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文月堂「チェインソング」新たな印象を支えるしたたかな作劇

2012年12月26日ソワレにて文月堂「チェインソング」を観ました。

会場は下北沢駅前劇場。

これまでに観たこの劇団の作品とは、ふた味以上違う印象でありつつ、
それが実におもしろくて。

作り手の創意の豊かさに舌を巻きました。

(ここからはネタばれがあります。十分にご留意ください)

作・演出・出演 : 三谷智子

出演 : 牧野耕治、凪沢渋次(ナギプロ)、霧島ロック(ここかしこの風)、平吹敦史(元バビィ)、
細身慎之介、岩原正典、杉森裕樹(演劇集団・若人)、松原一郎、渡辺昇、
大森照子(イブエンタープライズ)、辻川幸代(ニュアンサー)、伊藤昌子、竹原千恵、
辻沢綾香(双数姉妹)、藤原よしこ(ブルドッキングヘッドロック)、前有佳(年年有魚/海ガメのゴサン)、
早野実紗(ナイスコンプレックス)、山下真琴(演劇集団円)、杉浦慶子(演劇集団円)、正宗史子、
神馬ゆかり(文月堂)、

冒頭のシーンがいまや死語かもしれない「劇画」の
ひとこまを観る様で・・・。
で、そこを入り口として、舞台に物語られるものは
どこか、紛い物というか、
恣意的な薄っぺらさに染められていて。
前半は、その舞台の空気に捉えられ、
舞台に見入ってしまう。

で、そのインパクトに浸っているうちに、
役者達が様々に物語を動かし始めます。
文芸部に加えてコーラス部やラクビー部の顛末、
先生たちの関係に
転向してきた生徒のほどけ方と、
いくつもの顛末が、互いに重なり合い、
学校での時間を編み上げていく。

ひとつずつのロールの色合いが
強かに作られ変化していきます。
物語の展開には、素敵に無茶な部分もあって、
常にどこか薄っぺらい感じが残されて。
だけど、その中で、
役者達のお芝居がしっかりと作りこまれていて、
キャラたちの色の移ろいが
戯画的な肌触りを残しつつ物語を進め、
それぞれの想いのベクトルや深さや振れ幅が
歩みとなり、時に重なり、
伝わってくる。

表層にこそ、平板で戯画的なテイストが作られているけれど、
その内には丁寧に作り込まれた
いくつもの物語の流れや、その束ねや、
伏線が仕掛けられていて。
さらには、学生時代の思いや熱の
なにか青臭く、あからさまで、不器用な
ちょっとそのままには受け取れないような
ロールたちの感覚に内包された気恥ずかしさが、
物語のぶっ飛び方や舞台のトーンにすっと消えて、
観客は内に描かれ仕込まれた、
自らのそのころの感覚を
抵抗感なくまるっとそのままに受け取れてしまう。
終盤に醸しだされる、熱や高揚も、
結末に生まれる快哉ともいえる感覚も、
歪んだり、醒めたり、斜に構えることなく
そのままに共振できてしまうのです。

随所に紡ぎ込まれたウイットと、役者達が描き出す
キャラクターたちの色と
その先にある、作り手の描き出す、
「受け止め踏み出す」ことの質感や感触が
そのデフォルメされた舞台の空気の中に
鮮やかに広がり、膨らみ、映えて。
ほんと、したたかな舞台だと思う。

役者たちのキャラクターの背負い方も眼福で
単にロールを与えられた一色に染めるのではなく、
それぞれに様々な尺での表裏が、
作り出されていて。
あて書きっぽい感じがありながら、
それを纏うだけに終わらせない
もう一歩が、観る側をさらに惹きつけてくれる。

終演時には、作品に重なり合った、
自らの学生時代の感覚がいくつも、
よみがえっておりました。

初日観劇ということで、シーンのつなぎや
役者達の踏み出し方の細微な間合いのようなものには
かすかな不安定さを感じたりもしましたが、
むしろ、そのことが、以降に公演を重ねるなかでの、
作品のさらなる醸成につながる予感もあって。

この劇団、しばらく観続けていますが、
ひとつのやり方に定まることなく、
毎回、いろんな手法で観る側を楽しませてくれて。
そのチャレンジ感と、
それを単なる思い付きにとどめない
作劇やキャスティングされた役者達のスキル、
さらにはベクトル豊かな表現の引き出しの広げ方にわくわくする。

ほんと、こういう作品を見せられると、
さらに次もみたいなぁと思ってしまうのです。

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