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青☆組「初雪の味」 舞台毎の味わいと連続観劇に生まれる奥行きと

2013年1月2日に青☆組「初雪の味」を観ました。
会場はこまばアゴラ劇場。

この公演は、作家がそのまま演出した「鎌倉編」と演出家が方言を中心に戯曲を少々アレンジしての「会津編」の
2バージョン。

年明け最初の観劇に16時(鎌倉編)・19時30分(会津)を続けて観ました。

それぞれの作品に深く惹き込まれ、加えて、両バージョンを観ることで
作品が内包するものの更なる奥行きを感じることができました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

作 : 吉田小夏(鎌倉編)

 

演出 : 吉田小夏

出演 : 荒井志郎  福寿奈央 林竜三  藤川修二  大西玲子  <以上、青☆組> 羽場睦子

 

冒頭からとても自然な空気の密度が舞台にあって、
少しずつ、
仕付け糸がほどけるように場のシチュエーションが現れ
色がゆっくりと解けていきます。
toiや中野成樹+フランケンズが独自のタイトルで上演した、
「long christmas dinner(Thornton Wilder)」の如き
シームレスな定点観測のようにも思える
時間の繋ぎと
そのなかでぶれずに貫かれる
役者たちの安定したキャラクターの作りこみが
表見上変わらない舞台の、トーンに潜む変化を紡ぎ、
繊細に場の空気とロールたちの時を染めていく。
幾色にも移ろう質感にキャラクターたちの姿を織り込んで
場に満ちたの細微なニュアンスの重なりは、
ウィットもありつつほろ苦く、
やがて彼ら自身の歩みをありようを削ぎ出して
そのままに過ぎ行く時の質感をさらに際立たせて。

やがて場は記憶や想いにまで昇華し、
ラストシーンの今には、
その場所を道標のように過ごした彼らへの俯瞰が生まれて。
ゆっくりと深く浸潤されたことでした。

(会津編)

 

方言翻訳・演出 : 古川貴義(箱庭円舞曲)

 

出演 : 和知龍範 小暮智美(青年座)   石松太一(青年団)  鈴木歩己 大西玲子(青☆組) 羽場睦子

 

 

鎌倉編に続けての観劇。
設定された場所の違いの関係でのアレンジもあったり
言葉(方言)も現地のものに作りこまれてはいるものの、
基本的には同じ骨格を持った戯曲。
でも、ベースの部分で観る側への物語の訪れ方がどこか異なって感じられて、
既視感も飽きることもまったくなく
舞台に取り込まれてしまいました。

冒頭からキャラクターの色がくっきりと舞台に置かれている感じがして
描きこまれたロール達にも
良い意味でのばらつきがあり、
組み上がっていくその部屋の時間には少しざらついた肌触りがあって。
でもその質感が次第に場の実存感となり。
その空気の中に再びロール達が纏った時の流れが浮かび
抱いた想いがしっかりと映えて・・・。
一人ずつのキャラクターの心情に深く心を奪われる。

*** *** ***

なんだろ、
二つの舞台、
醸される場とキャラクターの姿の重なりの順序が違っているというか
舞台に流れる時間の解け方のベクトルが逆に感じられて。
そんな両編を続けて観ると、
作品毎に描き出される
人が歩み、揺らぎ、時を重ね、さらに歩んでいく質感の異なりや、
異なる語り口で生まれる戯曲のコアの複眼視的な立体感が
深く鮮やかに残るのです。
両舞台に同じロールを演じる役者たちのキャラクターの貫きも実に秀逸。、
一つの舞台を支えるにとどまらず、
二つの舞台をいたずらに一つのトーンに置き換えることもなく、
でも、二つの舞台を束ねる
ひとつのキャラクターとしてしっかりと観る側に息づいて。

どちらかだけでも見応えがある舞台ではあるのですが、
両方見ることができて本当に良かったと思う。
それぞれが、もう一つの舞台の描き出す世界に別の視座を与え、
その重なりから垣間見える新たな奥行きが、
違和感とならず、作品が内包する想いのさらにコアの部分として
さらに一歩踏み込んだ印象を観る側に引きだしてくれて。

両編とも、いたずらに重いわけでもなく、
寧ろ淡々とやってくる幾つもの大晦日の風景描写なのですが、
もれなく手練れの役者たちからやってくる
その重なりの先のロール達の心風景は
除夜の鐘や汽笛を聞くたびに
きっと心に蘇るような気がする。

役者に加えて舞台美術も秀逸。
シーンごとに、その部屋の居心地が伝わってくるし、
様々なものに満ちて狭くも、
どこか殺風景で広くも感じられて。
また、外に配された白い石は
その場に流れる時間の本来の無垢さや、
雪の季節のイメージに舞台を置いて。
照明も舞台にナチュラルな時間を与えつづけ、
終盤には、
白い石たちを照らす強さで
その時間の俯瞰をくっきりと観る側に焼き付ける。
二人の異なる演出家での上演という企ても功を奏し、
役者たちの演技にどっぷりと浸されて
とても心に残る今年の観劇はじめになりました

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