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トム・プロジェクト『熱風』嵐に剥ぎだされる想いたちの鮮やかさ

2013年1月28日ソワレにてトムプロジェクト『熱風』を観ました。

会場は赤坂REDTHEATER。

その物語の顛末に織り込まれた、
女性たちの印象がひとりずつしっかりと焼付いて・・・。

個々のキャラクターの描き出すものに深くとらえられてしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 桑原裕子

当日パンフレットを読むと、
作・演出家は実際に遭遇したリゾートで台風に遭遇した体験があるそうで、
そのすさまじさが舞台にも作りこまれていて。
でも、作品の秀逸さは、
嵐の訪れの前にしっかりと作りこまれた
登場人物達が抱く想いの一つずつからやってくる。

リゾートホテルのルームキーパー達や
その部屋を訪れるキャラクターたちの
それぞれの訳あり感や内に何かを秘めた感じが
しっかりと作りこまれていて。
一方で場の空気の作り方もうまくて、
マリファナやマジックマッシュルームなどの
イリーガルなものが場に持ち込まれることも、
海外で清掃などの労働で過ごすことの、
タフでルーズな空気とともにうまく織り込まれていきます。

その中で、普通ではほどけない
それぞれの抱えるものも
少しずつ晒されていく。
女性達がそれぞれに距離をとり、重なり、争い、
互いを引き出しあい、
ロールたちの想いにさらなる内側が垣間見えて。
そして一人ずつの抱くものが、
それでも表しえないものに至る中で、
嵐が訪れるのです。

暴風雨の中に閉じ込められた
行き場のないホテルの一室だからこそ、
留め金を失ったように、
観る側に訪れる彼女たちの内なるものがあって。
その導き方に物語の組み上げのしたたかさを感じる。

若く豊かな肢体に恵まれていても孤独や迷いがあるし、
子供を宿して道を見失うこともある。
玉の輿に乗っても愛情と悋気に心を乱し
幸せな家庭を得たようでも夫の言葉によるDVに追い詰められ、
夫の死に繋がれてその場所を立ち去ることができない。

いつか常ならぬ場所となったホテルの一室だからこその
ステレオタイプではない一人ずつの事情に
舞台は満たされて。
また、その中で、役者達がそこをキャラクターの居場所とせず
ロールをただ場の雰囲気に染めさせない感じが
実にうまい。
一人ずつのロールが、
嵐に閉じ込められながら
混じったり濁ったりすることなく際立つのです。

岸田茜が描く女性の、とても良い意味での
ステレオタイプな凡庸さというかナチュラルさが
舞台に広がって。
その中での駒塚由衣林田麻里がそれぞれに描き出す
女性の一人の男への想いの色の異なりが鮮やかに浮かび上がる。
斉藤とも子のマリファナに縛めを解かれ
言葉によるDVの有態を見せる姿に息を呑む。
男から逃げることを逡巡するその女性からさらに踏み出して、
自らを省みる、
大西多摩恵が演じた夫に寄り添い続けた女性の悔恨に
目を見開く。

それぞれの年齢や経験のなかで、
ロールたちを苛むもの、時に絡み合い、束ねられ、表裏となり、
男からの、あるいは男への想いに捉われ、
窓の破れた一部屋のバリケードの内に吹き寄せられる彼女たち。
その一人ずつから嵐に吹き飛ばされるが如くに、
それぞれを抑えていた物がはずれ
一番内側にあるコアの想いがあふれ出す。
そこに現れるものの、飾りのない質感に
心奪われて。

台風一過のラストシーンで、
それぞれが、嵐の中で落ちていった自らの男をイメージしていたものの、
真実を見るシーンも伏線がきちんと効いて旨いなぁと思う。
そのばらばらになった偶像からも、
さらにはその偶像に重ねた男性からも、
様々に解き放たれた女性達の姿に、
彼女たちが歩みだす新たな日々の予感を感じて・・・。

役者達一人ずつの質感の異なる秀逸を
しっかりと見て感じ取れる席だったこともあり
場の緻密なラフさやルーズさに捉われ続け
一つずつのシーンにも、
キャラクターが掃除婦に束ねられてラストに至る物語全体にも
どっぷり浸されたことでした。

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