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文月堂「へちま‐糸瓜‐」丸まり切らない個性に惹かれる

2012年4月26日マチネにて文月堂「へちま」を観てきました。
会場は下北沢オフオフシアター。

キャラクターたちとその時間の質感に
作り手一流の表現があり、強く惹かれました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

作・演出・出演 : 三谷智子

出演 : 名取幸政 辻川幸代 白洲本樹 実近順次 久富麻季 辻沢綾香 神馬ゆかり

当日パンフレットに描かれた相関図をみて
かなり複雑な人間関係を想像しちょっと身がまえたのですが、
前半の舞台に描かれる世界は
それを当たり前のことのように包み込んで
とてもわかりやすくて・・・。
むしろその背景は
キャラクターたちそれぞれの個性が
浮かび上がってくる中盤以降に
しなやかに効いてきます。
一人ずつの個性を照らしだす
バックライトのように
ひとりずつが抱えるコアに
エッジを創り出していく。
表層が観る側に馴染むに従って
設定が導く立体感のようなものが現れてきて
舞台上で描かれない時間まで
彼女たちが歩み、そして歩んでいくであろう時間の
質感として観る側をとりこんでいく。

三人姉妹にはくっきりとした
トーンの貫きがあって
そこに重なる周辺の人物たちが
エピソードを編み込み、
いくつもの色を浮かび上がらせていきます。
その組み上げがとてもしたたか。

キャラクター達の尖った部分が
役者たちの緻密な演技とともに
高い解像度で作りこまれているのですが
物語が進んでいく中での
その丸まり切らなさのようなものが
実に秀逸・・・。
展開の中でそれぞれの個性が
ドラスティックに変わることはおろか
ほとんど崩れることなく、
でもその形状や色がほんの少しだけ
変わったように感じられる部分があって。
そこから
時間に染められた
とてもデリケートでリアルな
生きることへの感触の変化がやってくる。
そしてその変化が、さらに
人の変わらない部分の大きさを
観る側に伝えてくれるのです。

いわゆるウェルメイドのドラマとは違って
煮込まれ切らず
ごつごつした食感が最後まで残されていて。
その実存感あるから、
ラストシーンからこぼれた
ちょっと解けたようなウィットに
流れる時間の瑞々しさて愛おしさが
とても自然に降りてきて、余韻として残ったことでした。


役者たちの踏み込みもよく、
ステレオタイプなテイストの家族劇とはちょっと違うのですが、
とてもまっとうで、印象に残る舞台だったと思います。

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