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木ノ下歌舞伎 舞踏公演「三番叟/娘道成寺」

2012年2月18日ソワレにて木ノ下歌舞伎「三番叟・娘道成寺」を観ました。
会場は横浜にぎわい座の地下にある野毛シャーレ。

ここ、初めてではないのですが、エレベーターをおりても地下の閉塞感がなく、
場内に入っても観る側が集中できるような場が担保されていて。
良い空間だなぁと思う。

そのなかで、圧倒的な表現の味わいをもった2作品が上演されました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

場内に入ると、客席の眼前には
大きな幕があって観る側に場の空気の厚みを創り出していて。

少し早目に着いたので最前列の席をゲット。
特に客入れの音楽もなく、
でも次第に客席が埋まり
淡々と満ちてくる場内の期待感のようなものが心地よい・・・。

監修 :木ノ下裕一
舞台美術:杉原邦生

・三番叟

演出 : 杉原邦生
出演 : 芦谷康彦 京極朋彦 竹内英明

歌舞伎座の解説のような口調で
スピーカーから作品が語られ
そこに演者が登場します。
金の足袋、歩くことに、ふくよかなニュアンスを感じる。
たっぷりと場を膨らませる時間、
観る側がじれるほどの静が作られ、その分動の微細な部分が際立つ。・・・

しっかりとコントロールされた動きのなかでの
所作の一つずつからやってくるものの
豊かなこと。
冒頭の厳粛な雰囲気や、
常ならぬものと向き合う印象が次第に温度をもって
そこからさらに崩しが入っていく。

多分オリジナルというか
歌舞伎でなされる所作がきちんとわかっていれば
さらに面白いのだろうとは思う・・・
でも、その知識に欠けていたとしても
というか、私のように、ほぼ白紙の知識のぶっつけ本番で舞台と向き合っても
一つずつのシークエンスや刹那の動作のなかに
極上のウィットをたたえる広がりがしっかりと作り上げられていて
幕を使った演出が実にしたたか、
シーンに重なりのエッジが生まれ
個々の刹那からどんどんとイメージや可笑しさを
受け取ることができる。
一方で
冒頭の妙に上品でどこかレトロな解説が作りだす世界も
作品の礎となって
広がりをより引き立てるように機能していて、
舞台の疾走感にぐいぐいと閉じ込められていく。

ラストのシーンの常ならぬものからの戻り方にも
作品の視座が貫かれているようで
時間を全く感ることなく、
舞台の温度に浸りこんでしまいました。

・娘道成寺

演出・振付・出演 : きたまり

休憩を挟んでの舞台、
前半の三番叟のラストシーンで使われた
紅白幕がそのまま舞台を彩る中、
静のグラデーションを組み上げていくように
ダンサーから揺らぎが生まれていきます。
なんて柔らかな動きだろうとおもう。
ひとつの動作が観る側に届くころに
さらなる揺らぎが生まれて、
瞬きすら忘れて見入る・・、
そこまで惹きつけられるから
人形振りのごとくの首のカックンと傾ぐ切れに
しなやかで豊かなインパクトを感じ
舞台に前のめりになる。
人形振りのような所作が垣間見せる
刹那の生々しさとのずれ。
幾重にも静止の色があって、
幾重にも動きの質感が生まれる中、
そのデフォルメにしっかりと揺さぶられ
観る側の感情が満ち、
やがて溢れるような感覚と温度が醸し出されて・・・。

そして後半、服を脱ぎ捨てての動きの瑞々しさが
観る側に解き放たれたような感覚を与え
女性が抱く内心の坩堝のなかに
観る側を巻き込んでいく・・・。
表情に目を奪われる。
その表情の繰り返しや微妙な変化をひたすら追いかけて
物語を綴る
女性の想いの実存感に染められる。
幕や光の使い方にもぞくっとくるような洗練があって、
幕を整える表現から
古典の物語に編み込まれた想い、
女性が抱く狂気の普遍にまで
舞台の質感が整えられていく。

娘道成寺とて、
三番叟同様に、
確たる知識があるわけではありません
こちらも、歌舞伎の世界と重なっていけば
豊かに伝わってくるものがあるのだとは思う。
でも、よしんばそうであっても、
この演じ手が編み上げる世界には
観る側に瞬きを許さないほどの
密度と深さがあって、
ひたすら取り込まれてしまうのです。
もっといえば、
原典が見えているいないにかかわらず
古典に織り込まれた世界の豊かさが
語られているからこそ
作り手の表現の切っ先を
刹那の感性ではなく
しっかりとしたベクトルとして受け止められているようにも思えて。

劇場を出て、霙が舞う街を歩いても
その高揚が冷めることはありませんでした。
歌舞伎の世界が持つ豊かな間口、
一見さんであってもしっかりと取り込み
常連さんを更なる広がりに導くであろう
その力に改めて想いを馳せたことでした。

20日(月曜日)まで。

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