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劇団だるめしあん『魔法処女★えるざ(30)』大人のラブコメでありつつも・・。

2013年1月14日 12:00の回で、劇団だるめしあん『魔法処女★えるざ(30)』を観ました。会場は新宿2丁目のタイニィアリス。

知り合いの方の評判を伺っての観劇、うっすら積もった雪に少々驚きながら劇場に足を運びました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 坂本鈴

冒頭からしばらくはワンアイデアのコメディかと思ったりもしたのですが、
やがて、物語がしっかりと歩みを進めプロットに魔女(=処女)を捨てられない女性の想いが浮かびあがり、
時間を忘れてとりこまれてしまいました。

シンプルでスペースを十分にとった舞台。
役者たちが十分に動くことができて、そこに紡がれるシーンたちがとてもクリアでビビッド。
最初はパロディのように思えた「魔女の宅急便」の世界が、気がつけばワク組みにしたたかに引き込まれて。
ダンスも、いたずらに精度で勝負するというよりはエンターティメント性を作りこんで観る側をあきさせない。
女優たちの身体の美しさが、そのお洒落感とともに、ウェットになることなく観る側に心地よく伝わってくる。

やがて、キャラクター達が物語の枠組みから踏み出して、少々大人のラブコメティストを醸し、編み上がっていきます。
その語り口にもたつきがなく、ストーリーを広げていく手際も鮮やか。
ベタな言い方ですが、素直に物語の顛末に引き込まれてしまう。

物語の展開に違和感がないような心配りがあり伏線等もとても丁寧に作りこまれていて。
作り手がなにげない刹那やひとつずつの台詞が細やかに磨かれ置かれている感じがする。

そのなかで役者たちが導き出すロールの色がとてもしやなかで。
河南由良のアラサー魔女には、
台詞に留まらない想いの揺らぎを伝える豊かな表情があって。
もう一人の魔女を演じた及川陽葉は、
くっきりとした仕草で魔女の齢とその魔女の年齢での普通さを観る側に伝えてくれる。

猫たちや猫と魔女の会話など、なにげないのですが、でも、舞台に乗ると
そのウィットの軽さが絶妙。
その猫たちを演じた3人の女優たちの出来も凄く良くて。
魔女の飼い猫を演じた丸石綾乃はキャラクターの色を作りこみ、
猫の範疇をそれを超える部分をうまく縒り合せて魔女にとっての猫の実存感を造りだしていく。
友達猫を演じた小杉美香御影桃花のお芝居にも
ロールを単なるガヤに置かない個性と魅力が生まれていて。
それぞれに個性が紡がれ魅力的であるだけでなく、
二人の呼吸というか、場のバランスの組み方がとても安定していて物語に厚みを作りプロットを映えさせる。
魔女の友人を演じた齋藤陽子には、魔女たちの世界のファンタジーから、
人の感覚のエッジを紡ぎ出すような独特の質感があって目を惹かれる。
男優たちは、ちょっとした彼氏カタログみたいな部分もあるのですが、
役者たちはその雰囲気に留まらない心情を作りこんでいて。
途中慎吾が作るテイストに女性たちが求めるものもなんとなくわかるような気がする。
村山新の大人さもただ包容力があるのではなく、完璧でない部分がナチュラルに作られていて。
茗原直人が紡ぎ出す個性には独特なものがあるのだが、それが場から乖離するのではなく、不思議な実存感でちゃんとつながれていて。

キャラクターたちの個性と舞台のリズムに惹かれているうちに、
物語が滞ることなく、走ることなく、着実に歩んでいく。
個々のシーンで、ロールを背負う役者達の一人ずつから
異なった魅力に更なる奥行きが生まれていくことにも感心。
終わってみれば、女性たちの身体の美しさのインパクトに負けない
其々のキャラクターの印象や主人公の想いがが物語の内にしっかりと残って。

美術や照明も、シンプルでありつつ、シーンごとの切れをしっかり担保していました。
こういう感覚を紡ぎ上げるのって結局作り手のセンスの賜物なのだと思う。

観終わって、なにか、不思議な満たされ感があって・・・。
次回公演も是非に観たくなりました。

終演後、外に出てみると、突然の大雪で街の景色が変わっていてびっくり。
なにか、魔女の魔法の続きを見ているようで、
ちょっと子供のようにほくほくとして、駅までの道をたどったことでした。

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