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渡辺美帆子企画展「点にまつわるあらゆる線」展示の態での企みに満たされて

2012年2月12日マチネにて渡辺美帆子企画展『点にまつわるあらゆる線』を観ました。

会場は小竹向原のアトリエ春風舎。

その展示の客観性と極めて演劇的な表現の融合から浮かび上がってくる世界にしたたかに浸されてしまいました。

(ここからねたばれがあります。十分にご留意ください。)

構成・演出:渡辺美帆子
出演:村田牧子 菊池佳南 本田けい 水野拓(以上、青年団)
菊川仁史 原麻理子 ほか


開演時間の15分くらい前に劇場に到着、
すでに開場していて。
ドリンクチケットとトークンを2枚もらって
春風舎のスペースに足を踏み入れます
様々な展示のなかでも
場内にたくさんぶら下がっている紐にまず目が行って。
紐につけられたタグから
それらが一人の女性のデータをデジタル化したものであることが
わかる。
たとえば「鎖骨の長さ」といった身体的なスペックから
「私のことを好きって聞いたときの反応、両手を広げた長さを1cmとする」
といったかなり凝ったものまである・・・。
かと思えば彼女の重さを実際に持って体現できるものや
彼女の頬の柔らかさを実感できるものから
彼女の家のカギ、
抜けがらなんていうものまでが置かれていて・・・。

そして中央には彼女自身の部屋があり
静止した彼女自身が置かれている・・・。
会場をめぐりそれらを観た段階で
すでにひとりの女性が
不思議なリアリティをもって観る側にあって。
心拍を定義したメトロノームの音が
会場内に響いていることにも気づき
ふっと彼女の内側に置かれているような気分になる。

展示会場の中央で
彼女の一日が繰り返され始めます。
2月3日の日めくり、
目覚めて、化粧水を塗り、
ベランダに出て窓の外を眺め
マグカップの飲み物を口にし、
日記を書き、眠りにつく。

そのルーティンは、博物館の動く展示のごとく、
なんども繰り返されます。
で、次第に展示されている
彼女のハード的なデータや記録が
観る側にとっての彼女の一日とリンクしていく。
最初は漠然とその姿を眺めていたのですが、
そこに
他の役者たちの様々なパフォーマンスが重ねられ
彼女の内外の景色になっていくなかで
次第になにかが広がってくるのがわかる。
男たち、
制服の女子高生、
足ひれをつけて徘徊する女性・・・。
ふっと展示と彼女の動きの内外が逆転して・・・。
唐突に思えたそれらのことが徐々に変化して
彼女の内なる記憶や想いの具象として
一つの世界に取り込まれていく。
そして、客観的に彼女に属するものを観ていたはずが
夢と現のそれぞれの中で彼女の内側に去来するものを
観ることに世界が置き換わっている。

彼女自身の情報とそれらが機能して観る側に映し出されるもの。
準備されたハードウェア上でソフトが稼働して
会場全体が、
一つの演劇空間として機能していく感覚。
でも、そこから生まれ伝わっててくるものは
イメージを創り出すロジックが
実験的に示されるというような感覚を乗り越えて
人が日々を営むことのビビッドさの実感として残る。
デジタル化された表現やデータには
ハードウェアがソフトによって起動しているような
醒めたドライな感覚がありながら、
そこから浮かび上がってくるものには
時間の繰り返しと表現の拡張によって膨らんだ
豊かなリアリティをもった
一人の女性の感覚があるのです。

役者達も、それぞれに
観客と一体となった空間に
表現の居場所をつくり
イメージをその刹那に醸成する力があって。
しっかりと観る側に紛れ込み、
ルーズな空間に定義を与えていく演技に目を奪われる。

終盤日めくりが一日進み、
彼女が入籍をしたこと、さらには引っ越しをすることが示されます。
留まって展示されていた時間がから抜け出して
すっと時間軸が伸びていきます。
ループから外れた当たり前の時間の質感に
観る側にも解き放たれた感覚が訪れて・・・

会場を去る前に
もう一度ぐるっと場内を一回りすると、0
ガチャガチャとトークンや
冒頭には奇異に感じた
抜けがらと表示されているもの、
展示されているものそれぞれから
改めてニュアンスを感じることができて、
この表現、
本当にしたたかに作りこまれているなぁと再び感心。

その秀逸さに改めて瞠目したことでした。

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