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東京ネジ「石川のことはよくしらない」同じ戯曲に異なる役者たちが染める色①

2012年4月6日・7日いずれもソワレにて
東京ネジ「石川のことは良く知らない」のふたつのバージョンを観ました。

会場は原宿「空き地」、

座り心地の良い椅子に
開演までに飲み物とお菓子のサービスがあって・・・。
花冷えの街を歩いてきた身に
あたたかい飲み物の美味しいこと。

その、空気の中で物語が始まります。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意くださいませ)

作  : 佐々木なふみ

演出 :  佐々木香与子

出演 : 4月6日 Bバージョン 佐々木富貴子・両角葉・安田有吾
            Aバージョン 佐々木香与子・佐々木なふみ・金川周平

何度か上演されている作品だそうですが、私は初見。
2日間にわたって同じ脚本を 2つのユニットで観ることができました。
そして、やってくるものの違いに驚く。

45分程度の比較的短い作品なのですが、
一つの流れる時間が置かれる中に
一人の男その元妻、そして今の妻
その向こう側に見える二人の間のもう一人の妻と犬、
さらには石川啄木の存在などが、
透かし絵のように重ねられて・・・。
それらが、役者たちの表現の質感によって、
かなり異なるニュアンスに変わっていきます。

初日に観たBバージョンでは
個々の想いがしっかりとしたエッジをもって語られていく。
舞台上の個々の感情も
シチュエーションを背負って
観る側にくっきりと置かれていく感じ。
個々の想いが解けていくなかで、
キャラクターから浮かぶ色の重なりが、
観る側にとってのそれぞれの記憶や想いのクリアな俯瞰となって・・・。
男が3人の妻たちと過ごした時間の系譜が
そのありようのままに心に残る。
その強さがあるから、登場しない二人目の妻の存在も
実存感をもって浮かびあがってくるのです。

一方二日目に観たAバージョンでは、
心情がゆっくりと深く舞台に暖められていく感触があって。
冒頭から場の肌触りが観る側を抱き、
細微な心の動きがそのままに観る側を染める。
よしんば先にBバージョンを観ていて
物語の構造を知っていても、
登場人物空気の変化の理は
役者たちが醸す心情の重なりから、
一呼吸遅れて観る側に広がっていく。
そのわずかな時間差から垣間見える
キャラクターたちの過ごした時間の質感が
次第に繋がり、
その場の空気に奥行きが生まれていく。
実をいうと二人目の妻の存在は
Bバージョンと比べて曖昧に感じられるのですが、
その感覚には登場人物の内心のリアリティがあって、
あたかも、過ごしてきた時間をそのまま置かれたように
観る側に残る。

戯曲がとても秀逸。
石川啄木、砂となった啄木、二人目の妻など、
場に現れないものの描き方、
道具立ても、場にある人物の変化も、
それらから生まれるエピソードの差し込み方なども創意にあふれ、
観る側をしなやかに捉えていくことはもちろん、
キャラクター達に様々な色を纏わせうるような
懐の深さもあって。
だから、二つのバージョンを観た時、
物語の記憶が重なるのではなく
外からの俯瞰と内側の質感という
二つの視座からの異なる印象として
観るがわに残すことができるのだろうなと思ったり。

2バージョンのセット券が用意されていて
それを利用しての観劇だったのですが、
単に一つの物語を別のキャストで2度描くということに留まらない
たとえば、
同じ曲をジャズとクラシックのアレンジで奏でられるような
肌触りの違いがとても豊かに感じられたことでした。

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