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双数姉妹「オルフェごっこ」大楽の感慨に潰されない作品の完成度

2012年3月20日ソワレで双数姉妹「オルフェごっこ」を観ました。
会場は吉祥寺シアター。

立ち見も出る大盛況のなかでの休止前最後の公演、
個人的にも大好きな劇団で、
長く見続けてきただけに観客としても感慨深いものがあったのですが、
すくなくとも終演までは、
そのようなことをを綺麗に忘れさせてくれる
舞台のクオリティがあって。

過去の作品同様に、
作品に向かい合い、
彼らの醸し出す色に深く染められてしまいました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

脚本・演出 : 小池竹見

出演 : 佐藤拓之 今林久弥 野口かおる 小林至 井上貴子 吉田麻起子 中村靖 青戸昭憲 辻沢綾香
熊懐大介 河野直樹 小池桂子 浅田よりこ

入場時、劇場内はかなり暗く、
チケットを照らして座席に案内してもらってからも
目がなれるまでに少し時間がかかる・・。
舞台にはすでにいくつかの情景があって、
時々、車で送られる女性と男性の会話が流れて・・・。

ふっと見回すと、場内は立ち見まででる盛況なのですが、
その気配をも闇が覆い尽くして舞台が始まります。

序盤こそ舞台の闇や物語の輪郭を掴むのに
若干戸惑いを感じたものの、
場に流し込まれる表現たちの積み重なりに
着実に惹かれていく。

シーンに流れや繋がりが見えてくるのは
少し時間がたってからなのですが、
ひとつずつのシーンや刹那に、
観る側をつなぎとめるにたりるものが織り込まれ、
舞台から目を離すことができない。
そこから、物語は展開し
冥府の世界での遊び心に満ちた
即興的なやり取りに魅せられ
役者たちの鍛えられた感性に浸される。
繰り出されていくいくつものパターンそれぞれに
ぞくっとくるほどの創意のほとばしりがあって、
もたつかず、先走らず、
絶妙な緊張感とルーズさを兼ね備えながら
シーンが形作られていく。

物語のベースになっているであろうギリシャ神話(オルペウスの冥府くだり)
についてはうろ覚えで知っている程度でしたが、
物語の今への置き換え方がしなやかで、
舞台のコアになる出来事も
展開が原典の骨格をしっかりとたどっているので
観る側が顛末を見失うことがない。
作品のフォーカスは、物語を追う道筋を踏み越えて
舞台上部の世界と冥府をひとつ視野のなかに重ねるように結ばれて。
生きることの冗長さや猥雑さの感覚が撚り合わせられて、
上下に隔てられていた
使い捨てられていくような生の感覚と
死の質感が
一つの繋がりとして広がっていく。
そして、お芝居の終わりには、
舞台全体が生死の俯瞰の位置にまで至っているのです。

カーテンコールで、
役者たちやスタッフが一人ずつ紹介される。
客席から、本当に自然な気持ちで
ダブルコールの拍手が起こる・・・。

観客としての個人的な話をすると
双数姉妹を一番最初に観たのは
1996年恵比寿イーストギャラリー「ハクチカ96」で、
そこからはほぼ公演のたびに通ったように思います。
KAKUTA主宰の桑原裕子さんや
北京蝶々の看板女優のひとりである帯金ゆかりさんなども
この劇団への客演を観て知った。
明星真由美さんや大倉マヤさんをはじめとして
秀逸な役者を多く輩出した劇団でもあって・・・。
1999年2月にシアターTOPSで観た「some girls」で聴いた
美しい女声のアカペラが今でも記憶に残っているし
2000年8月の「双数姉妹~神無きフタリの霊歌~」の世界観にも
心奪われた。
その後観た
「Occupied」、「やや無情・・」、「サナギネ」、「チューブラルーム」・・・
印象に深い公演が次々蘇ってきます。
ただ、終演後の
主宰のご挨拶を聞かせていただき表層的な寂寥感はやってきたものの、
その時には過去に埋もれ動けなくなっての休止ではなく、
作品を作り続けるなかで歩みをとめるという
作り手の志や矜持の方に心奪われ
この劇団が本当に歩みを止めることへの
観客としての痛みはあまりやってこなかった。
現に休止まえ最後の作品として
作り手がこの作品で舞台上に紡ぎ出したものには
クリアな感覚と浸透圧で
圧倒的に観る側を染めていく力があったわけで、
その充実感と休止がうまく一致しなかった。

物販で福袋を買って、
吉祥寺駅まで歩く中で、
舞台からもらった感覚がさらに解け,
自分のなかで、
観ることのできない次を観たい気持ちが膨らみながら
その行き所がないことに気がついたとき、
過去公演の記憶とともに
初めて本物の感慨が降りてきました。
無期限活動停止という状況にたいしての観る側の喪失感が
過去の記憶に対してではなく、
観る側が今回の公演で受け取ったものの先に醸しだされた時、
劇団がこれまで積み重ねてきた力にまで想いが至り
言いようのない寂しさに浸されたことでした。

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