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中井美穂×シアターグリーン企画「師匠の部屋」参加団体にさらなる一歩を導く仕組み

お盆休みに中井美穂×シアターグリーン企画の「師匠の部屋」の3作を観ました。

参加団体は「水素74%」、「Mrs.fictions」、「ろりえ」。

通し券を購入して2日に分けての観劇、それぞれの作品に期待をはるかに超えるクオリティがあり、たっぷりと楽しませていただきました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

会場はシアターグリーン5F「Box in Box THEATER」。
3劇団共通で使う和室が舞台にあって、そこに、劇団ごとに作品やセンスに合わせて、
道具を置いたり、軸をかけたり、高座をしつらえたり・・・。

テーマは「落語」、時間は75分以内というのが中井美穂さんから課せられた態の枠になっていて、その中で各劇団が作品をしつらえていきます。

・水素74% 「人間バラ屋敷」-8月16日マチネ-

作・演出 : 田川啓介

出演 : 近藤強、折原アキラ(以上青年団)、浅野千鶴(味わい堂々) 

登場人物の関係が、奇を衒ったものでないにもかかわらず、
じわじわと三すくみになっていくなかでの空気の変化が
絶妙によくて。

枠の部分とそれぞれのロールの引力が
少しずつ互いと重なりながら、
浮かび上がってくる。
役者たちが、半歩ずつ踏み出しながら
その空気をエスカレートさせていく。

役者の地力を引き出すというか
3人の役者たちそれぞれの味わいが見事に抽出されていて
見ごたえがありました。
アフタートークにもあったように、折原アキラの身体が
ずるいくらいに舞台を滑稽にしていく。
それも、ただはみ出すわけではなく、その場の密度を高め想いの肌触りをあらわにさせたうえで滑稽なのです。
また、浅野千鶴の、どこかあざとくて悪~い微笑み(超褒め言葉)も絶品。
それが、靴の鮮やかな色や衣装と絶妙に重なって
今までの彼女の舞台とは異なる、でも過去の延長線にあって
この人でしか表現できないであろうキャラクターの世界を暴き出していく。
近藤強の、表層のタフさとふっと垣間見せる脆弱さも絶品。
言葉の重さや間にある種の戦略を感じるようなお芝居がじわじわと観る側にも
効いてくる。

派手さもないし、
落語自体なんぞおくびにも出さないのですが、
その世界を何気に連想させつつ
だんだんに惹きこんで抜けなくしてしまうような
作品の力に掴まれてしまいました。

・Mrs.fictions「花柄八景」-8月16日 ソワレ-

作・演出 : 中嶋康太
出演 : 今村圭佑 岡野康弘 (以上Mrs.fictions) 北川未来 小見美幸 久我真希人(ヒンドゥー五千回)

初音ミクたちに負けて、
落語が壊滅するという物語のベースの発想がものすごくて、
その前提をしっかりと継承発展させそのままに貫かれてしまう
展開のすごさに愕然、悶絶。

しかも、アイデアだけではなくコンテンツに
落語がしなやかに織り込まれていて。
「地獄八景亡者戯」のフォーマットが出てきたときには
にやにやしているくらいだったのですが、
そこから出てくるわ、出てくるわ、落語の七変化。
「らくだ」や「死神」の切り取り方も鮮やかだし、
落語で語られるアニメも絶品。
パンクロックのコンサートに語られ始める「芝浜」にはもう大爆笑。
しかも、そのアイデアにとどまらない、
会話や物語のくみ上げが
実にしっかりとしていて
衣装にしても、容姿の作りこみにしても
メダルを落語家の階級にたとえたり、
パンク姿で料理や生け花を習わせ
てみたりと
舞台上にあることがが刹那の面白さにとどまらず、
そこに織り込まれた落語だからこその奥行きをがっつりと作り出していて。

役者たちも本当にしなやかに切れていて、
要所要所の噺では、
上下もしっかりと作られ、語り口もよく
劇中劇ならぬ劇中噺として
十二分な見ごたえがあって。

観終わって、その総合力に圧倒されて呆然となっておりました。
これ、傑作だと思います。

・ろりえ「逮捕(仮)」-8月19日 ソワレ-

作・演出 : 奥山雄太
出演 : 梅舟惟永 徳橋みのり(以上ろりえ) 尾倉ケント(アイサツ) 堀越涼(花組芝居)

最初は突飛な印象すらあった物語の枠組み、
でも、次第にそれが、表現されていくものへの
したたかな仕掛けであることに気付く。

4人がそれぞれに演じるロールが
きちんと色を持っていて、
物語というよりは、その物語に収束する
心情の肌触りに強く惹かれいくのです。

男優たちはどちらかというと
舞台の骨を作りこむ役回りなのですが、
単に物語の進行を語るのではなく、
場ごとに女性たちの想いを引き出す安定と献身があって。

女たちそれぞれの心情が
じわじわと沁みだしてくる。
直情的にやってくるのではなく、
時に炙り出されるように、
あるいは深いところから導き出されるように
観る側に伝わってくる感じがあって、
その重なりが、キャラクターの艶として
あるいは業として観る側を染めていく。
想いの薄皮が次第にはがれて
女性のうちにあるものが
それぞれの役者の醸すトーンの奥に
息遣いを晒し観る側に伝わってくるというか、
キャラクターたちの内側の
無意識までが透かされていくような感触が生まれていく。

ろりえの二人の女優たちには、
これまでの劇団公演でも、客演時にも見せたことのない
新たな引き出しを使っての表現があり。
派手さはないのですが、
観る側を解き放たない深さというか余韻に浸されて。
さらにはその先に
劣情が昇華滅失したその先にあるような
女性が生きることに潜んだエロさすら感じられたりも。

役者に秀逸に加えて、
その感覚を導き出した奥山雄太の手腕にも舌を巻いたことでした。

*** *** ***

3作とも、ベクトルは違うけれど、それぞれにこれまで見た劇団の作品からの
踏み出しがあって粒ぞろい。

このような複数劇団のフェスティバルによくある、ショーケース的な表現ではなく、
個々に斬新な作劇があり見ごたえを感じました。
厳しすぎず、でも枠として機能する、設定や上演時間のルールが
上手く機能していた感もあって。

少々観客が少ないのはさびしかったものの、
たっぷりとそれぞれの作り手や役者の技を堪能させていただきました。

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