ラフメーカー「ユリコレクション」時をシームレスに束ねる演技とひかりたち
2012年9月6日ソワレでラフメーカー「ユリコレクション」を観ました。
会場は池袋シアターグリーンBox in Box シアター。
前々から気になっている劇団ではあったのですが、拝見するのは初めて。
その時間や人の繋ぎ方のしなやかさに目を瞠りました。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
作・演出 : 天夕隼佑
出演 : 小鶴璃奈、園田ひと美、谷恵莉衣[以上、ラフメーカー]、小林晴樹、尾崎宇内(演劇ユニットてがみ座)、高田淳(X-QUEST/ドルチェスター)、湯田勝也、あいだしんご、吉崎愛優香、中西謙吾、鈴木嘉之介、東象太朗、勝美友歌、陽花灯里、井上博喜
冒頭からしばらくは、ちょっととまどう。
説明的なことはあまりなく、シーンがひとつずつ重ねられ、物語が歩みを進めて・・・。
その時間軸が捉えきれずに迷う。
でも、シーン達に編み込まれたものが少しずつ繋がった形として姿を表していくにつれて、 次第に受け取ったものがやがて、母と娘のそれぞれの時間に編み上がっていく。
冒頭のとりあえず置かれたようなシーンも気が付けば世界の広がりとなり、観る側をさらに物語に浸していきます。
母親の時間と娘の時間、 二つの時がシームレスに撚られて編み上げられて、 次第に枠組みが明らかになり、 登場人物たちのロールが浮かび上がってくると、それまであいまいだったものが物語の歩みの中で、 時間と空間それぞれの広がりとなって観る側を包み込んでいくのです。
不要な演劇的デフォルメを感じさせない力がこの舞台にはあって。
たとえば、演じる側にとって容姿などの変化を物理的に強調して一人の人物の時間の経過を表現することは人物を表すことの正統で効果的なやり方だと思うのですが、
でも、この舞台の役者たちは、時間を外見的なものを必要以上に変化させることではなく、その刹那の表現に込めたロールが抱くものや醸し出される想いの色で切り分けていく。
主人公が母娘を演じ分けるやり方も同じ。 さらには、妊娠の表現にして安易に体型を物理的に変化させることなく、その時間を過ごした母の姿までも身体や醸し出される感覚だけで紡ぎあげて見せる。
そのことで観る側には乖離のない感覚で編み上げられた単なる二つの時間の重ね合わせではない 一体感をもった感覚が訪れて、観る側を物語の世界の重なりの中に封じ込めていく。母と子や家族、さらにはその周りのエピソードたち、 主人公のカメラと服と想いの色、そして才能。
時の移ろいを表す役者たちの身体が、それらが重なるいくつかの刹那に記憶と現在の質感を紡ぎ出し、内心の景色のごとく一つの視野に織り上げて観る側を浸潤してしまう。
場の転換に不要な区切り感を与えることなく、シーンをつないでいく舞台美術、
そして、照明も息を呑むほどに美しく、キャラクター達の姿や想いをしっかりと映えさせる圧倒的な力があって。加えて、ただ役者を照らすのではなく、語り、ロールたちの想いに さらなる陰影を作り出していて。
主人公(達)の姿が、娘の 今であっても、母の時間であっても
とてもビビットな魅力にあふれ、二人からそれぞれに伝わってくる受け継がれたものに、
はしたなくもちょいと岡惚れすらしてしまったりも。
他の人物たちも、 伝わってくる想いのリアリティが概念に削ぎ落されることなくとても自然に心に残って。
物語のくみ方には、ほんの少しだけ不要なもたつきを感じさせる部分があったものの、
ラストのシーンでは、外が残暑のまっただなかであることなどきれいに忘れ、降る雪の冷たさまでも舞台から感じることができました。終演後も暫く舞台の世界から解き放たれずにいた。
この劇団、少し続けてみたいなぁと思ったことでした。
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