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COLLEL「消費と暴力、そのあと」舞台の呼吸に取り込まれる

2012年10月18日ソワレにてCOLLEL「消費と暴力、そのあと」を観ました。

会場は早稲田LIFT。
以前製本工場だった(らしい)このスペースは
とても特徴のある作りになっていて
吹き抜けのある空間の上と下から
観劇をすることができて・・・。

最初に上から覗き込み、
その世界に圧倒的に浸りこんで
翌日急遽下から観劇。

公演に舞台上に育まれる色の変化にも、座る場所によってそれぞれに見えるものが異なることにも驚嘆しました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

劇作・演出・出演:田口アヤコ
音響・演出:江村桂吾
研究・演出:角本敦


出演:菊地奈緒(elePHANTMoon)、宍戸香那恵、汐見鈴、杉亜由子、松本みゆき、東京ディスティニーランド、八ツ田裕美、

会場に足を踏み入れた途端に、
そこには世界があって。
1Fと地下を貫く大きな吹き抜けがある空間の
上と下に客席がしつらえられていて、
少し迷った末に、全体の見切れが一番少なそうな
座席に腰を下ろすと
忽ちに場の空気に取り込まれる。

作品が始まり
役者たちが描く刹那たちが
空間に置かれ重ねられていきます。
そのひとつずつが、
ふくよかで強いニュアンスを持ちつつ、
シンプルで、ピュアで、
色を滲ませることなく、その想いの肌触りとともにあって。
タイトではなく、でも密度を失うほどにルーズに散ることもなく、空間に繫がれ、満ちて、引いて、呼吸し、愛憎の質感を剥ぎだし、昂ぶり、沈む。

役者達がその身体とともに織り上げるニュアンスが、
生々しく、美しく、あからさまに、現れ、隠れ、
何度も揺らぎ解かれつつ、
やがて一人の女性の
質量から解き放たれたような想いに束ねられ、
さらに踏み出していく。

その心風景の息を呑むような解像度に圧倒され、
終演とともにゆっくりと霧散していく空間の残像に暫し呆然。
そして、ゆっくりと、でもとても強く、
1Fで得た女性の心風景を
もっと内側で眺めたいと思う・・・。

幸運にも翌日、時間がとれたので
今度は地下の最前列の座席で観劇。
その視野には、前日に焼き付けられたものとは異なる、
地に足のついた役者たちの身体の実存感があり
置かれていく想いの移ろいも
身体からやってくる生々しさにより深く染められていて。
様々なフォーカスのなかに浮かぶもの、
いくつにも異なる内心を捉える痛みの感覚、
執着、足掻き、閉塞、それらの混濁、
前日の如くたゆたう想いの肌触りを感じつつも、
同じ高さで正面から見据える地下にある身体の、
上に漂う想いとは異なる
生きる感覚のリアリティを伝える力に驚愕。
上から見ていると、心風景の向こうにあった
一人の女性の生きる姿が、
下にいると、その位置関係が逆転して
一人の女性の、生々しく禍々しくさえある
生きる姿から、その内心を透かして見るような風景に変わり、
その想いを抱く女性の、
強さも脆さも、美しさも醜さも、その呼吸の強さや深さまでもが
観る側にしなやかに残る。

さらには、個々の役者の表すニュアンスの切先が
一晩でしなやかに変化していたことにも驚きました。
役者達の醸し出すものが、他の空気の色や質感と対応して
空間全体のなかに新たな感触となって置かれていく感じ。
そもそも役者たちには、ロールを介して、
それぞれが表現するジェンダーとしての色を醸し出すに十分な魅力があって。
加えて、そこには、単にロールを語り演ずる力にとどまらに
舞台の時間を共有することの、
とてつもないふくよかさが育まれていて、
ガッツリ巻き込まれてしまいました。

一番コアというか大外にあるものは、
ありがちなというかありふれた、男女の別れ話なのだとは思うのです。
でも、 この作品には、
物語り受け取るということだけではない
多分、何回観ても、 一期一会のごとく異なり、
飽くことなく惹きつけられ、観ていて閉じ込められてしまうであろう
演劇そのもののの魅力が生まれていたように思います。

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コメント

役者達が演じて伝えようとしている姿そのものが、人間関係のコミュニケーションにも繋がる「伝える力」だと、舞台を見るたびにそう強く感じます。

投稿: 成功哲学・成功法則研究 | 2012/12/18 16:58

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