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世田谷シルク「Kon‐Kon、昔話」豊かな表現で組み上げる物語のアラモード

2012年3月24日ソワレにて世田谷シルク「Kon-Kon、昔話」を観ました。

会場は王子のPit北/区域。

当初福岡のみの公演ということで、諦めていたのですが、急遽の上演とのこと・・・。
タイトな空間でわくわくする時間を体験することができました。

(ここからねたばれがあります。十分ご留意ください)

脚本・演出・出演 : 堀川炎

出演:下山マリナ 岩田裕耳 大日向裕実 小林真梨恵 武井希未 とまべちゆうこ 堀越涼 前園あかり


冒頭の落語がボディーブローのように効いて、
舞台の土台部分が作られ、
そこにシーンが重ねられて
物語の流れが舞台に生まれます。
観る側に恣意的に物語を追うという意識はあまり生まれず、
個々のシーンのニュアンスの楽しさや秀逸さに
心を奪われていく。
それほど広い空間ではないのですが、
役者たちの動きが洗練されていて、
刹那ごとに全体のミザンスをしっかりともって
観る側にシーンの印象をすっと刷り込んでいく。
しかも、全体を形成する役者たちでありながら
ひとりずつの個性もクリアに引き出され、
生かされていて。

追うつもりのなかった物語も
役者たちの個性で切り分けられていて、
自然に、混濁せずに、すいっと重なっては膨らんでいく。
舞台に流れるリズムがあって、その流れに乗っていると
知らず知らずのうちに世界の内側に入り込んでしまう。
ここ一番でのツケも本当に効果的、
シーンにエッジを作りながら
個々の役者の動きを縛るのではなく、
そのリズムからさらなる表現の自由さが
生まれていて。
なんだろ、一人ずつの役者の醸し出すものに
一歩さらに動いて獲得したような伸びやかさがあって
それぞれの作り上げる世界に
さらなる色が与えられ
舞台を編み上げていて。

前回のシアタートラムの公演を観て、
広い空間を与えられた時の
作り手の才に圧倒されたのですが、、
一方で今回のようなタイトな空間だからこそ
描きだしうるものの引き出しがあることも実感。

難しいことをなにも考えず
舞台上のパフォーマンスを観ているだけで
次々と楽しいし、
でも、気が付けば、
様々に重ねられるシーンのトーンやリズムから編み上げられる
表層だけではない作品全体としての世界に閉じ込められている。
様々な物語が取り込まれ、彩りを構成して
組み上げられた世界は
一つずつのパーツのテイストを超えて
新たな奥行きをもった感覚に生まれ変わっていくのです。

終わってみれば、
豊かな高揚感と充足感に満たされて
たっぷりと、いくつもの切り口からの
作品の味わいを楽しむことが出来て。
しかも、舞台に作り手としてのぎりぎり感がなく
さらに伸びる力を感じるのもすごくよくて・・。

これまでの作品は刹那の洗練にまず目が向いたこの団体ですが、
ここ何回かの公演では洗練の果実のテイストが
よりジューシーで豊かになった印象。

次の作品を心待ちにする気持ちが
従前より一層大きくなりました。

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