庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』男性にとってちょっと気恥ずかしく、でも圧巻
2013年4月28日ソワレにて、庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』を観ました。
会場は森下スタジオB。
よしんばMOMAに展示されていても何の違和感も感じないであろう
舞台美術に圧倒されつつ、
そこに描かれる世界のちょっと気恥ずかしい共振感にこそ
作品の秀逸を感じたことでした。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
脚本・演出・美術 : タニノクロウ
美術製作 : 稲田美智子 / 美術助手 : 松本ゆい / 特殊小道具 : :小此木謙一郎
出演 : 山田伊久磨、飯田一期、島田桃依、瀬口タエコ
今回の舞台、
以前にマンションの一室でのはこぶねで観た世界の
集大成のような作品でもありつつ、
なにか、OSが一気に新しいものに変わったパソコンの如く、
オペレーターを様々な制約から解き放つことで実現した、
とんでもない解像度でのさらなる新たな表現にも思えたり。
男性にとっての父親への畏怖や憧憬、
超えられない感というか・・・。
また、少年のころの純粋な興味のなれの果てや
悶々とした劣情の感覚の行き場のなさ。
さらには若さの気恥ずかしさから
老いることで生まれる衰えやずるさ・・、
それらが、どこか戯画的に、
一方で隠したり否定したりしたい部分をも含めて
舞台上に展開していきます。
3面の回り舞台に作られ、その上下もしつらえられた装置や美術は、
それ自体が、観る側に世界を語る力を持っていて。
さらにそこに表れ、時に行きかう役者たちの姿が、
想いの移ろいや記憶の解け方、夢と現のはざまの質感までも
観る側に流し込んでいく。
ある意味いい歳こいた男性にとっての黒歴史的なものを具象化され、
観る側がかぶせていたベールを剥ぎ取り晒すような部分もあるわけで、
居心地の悪さもがっつり感じつつ、
そこまでをしっかりと舞台に乗せる作り手の
アーティストとしての貫きにぞくっときたりもして。
好きか嫌いかといわれると
実はきわめて微妙で、
一言で表現できないようなデリケートな感情も湧いてくるのですが、
自然体では決して触れたり直視したりすることなく、
寧ろおくびにも出さないように抗い、
なかったことにしてしまうものを
衒いもなく観る側に突きつける、
観る側にその評価を迷わせるような
なにかを踏みこえたリアリズムこそが、
この作品の真価のひとつでもあり秀逸さでもあるように思えるのです。
従前のはこぶね設えられた世界に比べて、
作品が内包しうるものも圧倒的に大きいことが、
ここまでのパワーになることにも驚く
カノンに導き出される内なるものや、
生きることへの俯瞰と繰り返しが
概念としてではなく、そりゃもう、
溢れるように伝わってきたことでした。
従前に、
観る側の想像の世界に置かれていて、
今回失われた感覚もなくはないのですが、
そのことも含めて表現の歩みというか進化なのだろうなぁとも
ぼんやりと考えつつ、
目の前の世界に圧倒されてしまいました。
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