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DULL-COLORED POP「完全版・人間失格」生き物のような舞台

2012年11月4日・6日でDULL-COLORED POP「完全版・人間失格」を観ました。

会場は、先日閉館が決定した青山円形劇場。
この作品、10月に行われたワークインプログレス(男版)も拝見しています。

作品は2年前に「Project BUNGAKU」という企画で上演された短編を
再翻案した作品という紹介でしたが、
印象としては全く新しい作品。

その舞台は生き物のようにも思えて。
圧倒されました。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 谷賢一

出演 : 東谷英人、大原研二、塚越健一、中村梨那、堀奈津美、百花亜希、若林えり、川村紗也(劇団競泳水着)、熊川ふみ(範宙遊泳)、コロ、孔大維(コン・テユ)、西郷豊(TheDustyWalls)、原西忠佑、細谷貴宏(ばけもの)、堀川炎(世田谷シルク)、村上誠基

赤字:女Versionのみ出演  緑字:男Versionのみ出演

劇場にはいると舞台が大きくとられ、客席は3列。
完全円形で正面の位置など知るべくもなく。
そして開演が近づくと、会場全体に
心地良いテンションが満ちて・・・。

冒頭の数シーンに、
役者が観る側を取り込む術があって・・・。
そこからの舞台の広がりが唐突に感じられず、
だからこそ、会場の空気の揺らぎにそのまま取り込まれる。

それでも、暫くは、舞台に語られる物語を追う意識があったのですが、
やがては、舞台の空気が一人の男の感覚に置き換わり、
そのなかに自然に巻き込まれて。
舞台には何人かの役者が背負う一人の男のコアの部分と
彼に関わった人間たちが
描き分けられてもいるのですが、
それらを第三者的に俯瞰するのではなく、
刹那ごとの男の心風景を移植されたように感じ取っている・・・。

あとで思い返してみると、役者たちの秀逸な演技は
観る側に媚びることなく
豊かな創意とともにそれぞれのキャラクターや刹那を
場に紡ぎあげていて。
でも、この舞台にはそれを主人公の感覚として
観客に流し込む力があって、
なにかそれらの表現の一つずつを、
我がことの実感をまじえて受け取ってしまう。
なんだろ、物語をもらって置き換えるひと手間を省いて
舞台に描かれる世界をその内側に置かれて感じとるような・・・。
主人公を取り巻く女性たちも
デフォルメされているのに
形骸化されている感じがまったくなく
描かれた瞬間ごとがとてもビビットに思える。
切り取られていく時間も
しなやかに揺らぎ、ライブ感を醸し出し、
記憶の如くに
物語に積み上げられていくように感じる。

そして、台詞の遊び心や、音や光が、
舞台のリズムや鼓動を際立たせる。
舞台自体が呼吸する生き物のようにすら感じられて・・・。

WIPで観たシーンも盛り込まれていましたが、
その時にあったシーンからやってくる強い印象が、
舞台に置かれるとテイストの一つとして
空気を支える存在になっていることにも目を瞠る。
この作品が、実は作りこまれたたくさんの立体的ニュアンスと印象の
コラージュ的な側面を持っていることにも思い当たって。
それらを束ねる作り手の手腕と
一つずつのパーツを編み上げていく役者たちの底力に思い当たり、
あらためて圧倒されたことでした。
また、その秀逸は、
円形の舞台の全方位に生まれるミザンスだからこそ
よりふくよかに映えるものであるようにも思え、
閉館が予定されているという
この劇場の魅力をを再確認したりも。

女性版と男性版では顛末が少し違っていました。
男性版では物語の流れが、
そのまま、踏み出して結末に至った感じ。
様々な色の表現の重なりに、
ふっとブランクのような白が生まれたようにも思えて、
一瞬息が止まる。
一方で女性版は描かれたものを
もう一層の外側をつくって納めて見せて。
そこに作者一流のウィットを織り込み
更なる俯瞰を組み上げる。
生き物のような舞台でも、バージョンごとに、
道程に微妙に異なる肌触りが作りこまれていて。
それぞれの世界ごとに、舞台を躾け手懐ける、
作り手の手腕にも舌を巻く。

男女版どちらも、観終わって、
やわらかな高揚があって。
舞台が与えてくれた達観や諦観も残り
でも、なによりも、ガッツリ消耗していることに気付いて。
観る側をして、自覚させることすらなく、
貪らせるように舞台に惹き込む、
この作品の力に改めて思い当たったことでした。

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