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unks「世界の果て」、表現を紡ぎだす手作りの威力

2012年8月29日ソワレにてunks「世界の果て」を観ました。

会場は渋谷Le Deco5。

役者の身体による表現の切れや演技が切り取る心情や風景に加えて、昔、学校の授業で活躍していたあの機器によって手作りされた舞台効果に魅了されました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

原作 中村文則 (「世界の果て」文藝春秋刊)
構成・演出 上村聡史

出演:上田桃子、亀田佳明、斉藤祐一、細貝光司

OHP(オーバーヘットプロジェクター)、
齢がばれるかもですが学校では授業などで時々使われていて、
休み時間などにはいろいろと遊んで先生に怒られたりもしていた
定規とか、教室に置いてあったの水槽とか乗せたりして・・・。

その遊び心が、極めてクリエーティブな
創作の手段として舞台に生かされる。

正直なところ、物語自体がわかりやすいものではなかったし
不条理に思えたり、織り上がるなかでの歪みに圧迫されたり
針が飛んだように塗り替わるシーンのつながりもどっさりあった。
にも関わらず、OHPを主砲に据えた場の切り出し方や
空気の質感の作り方に圧倒的な威力があって。
そこに浮かび上がる役者たちの身体が作り出す
ひとつひとつの場ごとの印象がとてもクリアで、
観る側を捕まえつづけるに十分な
創意の連鎖が育まれ、
よしんば個々のシーンのつながりを見失っても
舞台から目を離すことができない。

そうして、積み重なったシーンが投げっぱなしにならず
幾重にもループして、ワープして、作品に厚みが生まれ、
その厚みがさらに新たな踏み出しとなって観る側を凌駕していく。
中盤の時間が巻き戻ったような感覚が導く高揚や、
終盤の闇への落下感、
気が付けば
生きることと死のボーダーが浮かび上がり、
自分の立ち位置が滅失していて・・・。

ナイロン100℃が使うような
映像と演技の重なりに
さらに、役者の極めて手作業でのオペレーションによる
手作りの生々しさが加わって、
精緻なだけにとどまらない、息遣いのようなものが
舞台に織り込まれて・・・。
これ凄い。

場所や人数や道具などの
表現のスケールを逆手にとって、
終わってみれば、
その空間でしかできない、しかもその空間では想像もできないような
世界の奥行きがあって。

たぶん作品の100%の理解には至っていないと思うのです。
でも、そんなことを忘れてしまうほどに
観客として、ずっとテンションを持って
自らの想像力のリードを解き放ち、
空間の色に染まることができました

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