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ジェットラグプロデュース「リ・メンバー」作品全体のメリハリに組み上がる上質なエンタティメント

2012年7月13日ソワレにてジェットラグプロデュース「リ・メンバー」を観ました。
会場は新宿御苑のシアター サンモール。

この作品、昨年3月11日に初日を迎えるはずが、震災で公演自体が中止となった作品ですが、
同じキャストで1年4カ月を経て上演初日を迎えて。

実は、私もあの日、この作品を予約をしていて、会場に向かう道すがらなどはいろんな想いも去来したのですが、
舞台が始まるとそれらはすっと消え去って・・・。
物語の世界にすっかりとはまりこんでしまいました。

(ここから先にはネタばれがあります。十分にご留意の上お読みください。)

作  :ブラジリィー・アン・山田(ブラジル)

演出:成島秀和(こゆび侍)


出演:川野直輝 映美くらら 泉政行 清水那保 永山智啓(elePHANTMoon)
須貝英(箱庭円舞曲) 古川侑 佐々木なふみ(東京ネジ) ・ 鈴木歩己

[バイオリン演奏] 山内彩香

客電をそのままに、ヴァイオリンの演奏が始まり、
劇場の扉が閉じられて・・・。
そのバイオリンが開演前の客席の雰囲気を落ち着かせ、
観客を舞台に引きいれる。

前半そこに貫かれるのは、
恣意的な薄っぺらさとともに組み上げられていく
ウェルメイドコメディのテイスト。
肌が粟立つほどにエッジをもった骨組みが組み上がるいうわけでもなく、
むしろ束ねられたり形骸化しない生々しさも残るのですが、
シーンの重なりの綱渡りのなかに
物語を破綻させない絶妙な成り行きの粘り腰があって、
時には演出のしたたかであからさまで大胆な場の切り方や
役者たちの力技やデフォルメ力も絡めて、
兎にも角にも、そこに埋め込まれたクライムの顛末を見せ切ってしまう。

そして、後半になると、
舞台にはまったく異なる質感がすっと立ち上がり
観る側に置かれた前半部分の
バックヤードの顛末が供されていく。
場にはクライムの内幕としてのテンションが保たれ、
その空気に置かれ、
前半を操ったものの姿や
別の視座から眺める前半のシーンたちの組み上がりに心を奪われているうちに、
見え隠れする同じ仲間での5年前の出来ごとや
しっくりと交わらないキャラクターたちから
垣間見えるものがしなやかに観る側に漉きこまれていくのです。

事の成り行きや回収される伏線の一つずつが
観る側に新たな視野を作り、
何度も場のシチュエーションを染め変え
キャラクター達の素顔と距離を浮かび上がらせていく。
そこには、力技に頼らずに場を支える
作りこまれた仕組みや役者たちのお芝居の秀逸があって。
物語が解け新しい視野が生まれるたびに
目を見開き、得心して、更なる展開に再び目を奪われる・・・。

観る側が、十分に揺さぶられたドラマのラストシーンは
さらに突き抜けて美しく踏み抜けるようなパワーに満ちて。
その終焉の先、
冒頭と結んでその舞台を閉じるヴァイオリンの音色が、
とても深く豊かに感じられ、
舞台に仕込まれたものの秀逸が散ることなく
すっと心に留められて。
なんだろ、観終わって、もたれることのない、
とてもふくよかな感覚に捉えられました。

まあ、初日ということで、
前半部分にちょっとワタワタした感じや、
ほんの少しだけ丸まり重なってしまって
観る側に解けきれなかったしまったロジックの組み上げも
なかったわけではないのですが、
これは、きっとステージを重ねるうちに消滅していくもの。

役者たちの醸し出す密度からは
場に対して平板にならないそれぞれの色が紡がれ、
ロールの個性をしなやかに観る側に置きつつ、
物語にさらなる膨らみを編み上げていて。
様々に仕組まれたメリハリにしなやかに導かれ、
幾重にも踵を返す終盤の物語の姿にグルーブ感すら生まれて。
個々のシーンにとどまらず、上演時間全体にデザインされたメリハリに
脚本の企みが鮮やかに映える。
物語を追いかける面白さに加えて
作家と演出家、そして役者たちそれぞれの力量を
しっかりと感じることが出来た舞台でもあったと思います。

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