TOKYO Players Collection「全員彼女」したたかなキャスティングを生かす企み
少し遅くなりましたが、
2011年1月5日(プレビュー)と7日に、Tokyo Players Collection,「全員彼女」を観ました。
会場は王子小劇場。
作り手の作意のしたたかさと役者たちの表現の豊かさに目を瞠りました。
また、7日の終演後にはおまけの「二人芝居」があり、
その密度の高さにも強く惹かれました。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
比較的シンプルな舞台、
中央やや上手側に舞台を斜めにクロスするように置かれた布が目を惹く。
まだ、明かりがともりきらない中での演技から
すっと舞台に引き込まれて・・・。
やがて現れる女性たちの仕草の意味も最初はわからないのですが・・・。
前半は、ただことの成行きを見ているだけ・・・。
男女の出会いから別れの前までが
淡々と描かれていく。
女性が5人に分かれるところ、
彼女たちが等所とは別の一人の女性に変わるところ
さらには彼女たちの行動なども
ただあるがごとく見つめてしまう。
ところがするっとその時間が巻き戻り、
視座が男性のものから女性のものへと移ると
世界の見え方が大きく変わっていきます。
男性が女性の想いとともに生きていることがわかる。
ステレオタイプな男女の関係ではなく
女性の内心がしたたかに描き出されていく。
女性の想いが一方向ではないこと、
下世話な欲望から興味、さらには男性にたいする関心のようなもの・・・。
役者た紡ぎ出す女性の想いのパーツそれぞれに
明確なニュアンスがあって、
それらが男性の視座と重なって
男女の想いに息を呑むような綾が生まれていく。
心が一つになる刹那や
再び解けてしまう想いに心が痛む。
全体の表層を描き出す役者や、
さらに元カノ役のお芝居にも、ふくよかさや表現の密度があって。
キャスティングがとても魅力的なお芝居で・・・、
、
冬月ちき には、ナチュラルな存在感があって、
自然体の女性の外面的な雰囲気を作り上げていました。
男性の視座からの魅力や、
思いの曖昧さが、彼女の醸す質感の中に編み上げられていて。
小鶴璃奈が演じる元カノには、
一瞬にしてキャラクターの個性を表現するような
お芝居のふくよかさと豊かな表現力があって・・・。
きちんと女性の印象や温度が伝わってくるお芝居。
そのカレを演じた加藤岳史には、想いをまっすぐに見せる安定感があって。
演技の貫きが女性の内心の揺らぎをしっかりと受け止めていきます。
内心のパーツを演じた5人の女優たちにも
それぞれの魅力があって。
安田友加の冒頭の小さなお芝居が
作品自体のトーンとなり
貫かれたビビットさがそのまま、
女性の快活なイメージに結びついていきます。
近藤瑞季はなにかが出来ることの美しさをナチュラルに演じ
キャラクターの家庭的な部分の実存感を編み上げていく。
台詞のさりげなさに美しさをすっと差し込める力があって・・・。
三谷有紀はサブカル的な興味にしたたかに重さとクローズな感覚を縫いつけて。
ちょっとした台詞の出し方や間がとてもよくキャラクターのイメージに奥行きを作りだしていく。
安川まりにはキャラクターのパーツとしての色に加えて
想いの中庸さを女性の印象に編み込むような
演技のふくよかさを感じて。
また、想いを見る側に差し込むような切っ先もあって・・・。
黒木絵美花は女性の女性としての部分をぶれずにまっすぐに表現して。
お芝居にしっかりとしたボディがあって、
観る側に対する踏み込みをがっつりと持ったお芝居・・・。
李そじん が演じた女性は、足場というか存在のニュアンスを作りにくい
難しいロールだったように思うのですが、
彼女のお芝居にはキャラクターの想いの在りようがしなやかに編みこまれていて。
彼女の顕す想いには温度や風景があって
観る側をすっと取り込んでくれる。
キャスティングというのは
お芝居の力なのだなぁと改めて感心・・・。
ちなみにこの作品、
繰り返しでみて、冒頭からぞくっとくるほどに
緻密に作りこまれていることが分かりました。
冒頭の顔を出す女性の仕草が
具象するものが重なるだけで胸がときめいたり。
裏側を知って再び表をみると、
男性の感覚と女性の想いのかみ合わない部分が
さらに浮かび上がって。
2回目など、見ていて冒頭から終わりまで
シーンごとに前のめりになって引き込まれる。
作り手の作劇のセンスと力をがっつりと感じる作品でもありました。
*** *** ***
終演後に「岡田あがさ × 斎藤淳子」のおふたりによる
二人芝居(序)がありました。
それぞれに、私が無条件に委ねられる
大好きな役者さんで、
開演前からわくわくしていたのですが、
その期待さらに凌駕する舞台の密度に瞠目。
10分ほどの短編なのですが、
二人の醸し出す場には
ぞくっとくるような密度があって・・・。
ボリューム感と切れとウィットを持った演技に
大満足でありました。
この企画、もっと膨らむと良いなぁ・・・と
素直に思ったことでした。
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