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RONNIE ROCKET「ともだちのそうしき」演じ手を見せるフォーマット

2012年5月26日にRONNIE ROCKET「ともだちのそうしき」をみました。

会場は、前回に続いて、東北沢駅から歩いて10分ほどのところにある大吉カフェ。

出演者の方が急病降板といったアクシデントもあったのですが、
急遽登板の役者さんが、また異なるテイストを醸し出し代役を勤めあげたりもして。


今回も女性バージョン2組を拝見。ほぼ同じ物語でありながら、
演じ手たちが醸し出す色の違いやそれぞれ独自のふくよかさを
たっぷり楽しませて頂きました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

作・演出 : 仗桐安

この作品は演劇形式でもリーディングでも何度も見て
内容もよく知っている作品なのですが
にもかかわらず、それぞれの役者たちが織りなす時間に、
観る側が既知の作品であることを忘れさせる
豊かなテイストがあって、
しっかりとその流れを追わせてくれる。

*17:00の回

出演 : 百花亜希 中谷真由美

17時の回は冒頭からキャラクターがしっかりと作りこまれていて
観る側をあっという間に二人の時間に引き入れる力があって・・・。

二人がそれぞれに戯曲を読み込んでいて、
お互いの手の内に作品の流れが明確にあって
だからこそのしっかり見切った距離感や
阿吽の呼吸が生まれていて。
でも、そこに収まるという感じが役者に観られないのが凄く良い。
醸し出された膨らみから、
互いに踏み出し
さらに生みだされたビビッドな奥行きには
戯曲の行間をさらに超えた
ふたりの空間を感じて。

両方とも関西出身の役者さんなので、
個人的にそのキャラクターの染め方や
間のとり方にも、抜群の安定感があって、
しかも、空気が貫かれていても、
佇んだり澱んだり硬直することなく
しなやかに膨らんでいく。
百花亜希の観る側を一桁凌駕するような解像度をもったぼけの質感に
中谷真由美の緩急をしなやかに出し入れした絡み方が
場の空気に絶妙な温度の変化を創り出して。・・・

組み上がりのしなやかさももちろんあるのですが、
この回の一番の魅力は
やっぱりグルーブ感すら醸し出すような
絶妙な「間」たちだったかと

なにより役者からお芝居の刹那を楽しんでいる感じが
ふくよかに伝わってきて、
みている側までが満たされてしまいました。

*20:00の回

出演 : 渡辺詩子 菊川朝子

出演予定だった村井美樹が急病とのことで、
急遽代役として鳥取在住の菊川朝子を立てての公演。
稽古も通常よりはるかに少ない状態での
本番だったそう。

でも、二人の役者たちは
焦ることなく、たがいに空気を探りながら
ゆっくりと自らのペースを撚り込んで
その場の物語を組み上げ、広げていく。
冒頭の数分には、
観る側にも息をつめて、
二人に現れるテイストを探る感じがあったのですが、
それが、戯曲に重なり始めると
これまでのどのバージョンにもなかった
初対面の場のリアリティに変わって・・・。

一旦物語が解け始めると
それぞれの役者たちが
自らの紡ぎあげる色を楽しむような風情が生まれ始める。
刹那にそれぞれが自らの世界を組み込み、
すると、それを受け取り自らにとり込んでの
色のふくらみが生まれていく。
そのシーンごとの空気が、
観る側を強く惹きつけてくれる。

本当に一瞬の空気の澱みや
投げっぱになった刹那がなかったわけではないのですが、
それも含めて、場に現れてくるものに、
これまでのバージョンとは異なる
様々なフォーカスのビビッドなおもしろさがあって
気が付けば二人が互いに醸し出す世界に
すっかりと身を委ねてしまっていて。

渡辺詩子が場の空気を細かくコントロールするなかで、
菊川朝子が自分の速度とテイストで色を織り上げ
次第に物語を膨らませていく。
それぞれが互いを見ながら生かしていく
真剣勝負が観る側をさらに引きつけて。

前回観た、予定されていた村井美樹とのバージョンも
非常に高い完成度があって
囚われてしまったのですが、
今回のバージョンには、
それと全く異なるベクトルの吸引力が生まれていて。
菊川朝子の役者力にも惚れ惚れしましたが、
それを広げる空気を創り出していく
渡辺詩子の力量にも改めて瞠目。

代役を招いての舞台という感じではなく、
新たな演出での別バージョンとして
作品の別なテイストをがっつり楽しむことができました。

*** ***

観終わって、
このフォーマットの懐に深さに舌を巻き、
さらにいろんな役者さんが、
そのパフォーマンスで生みだす世界を
観たいと強く思いました。

7月にもまた、公演があるようですが、
どんな組み合わせでどんなテイストが生まれるのか
凄く楽しみです。

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