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東京福袋2日目を観ました(CORPUS、めずらしいキノコ舞踏団、柿喰う客、東京デスロック)

2012年9月3日、東京芸術劇場リニューアル記念、「東京福袋」の2日目を見ました。

4団体の公演それぞれに、観る側を強く引き入れるような洗練があって。
夏ばてなどどこかに行ってしまうような、良質の舞台を体験できました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

改装前にも、この場所でなんどか観劇をしたことがありますが、改装後は従前のカジュアルな感じがなくなり、とてもシックな印象。

今回の座席はH列の上手側端でしたが、舞台が開けとても見やすかった。

その中で、秀逸な作品達を楽しむことができました。

・CORPUS 『飛行隊(A Flock of Flyers)』

劇場の前に見覚えのある牧場のような柵がしつらえてあって、数年前に同じ場所で見た羊たちを思い出す。
カナダ・トロントの劇団。
今回は、予算削減で飛行機を奪われた飛行隊という設定でのパフォーマンス、でもアイデアがあれば飛べるという・・・。
映画や昔のファミコンのCMなどで観たことのある軍隊の駆け足で登場する彼らは、
観る側をしなやかに捕まえるシンプルなリズムに、くっきりとした動きを重ねて世界を作り始めます。
いわゆる欧米的なウィットがいっぱいで、でも、それを表現する技術が徹底的に鍛えられている印象。
言葉を主にするのではなく、動きの裏側を言葉で繋いでいく感じがあって、日本語や英語(ここまではなんとかわかる)、フランス語やドイツ語の4カ国が交じり合っていても観る側がおいていかれることがない。

身体の動きに加えてアカペラの歌や観客を巻き込んでのパフォーマンスも秀逸、気がつけばわくわくと委ねて彼らの世界を楽しんでおりました。

・珍しいキノコ舞踏団『珍しいキノコダンス』

観ていて、なんてふくよかなのだろうと思う。
音楽に合わせて、イメージが立ち上がる。ルーズな感じにはルーズな空間が生まれ、高揚には空間の密度がすっと上がる。
どこかアフリカンな感じの音楽には、ワイルドな印象がユーモラスに取り入れられ、ジャズにはグルーブ感が織り込まれソロの輝きが観る側をぐいぐいとひきつけていく・・・。The Rhythm of Lifeの震えのような動きから伝わってくるニュアンスも圧巻で、昔観たスイートチャリティの舞台を思い出しつつ、どこか憑かれたような感覚に浸されて。

ダンサー達の、音楽の上に身体を動かすのではなく、音楽に編みこむように身体で刹那を織り上げていく感覚がとてもよいのですよ。

ダンスを観ることでやってくる感覚って甘いのも苦いのも辛いもの大好きですが、このダンスはそのテイストの楽しさの点で極めつけのひとつのように感じました。

・柿喰う客『いまさらキスシーン』

拝見するのは3度目。演者もコンテンツも同じなのですが、それぞれに微妙に印象がことなって。
完成度は極めて高い演目だと思うのですよ。ストーリーにしても、表現にしてもガッツリ練られている感じがするし、刹那ごとの色の作り方や間のとり方にも、作りこまれた安定感を感じる。
でも、その一方で、役者はその安定の上でお芝居をしているのではなく、完成度を足がかりにさらに挑んでいる感じがするのです。
それが、吉と出ているのか凶と出ているのかは、単純には語れない部分があって、
今回についていえば、しばらく前に見たときから比べると、筋力のようなものが心持ち強くなって、
骨組みの伝わり方がより鮮やかになり、一方で紡ぎだされる想いの繊細さがほんの少しだけ減じられたようにも感じる。
とはいうものの、その良し悪しを凌駕する役者が醸しだす演劇のライブ感のようなものがひたすら圧倒的で、しっかりと楽しむことができ、作品自体の秀逸さに改めて舌を巻いたことでした。

・東京デスロック『Counseling カウンセリング』

突然余談からでもうしわけないのですが、
観終わって、作品を振り返って思い浮かんだのは北京ダック。
皮の部分のおいしさが際立って有名な料理なのですが、
そのおいしさは表裏一体というか、皮の部分に留まらず肉の部分もしっかりしたアヒルが材料だからこそ
やってくるのだとおもう・・・。

さて、この作品、劇団として定番のWelcomeメッセージのあと、
舞台後方のスクリーン部分に、
カウンセリングの定義が映し出されます。

Counseling [kάʊns(ə)lɪŋ]
依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助。社会・経済・生活の各分野における種々の専門的相談援助行為を指し、例えば、就職関連、法律関連、美容関連、婚姻関連ほか、様々なものが含まれる。
アドバイスとは異なり、明確な解決策を直ちに提示することは原則的にない。

(東京デスロックのHPにある内容をそのまま引写しました。問題があるようでしたらご連絡ください)

そして、多田淳之介と宮崎聰、二つの地方劇場の芸術監督が舞台に現れ、
それぞれの現況や、東京で作品を作っていた頃のこと、
地方で作品をつくることの現状や、東京の演劇の現在と未来の展望を語っていく。
リニューアルされた東京の劇場のオープニングで語られることでもあり、二人のそれぞれの語り口や相手の言葉の聴き方には惹かれる部分も多く、観る側もいつしかその言葉に耳を傾けていきます。
いくつもの問題が浮かび上がり、それぞれに関しての思索があり、明確な結論や解決策がそれぞれから提示されることはないのですが、観る側には新たな視野や想いが降りてきて。

一方、スクリーンには、話し続けるそれぞれの、あるいは二人の姿が映し出され、
「Consulting
Now」
の文字が大きく掲示され続けます。そして、そこに音楽が差し入れられた刹那・・、
観る側の視座がほんの少し引かれ二人のありようがカウンセリングのパフォーマンスともなっていることがすっと浮かび上がってくる。
やがて音楽は今様のものからこの国を表す曲の変奏したものに移り、二人の言葉は心に残りつつ、舞台はそこに重なったカウンセリングの態からの、別のニュアンスに取り込まれていく。

時間が来て、宮城氏を客席側に送り出した多田氏の後ろのスクリーンにはカウンセリングの文字が奥行きをもって広がり、客席が映し出され、日本の東京のこの場所の今の肌触りがカウンセリングを描き出す表現として、
北京ダックからそぎ落とされた皮の部分のことく供されていくのです。

まあ、宮城氏と多田氏の想いで太らせたアヒルですからそりゃ肉の部分も味わい深かったのですが、舞台をそこにとどまらせることなく、観る側に「カウンセリング」の様態を切り出し、演劇的な手法とともに観る側にその姿を表現した多田演出の手法にこそ、深く囚われてしまいました。

従前のSTスポットや美術館での公演は未見で、劇団のツイッターなどを読むと、もしかしたらそこからさらに異なる見え方がある作品なのかなぁとも思う。
でも、今回の作品にも、観る側を繋ぐ確かな今の切り取り方があって・・・。

来年の東京復帰公演がとても楽しみになりました。

*** *** *** ***

休憩込みで2時間を少し過ぎるほどの上演時間だったでしょうか・・・。
尺など関係なく、なにか劇場の飛び切りのお披露目をもらった感じ。

終演後、劇場を出て、天井が不思議なライティングをされていて、
(なんだったのだろうか・・・)
この先も、この場所で、きっとたくさんの公演を観るのだろうなぁと、
高く透き通った天井を眺めつつ、
しばらくリニューアル後最初の観劇を反芻し続けて続けておりました。

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