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範宙遊泳『さよなら日本-瞑想のまま眠りたい-』異なる次元に織り上がる世界

2013年5月8日ソワレにて範宙遊泳『さよなら日本-瞑想のまま眠りたい-』を観ました。

会場は横浜STスポット。

従前に観た公演を思い出しつつ観始めて、その一気の進化に愕然。
その斬新で一歩踏み込んだところにある、
感覚に共振しつつ、がっつりと取り込まれてしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本 ・ 演出 : 山本卓卓

出演 : 大橋一輝、熊川ふみ、埜本幸良、田中美希恵、永島敬三(柿喰う客)、中林舞、名児耶ゆり

映像を取り込んでのお芝居ということは、
前回公演でも試みがあって、
すでに、そのときにも、壁面に映し出されるものが、
物語を切り出し、エッジを与えていくことに驚嘆はしたのですが、
今回は、そこから更に一歩どころではなく、
一足跳びに何段もの表現の進化があって・・・。

たとえば色が場のトーンを醸し出す。
場は役者達によって紡がれつつ、
それがツートンにそめらると、
人物の想いもふたつの質感を撚るように編まれていく。

文字は、場の雰囲気に硬質な感触を与える。
それが会話として現れると、
役者達の想いのふくらみを際立たせ、
情景として使われると(たとえば「朝」という文字が群で場を包むと)
それは、観る側にとって、とてもステロタイプな肌触りとなり、
この表現だからこそのロールの感触が切り出されて映える。

風景にロールたちが置かれ、
役者たちの影が風景に実存感を与え、
只のロールではなく、風景から切り出されたロールが
観る側の印象となって存在する。
役者達の身体が紡ぎだすニュアンスが映像にとっての影となり、
風景と、ロールの想いと、場のなかでの座標のようなものが
その際立ちの中にひとつの立体感として育まれて・・・

さらに、文字や映像にパフォーマンスが生まれて。
そこにマージする役者たちの身体や醸される想いの感覚が、
新たな動感とともに、
観る側の既存の感覚の縛めをとき解いて・・・。

もし、役者達が素舞台・素明かりの状態で演じたとすると、
もっと生々しく実体を伴った感覚として訪れ、
そのリアリティにばらけてしまうであろうものが、
映像とともにあると、
不要な混沌や曖昧さが削がれ、
鋭利に研がれた肌触りが生まれ、
一方で削がれたり丸められたからこそ現れるふくよかな感覚を伴って
観る側につたわってくる。
視座やフォーカスを、
素で見えるものとは異なる位置に定められたような感覚もあって、、
ルーズなつながりや、やわらかく不可避に訪れる感情や、
流れる時間の肌触りが
常ならぬ、でも奇異ということではなく、
観る側に不思議に寄り添った
ナチュラルな感覚の新たな表情となって刻まれていくのです。

その視座やフォーカスだから見えるもの、
たとえば、
ミミズの世界にしても、
「あ」の喪失やおおきな「あ」の存在にしても、
平面的なものが立体となり、
立体的な感覚が平面の風景に収まることも
その視座だと馴染む。
シーンたちがルーズに繋がることも、
普通に過ごす時間ではロジックの如く平板に感じられる風貌が
この世界では別の感覚に落とし込まれ、
その新たな立体感に凌駕されてしまう。

また、全体を貫く表現の手法もさることながら、
様々な印象のひとつずつが塊としてではなく、
織糸の如くなって舞台に細微にテイストを織りこまれ
さらに訪れる感触や広がりを生み出していくこお。
それは、舞台にあるがごとくにあるものでありながら、
これまでに感じたことのないものとして織り上がって・・・。
息を呑みつつ、
でも、力むわけでもなく、
刹那から外れて思索を巡らせるわけでもなく、
「こんな感覚が生まれ、世界が見えた・・・」とえ
素直に驚き、とても自然な感覚で浸潤されたことでした。

役者たちの表現も、さりげなく、
もっと正確を目指すなら、観る側にさりげなく思わせるほどに精緻で、
だからこそ、映像に入りこみ、、共にニュアンスを紡ぎ空間を織り上げて
観る側を巻き込む力があり。
映像に影を演技させたり、ともにシーンのミザンスを作り上げるなかに、
身体から紡ぎ出す解像度を持ったニュアンスがあって、
さらには演劇的な役者の表現にも切先があり、
当たり前の如くに映像と重なり、ともに、空間を織り上げて

作り手の、この進化の先には何が生まれてくるのかが、
とても楽しみ。
焦ることなく、でも、期待を込めて、
わくわくしていようと思います

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