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miel「ま○る」、物語を空間に解き放つ創意

2012年5月10日ソワレにてmiel「ま○る」を観ました。会場は中野富士見町から少しの所にある
ザ☆キッチン中野。

時より雷鳴がとどろき、雨が気まぐれに落ちてくるお天気でしたが、
公演が始まった瞬間にそんなことは忘れてしまい・・・。

物語と役者たちの、表現の重なりと広がりに深く取り込まれてしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

作 : 佐々木なふみ(東京ネジ) ほさかよう(空想組曲) ハセガワアユム(MU) 上野友之(劇団競泳水着) 登米裕一(キリンバズウカ) 吉田小夏(青☆組)

構成・振付・演出・出演 : 金崎敬江

出演 : 北村圭吾 佐野功 末原拓馬 阿久澤菜々 石井舞 杉亜由子

冒頭、明かりがついた刹那のシーンから
一気に取り込まれる。
ぞくっとくる。

そこから6つの物語が
言葉とは異なる饒舌さをもった
身体による表現を挟んで
ほぼシームレスに綴られていきます。
物語を綴ったのは、
まさに今、脂が乗り切った6人の作家たち。
それぞれのテイストが、
作り手の創意によって、
観る側に対する肌触りとなり
透明感をもった高揚や楽しさを醸しつつ
舞台を満たしていくのです。

それは、ちょっとビターな雰囲気のなかに
素敵な粘度をもったカップルのビビッドな生活感であったり
観る側が目を見開いてしまうようなリアリティをもった
ホラーの洗練であったり、
意外な視座と表現にトランスした都会の風景であったり・・・。
さらには音による言葉で組み上がる世界に
動作による言葉のニュアンスが重ねられ、
世界に新たな広がりと解像力が生まれ
ちょっと下世話な雰囲気ですら
どこかこじゃれた色に塗り変えられ
世代をつないで伝えられていくものの感覚は
女性たちの生きる今と時代の俯瞰のそれぞれの質感へと翻って。

作り手が生み出すミザンスや密度には、
独自の境地が存在していて
様々な色もタイプも
常ならぬ質感やクオリティの洗練として醸し出されていく。
浸透率の高さというか
観る側が、普段なにかを感じるプロセスをいくつかすっ飛ばして
直接コアを染め揺すぶるような力があって、
それは、描き方の卓越したアイデアと
刹那ごとの徹底的な作りこみの賜物なのだろうけれど、
観る側は
シーンのピースごとに裏打ちされているであろう
役者たちの様々な物理的な負荷を全く感じることなく
ショーケースの内側にあるものを眺めるがごとく舞台を見つめ、
置かれたもののリアリティよりも高い画素に捉えられ
作品の世界のピュアな肌触りを感じるまでに引き寄せられてしまうのです。

初日ということでしょうか、
あとほんの少しだけ精度が上がる余白はあったように思いますが、
よしんばそうであっても、
秀逸な演者たちによって作り手の世界は
そのことが印象に残らないほどに
しなやかに編み上げられていて。

終演後も、舞台上の透き通った世界の見え方が
解けることなく
作り手の世界から
暫く抜け出すことができませんでした。

*** *** ***

ちょっと余談ですが、この作品、
開演前に渡される当日パンフレットには作家の名前だけが記載されて
そのパートをどの作家が紡ぎ出したのかはわかりません。
作品を観終わって、それぞれのパートが誰の手による作なのかを想像するのも
なかなかに楽しく・・・。
(帰り際に渡される構成表には作家と「ま○る」の○部分に一文字がはめられた
作品世界に裏打ちされたタイトルの記載があって・・・。
作家と作品の紐づけゲーム、個人的は6割6分の打率でありました。)

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コメント

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投稿: Lanfranco Sal | 2012/05/24 19:00

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