
取り込まれてしまいました。

また、列車のキャビンアテンダントを演じた 太田彩佳
舞台にエキゾチックな印象を織り込んでいて。
その表情や所作が、
物語にすてきなウィットや奥行きを導きだし、
作品自体にさらなるテイストや肌触りを作り出していたように思います。

・愛についてのシンクロ・レポート

入口は、男性たちが女性から呼び出され、
別れを告げられるという話なのですが・・・。

でも、物語が進むに連れて、
泉政宏 中田麦平 折原アキラのそれそれが演じる男性から見た、
名嘉友美演じる女性の気まぐれや理解できない部分が、
女性から見た男性たちの無意識の狡さとの表裏にかわって・・・。
次第に男性の想いの枠組みというか、
踏み出さない部分というか、度量が浮かび上がってくる。

語り口の要所にリズムがあり、、
心の通じ方とか、男の独りよがりな部分など思わず笑ってしまうのですが、
でも、やがて、
自らを省みつつ、
男たちのごとく、愛をかたりつつ
自らの世界を踏み出すことなく足掻くことはとてもありがちで、
むしろそのことに気付き、
自らを擲って愛に殉じることのほうが
よっぽどレアケースでもあることにも思いあたっていくのです。

男たちが女性との関係から切り離していた
妻帯者にとっての離婚
ニートにとっての就職が、
女性にとってはとてもシンプルに「愛」を受け入れ続けていくことの
鎖と錘になっていて、
しかも男たちには、愛の深さを語ることには達者でも、
その錘を外すことへの発想が、
当たり前の如くに生まれてこない。
その男女間に訪れる竦み方の描き出しが実にしたたか。
物語の展開には、
ちょっとロードムービー的なところがあって、
男たちの気づきのなさや逡巡の態や、女性の側の疲弊のありようが、
単に描かれるのではなく、
時間というかあゆみと共にゆっくりと表れて。
身体で紡ぐその道程や、
終盤の歌うしかないようなそれぞれの行き場のなさも、
どこか薄っぺらいのだけれど、
でも、それらは、男女の想いの乖離のありようや
それぞれが抱くものの質感の先を
実にしなやかに射抜いているようにも思えるのです。

終わってみれば、
修羅場をくぐったが如き女性の視座からの、
男たちの姿がくっきりと浮かび上がり、
一方で、そこに至るまでの女性の満ちない感覚も、
女性が芝居を作ることが私生活の「言い訳」という感覚も
歌うしかないような感覚のなかに
観る側にしたたかに残されて。

その「愛」と称されるものの構造を見据え、バラしていく作り手の慧眼と、
それを舞台に置き組み上げ 表現する手法の創意に舌を巻いたことでした

余談ですが、クレジットに書かれていないけれど登場の、満間昴平ママは抜群のインパクト。
この引き出しはちょっとすごい。

*** ***

正直観終わって少し疲れましたが、
でも、充実感いっぱいに連休の午後を過ごすことができました。

シンクロ少女恐るべしです。

ーーー追記ーーー

 『極私的エロスB』
 
5月5日17時の回を観劇。
Aの満ち方が、感情の高揚とともに訪れるとすれば、
Bのそれは、戯曲の骨組みにしたがってやってくる感じが・・・。

同じ戯曲の同じ手順での上演であっても、
そのテイストは異なっていて、
でも、それは、どちらかが秀逸だとかいうものではなく、
観る側が、物語として組まれたものを受け取る時の
視座が異なっている感じで・・・。

想いの熱や突き抜け感はAの方が高いけれど、
二人がすごした時間の構造は、
Bの方がより冷静に描かれている感じがして。
その肌合いの異なりが、戯曲の世界にさらなる立体感を与えてくれて・・。
興味深かったです。

中田麦平 うんこ太郎 勃起崎鋼太   あやか    坊薗初菜
の5人の役者達も、場ごとの空気をしっかりと編み上げ、
Aに比べてより戯曲自体に寄り添うように
演じていたように感じました。

一緒に上演された、『性的人間は』、3日に観たものに比べて、
リズムや役者間の表情の受け渡しの流れがよくなっていて。
それぞれの間も安定していたように感じました。

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