« 音楽劇「ファンファーレ」とても良く、でももっと!と思う。 | トップページ | COLLEL「消費と暴力、そのあと」舞台の呼吸に取り込まれる »

サキトサンズ「梨の礫の梨」企みを作り演じ広げる底力に瞠目

2012年10月13日ソワレにて、宮川サキ+Sun!!二人芝居 サキトサンズ「梨の礫の梨」を観ました。

会場は下北沢「劇」小劇場。

その世界に惹かれ、だまされ、揺さぶられ、染められて・・・。

作り手の企みのしたたかさと役者たちの緻密なお芝居の重なりにどっぷり浸りこんでしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

作・演出 : 横山拓也

出演 : 宮川サキ Sun!!

ベタな言い方だけれど、ガッツリやられました。
終演後しばらくは、
酩酊していく女性の心風景に圧倒的にとらえられて・・・。
劇場の外でしばらくぼんやりしているうちに
作劇の仕掛けが蘇ってきて
そのしたたかさに舌を巻きました。

振り返ってみれば作劇としてとてもフェアな展開。
冒頭には作品の仕掛けに気付くことなく、
関西の二人のおばさんの、
滑稽な会話劇のような風情に取り込まれて・・・。
そのエピソード自体と演じ方に観る側をぐいっと惹き込む完成度があり、
物語のコアを観る側の視野から完全にそらしてしまう。

で、その覆いの取り去り方も、
実にしたたかに作りこまれていて・・・。
一気に仕掛けを晒すのではなく、
会話の中に差し込まれた、
たとえば年齢を軸にした納得と違和感の揺さぶりの中で
観る側の思い込みをじわじわと瓦解させていく感じ。
そして全容が浮かび上がった時、
あっ、やられたという驚きが豊かに広がり、ぞくっとくる。

しかも、この鮮やかなトリックが、
作品のクオリティにとってはベースに過ぎないのです。
そこから、酩酊していく女性の心風景がビビッドに広がり、
その風貌から心風景にいたるまでの
息を呑むようなリアリティが生まれ、
女性に心に移ろう恨みと恋慕と諦観とそれでも歩み続ける強さが
観る側を深く捉えていく。
二人の女優たちの紡ぎ出す刹那が、
とても丁寧で、
でもその中に果敢に挑むようなせめぎあいや踏み出しがあって。
だから、よしんば、高級なお酒に手が出なかろうが、
千手観音が浮かんでこようが、
女性が抱き続ける想いの密度が
ダレたり撓んだりすることなく
凛として鮮やかに観る側を染めていく。

おもろうて、すこし切なくて、悲しくて。
ラストシーンが冒頭の所作の記憶につながると、
ホテル清掃の関西のおばちゃんの
日々に立体的な俯瞰が生まれて、
さらに浸潤される。

落語には大ネタと呼ばれるものがあって、
聴く方はお気楽極楽で楽しんでいても
それを演じる噺家は
様々な色を組み上げる技量が求められるらしい・・・。
この作品にもそれと同じような側面を感じて。
戯曲の秀逸さに加えて、
演じあげた二人の役者の底力と豊かなお芝居の引き出しに
息を呑んだことでした。

予定が詰まっていて今回はかなわないけれど、
もう一度観たい舞台・・・。
骨組みを知ってみれば、
間違いなく新たな面白さがやってくる気がして。

また、この作品、関西弁の力も実によく生かされていて。
関西出身者として、別の魅力を感じた舞台でもありました。

|

« 音楽劇「ファンファーレ」とても良く、でももっと!と思う。 | トップページ | COLLEL「消費と暴力、そのあと」舞台の呼吸に取り込まれる »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: サキトサンズ「梨の礫の梨」企みを作り演じ広げる底力に瞠目:

« 音楽劇「ファンファーレ」とても良く、でももっと!と思う。 | トップページ | COLLEL「消費と暴力、そのあと」舞台の呼吸に取り込まれる »