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FUKAIPRODUCE羽衣『サロメvsヨカナーン』妙ージカルからの踏み出し

2013年2月1日ソワレにてFUKAIPRODUCE羽衣『サロメvsヨカナーン』を観ました。

会場は東京芸術劇場 シアターイースト。

自ら妙-ジカルと呼ぶそのスタイルが、さらに進化して、
独特のテイストをもったコンセプトミュージカルの域にまで
昇華した感じがする。(もはや妙ではない・・・。)

観終わって、直ちに再見を決意。
両日とも、舞台に描かれる男女の世界たちと
そこに、置かれたワイルドな世界の普遍に
がっつりとはまり込んでしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 糸井幸之介

出演 : 深井順子、日高啓介、鯉和鮎美、高橋義和、澤田慎司、、伊藤昌子、西田夏奈子、大西玲子、浅川千絵、中林舞、加藤靖久(ANDENDLESS)、代田正彦、岡本陽介、ゴールド☆ユスリッチ、藤一平、枡野浩一

劇場に入ると、
あめが舞台全体に降りてくるようなイメージがあって、
座席につくと、燦然と輝くミラーボール群に目を奪われる。

冒頭からぐいぐいと舞台の世界に取り込まれます。
闇がほどけるなか、
現われる男たちの風貌と「ざっ」っという歌詞とダンスのキレが、
戯画の如くに雨の風景を舞台に描き、
その中に一人ずつ現われる女性達を際立たせ、
男女の風景を一つずつくっきりと浮かびあがせていきます。

男たちが酒場から眺める外、
雨のイメージをしなやかに纏い、
なおかつ埋もれない個性たちから、
紡ぎ出される男女の刹那。
それは、出会いの風景だったり、
待ち合わせの風景だったり・・・。
異なる色で描かれる風情が、
その夜の風景として編み上がっていく。

王であるタクシー運転手を絡めて、
「サロメ」の構造を作りつつ、
その中でカップル毎に紡がれる、
異なる物語のそれぞれの際立ちに心奪われる、。
子供をかかえた夫婦の風情にも、
少々金遣いの荒い女性の不倫の風景にも、
純情男と世慣れた女性の出会いにも、
大人の恋にも、刹那の交歓にも、破滅型の愛にも、
それを支える見せ場がしっかりと準備されていて。

ボーリング場での純情な男と心優しくビッチな女性のシーンなど
実に秀逸。、
二人のズレや、でも寄り添う気持ちや、ときめきが、
風景として描かれるボーリングを楽しむ人々の音のない嬌声や
ボールが転がりピンが弾ける姿にシンクロして
照らし出されていく。
ゲームに惹き込まれていく男女の高揚と
どこかチープで、薄っぺらくて、手さぐりの
男女の想いが、
ボーリング場の光景の中から紡ぎだれて。
バックに描き出されるボールやピンの動きには
思わず目を奪われるような美しさがあって、
男女の現実をすっと包み隠し、
でも、その重なりは、ボーリング場の風情のごとく、
ゲームが終われば、すっと寂寥感に変わる。

他のシーンにも、男女それぞれの思いが、
歌やダンスや、様々な表現に、
さまざまな色を放ち、舞台を染め満たしていく。
そこにはワイルドなというか、
ワイルドがサロメの中に描きだした
男女の、そして生と性と死の様相が
様々に織り上げられていて。

後半のナンバーで語られる人生のダイジェストも圧巻でした。
9回の年齢のぞろ目を通過する中に描かれる、
出会い別れたサロメとヨカナーンと称する男女の姿に人生を俯瞰し、
過ぎていく人生の節目や、
やがて訪れる死への影のなかに積み重ねられた、
互いを想い、魅かれ、時には憎しみ、交わり、時には交わらず、
愛し合う刹那が、ひとつに束ねられていく。
一夜の雨の刹那に、
時を重ねる、別の俯瞰が生まれて。

歌やダンスや、身体の表現があるから
描きうるニュアンスがあって、
「ワイルド」な世界にインスパイアされた
刹那ごとの表現が、
メリハリと遊び心を持った振付や、ダンサーの力量や、
どこかあからさまでキャッチーなナンバーとその歌唱のクオリティや、
ストレートプレイで培われた演技力に輝き、
一つずつの刹那にテンションと密度を作り、そのニュアンスを担保し
観る側をしっかりと閉じ込めていく。
キャストが持つスペシャリティに切り出されるものが
よしんば、それが寂しく、切なく、あるいは下世話で、
生々しく、時には不道徳なものであったとしても、
ミュージカルの態や、舞台に紡ぎ出された研がれた表現たちが、
観る側、。しなやかに男女のつながりに溢れた
ワイルドな街の風景に閉じ込めて、
原典が内包した普遍へと浸しこまれていくのです。

観終わって、上質なコンセプトミュージカルを楽しんだ時の如くに
ふくよかに満たされて。
妙ージカルの、「妙」がひとつの独創的な表現形式として
和製コンセプトミュージカルへと歩みを進めた瞬間に
立ち会えたようにも思う。

ミュージカルナンバーが耳に残っている。
そして、役者たち一人ずつの印象も、
其々にしっかりと焼付いて。

小学生にはお勧めできない
大人の舞台ではあるけれど、
ミュージカルの豊かさと、生と性と死の感触とありように
どっぷり観る側を浸しこむ力をもった、
出色の舞台でありました。

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コメント

嬌声とは、女性が性行為中に発する喘ぎ声のことですよ。

「ボーリングを楽しむ人々の音のない嬌声」って、

意味不明なんですけど

投稿: 嬌声とは | 2013/09/16 17:59

ご指摘ありがとうございます。

ただ、ここは歓声というだけではニュアンスが十分に表現できない、身体で表す男女間の関係が背景に紡ぎこまれていたように思えたので、あえて「嬌声」という言葉を使ってみました。

説明になっておりますでしょうか?

投稿: りいちろ | 2013/09/17 00:02

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