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ホチキス「クライシス百万馬力」看板に偽りなしの馬力を感じる

9月13日ソワレにてホチキス「クライシス百万馬力」を観ました。
会場は三軒茶屋のシアタートラム。

スタイリッシュで、どこか懐かしい世界観に浸されつつ、それを支える圧倒的な舞台の力を楽しむことができました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 米山和仁

出演 : 加藤敦、山崎雅志、小玉久仁子、村上直子、山本洋輔、齊藤美和子、齋藤陽介、松本理史、ザンヨウコ、神戸アキコ、小沢道成、飯塚美雪、井場景子、今井夢子、上松みづほ、大野清志、緒川真生、加藤隆浩、川畑舞香、小太刀賢、小寺悠介、坂口アミ、田中正伸、内山拓磨、辻貴大、annie、浜田えり子、藤田未来、宮崎雄真、結、李そじん

大きなトラムの舞台ですが、
役者達がしっかりと舞台を支配して、
その広さにまったく負けていない。

ひとりのシーンでも、ふたりであっても、
約30人の出演者が舞台一度に舞台を埋めても、
役者達それぞれのそのロールの作りこみが、
常に観る側を捉えていて。
初日ということで、特に前半は、間のとり方とか台詞の流れとかには
やや迷いや澱みを感じたりもしたのですが、
キャラクターを背負う凛とした気概のようなものが
役者達にしっかりと内包されていて、
それが、ひとつずつのシーンを
物語の色として組み込み
さらなる半歩を生み出して観客を舞台に惹きつけていく
力となっていく。

骨格にはひねりもちゃんとあり、
質感にはどこか素敵な薄っぺらさも作りこまれ、
滞らず、一方で観る側を置き去りにしない展開が生まれ
ぐいぐいと取り込まれていくのです。
また、登場人物それぞれの個性が
実にさまざまに楽しいのですよ。
笑いどころも満載で、
そこには、場当たり的な設定や媚びるような笑いではなく、
いろんなベクトルの貫きから醸される感覚がしっかりとあって、
観る側をちゃんと共振させていく。
二人の兄弟、女組長、キャバクラとホストクラブの男と女、
そして診療所と警察と、
ちょっと昭和の日本映画風の猥雑が、
やがてどこかSFちっくな物語のアクションやかぶきと
絶妙に重なり合って・・・・。

メインの物語を組み上げる役者たちに加えて
さらにはアンサンブル的なロールの役者達にも
抜群のクオリティがありました。
集団として舞台のミザンスを作りながら、
ひとりずつが
しっかりと歌えるし、踊れるし、演じられるし、
場に精度と切れ味をもったニュアンスを作ることができる。
On B’wayの舞台などでは、
それこそ演劇学校であれば先生クラスの人たちが
比較的小さな役であっても舞台をしっかりと支えているという話を
聞いたことがあるのですが
この舞台でも力のある役者がアンサンブル的に舞台を満たし
作品の厚みを強かに支える。
で、物語を動かす役者達がそれに負けずにしなやかに際立って。

終盤、劇中劇での、
超有名戯曲&ミュージカルのパロディなども
そんじょそこらの紛い物とは鮮やかに一線を画す出来栄えで
見応えがありました。
場に観る側を満たす切れと、
本家との強かな重なりと遊び心が
紡がれ織り上がり、温度をつくりグルーブ感を醸し、
観る側を満たしていく。
ジェット団とシャーク団よろしく
場に鮮やかやな対比を作る男達と女達が
舞台の広さや高さをいっぱいに使い、
その場のロミオとジュリエットを、
しなやなかに物語の世界に紡ぎこんでいく姿に
目を見開く。
それが、そのまま、終盤の舞台の役者が作り上げる世界のスピード感や熱へとつながり、
でも巻き込むようなグルーブ感のなかでも、
作り手はクールなキャラクターの描き込みの手綱を手放すことなく
最後の舞台装置のけれんで観る側に彼らの世界をしなやかに渡し切る。

もうこうなると、初日の前半が少々硬かろうが、
暗転がちょいとごそごそしていようが関係ないというか、
役者たちごとの異なるベクトルへの突き抜けや、
アンサンブルのリズムのエッジをもった精度など、
作品に仕込まれた切れ味にことごとく捉えられて。

満たされて、本当に心地よくダブルコールをさせていただいて。
芝居というよりは、すごく良質なミュージカルコメディを観たような
高揚にたっぷりと浸されてしまいました。
作り手にとっても、15周年記念公演として、
これまでに培い蓄えてきた劇団の良さをいっぱいに盛り込むにとどまらず、
さらなる勢いを引き出した、会心の出来ではなかったかと思います。

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