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劇団東京ペンギン「小田急VSプレデター」作り手の多彩な表現の引き出し

2012年8月26日マチネにて、劇団東京ペンギン「小田急Vsプレデター」を観ました。

会場は高円寺明石スタジオ。

度肝を抜くような派手さはないのですが、重なるシーンのひとつずつに
しっかりと出汁が効いている感じがあって、
物語の展開に身をまかせて最後まで観てしまいました。

(ここからねたばれがあります。十分にご留意ください)

脚本・演出 : 裕本恭

出演 : 丸塚香奈、寺尾みなみ、工藤敬輔、中井萌、野澤太郎、裕本恭、和田陽子、米津知実、ギニアス西村、木皮成、後藤祐哉(声を出すと気持ちいいの会)

全体で見ると
アイデアがびっくりするほど斬新だとか、
物語の展開が著しく派手というようなことはない。
むしろ、どこかステレオタイプな部分をもった
舞台ではあるのです。

でも、飽きない。
ひとつずつのシーンの作りこみが
しっかりとなされていて、
なおかつ観る側をいたずらに窒息させない
表現の冴えや遊び心がたんとあって。

標準語と関西弁(とてもネイティブ)の使い分けから
狂言のような表現、
売店のおばちゃんの意外な使い方をはじめとする、
何気に色がしっかりと作られたキャラクターたちの個性・・・。
昇降する電車が醸し出す、
絶妙にチープな感覚が流れずに物語のイメージを支えたり
一方でプラレールを使って遊んでみたり、
いろんな印象のなかに
メインディッシュのプレデターの質感が
観る側に組み上げられていく。

こう、なんだろ、ノックアウトパンチではなく
たくさんのボディブローでじわじわやられていくような
気が付けばはまっていたような感じがあって
で、終わってみれば、確かな「面白かった」という充実感が残る。

今回の作品に限って言えば、
作り手や役者の潜在的に持つ表現力に比べて
モチーフ自体が若干凡庸な感じがあって、
もちろん、その中に映える表現もたくさんあったのですが、
もっといろんな作り手の時代の切り取り方や、
役者の底力も観たいなぁと思ったり・・

まあ、そうはいっても、
どこにでもありそうで、
でもあまり体験したことのない
不思議な満足感が終演後に降りてきたのも事実で、
この集団の今後の作品に興味がわきました。

可能であれば、
公演を続けて観たいなぁと
思った。
この劇団、もしかしたら、観ていて気づかないような
観客の無意識の領域を刺激するような魅力も
隠れているのかもしれません。

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