中野茂樹+フランケンズ「夢みたい (2LP)」3回観たくなるハムレット
2011年12月23日、川崎アートセンターアルテリオ小劇場にて
中野茂樹+フランケンズの「夢みたい(2LP)」を観ました。
入場前に席の選び方については
説明があったのですが、
それは、観る側の迷いをしっかりと広げる以外の何物でもなく・・・、
会場に入った時には
どこに座ろうかとかなり悩みました。
でも、観終わって、ちょっと場内の他の席にも
足を運んでみて、
物語から浮かんでくるものを
いろんな質感で見せるそのやり方に納得。
この作品、座席を変えつつ少なくとも3回は観たかったかも・・・。
それがかなわないのがとても残念に思えました。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
ハムレット(シェイクスピア)より
翻訳:長嶋確
誤意訳・演出:中野茂樹
ドラマトゥルク:熊谷保宏
出演:村上聡一 福田毅 竹田英司 田中佑弥 洪雄大 野島真理 石橋志保 斎藤淳子 小島真希 北川麗
トロンボーン:後藤篤
自由席でした。
で、心乱れる座席選び・・・。
場内に入ると
舞台中央に大きな壁があって
客席にまで張りだしている。
近くにいってみると一応
壁には通り道があって上手と下手、
それぞれから制限付きで舞台を見通せるようにはなっていて。
何度かリピートできるのであれば、
前方の席に座ったかもしれませんが
1度しかみることができないので、安全に両方が見渡せる
中央後方の席をゲット。
壁を挟んで上手の白っぽく明るいサイドと
下手の紫っぽく暗い感じのするサイド、
双方を眺めながら開演を待ちます。
舞台が始まると
どこか淡々としたハムレットが始まる。
役者達には早い役柄のたち上げがあって。
描き出すものがとても鮮明で
ロールの雰囲気がすっと観る側に置かれる。
しかも、そこからキャラクターたちが舞台に根を生やすことがないというか
重厚さとか塗りこめるようなお芝居はほとんどなく、
物語の骨格がどこか線描されていくような感じ。
そこにはLP2枚分に収められた、
シェークスピア不朽の名作っぽいエッセンスが展開していきます。
名場面も強調されることなく
曲を流し聴くがことく
ダイジェスト的なハムレットを
見続けてしまう。
舞台から目をそらさせないのは
実は役者の力量の賜物。、
とりあえず、観る側が、舞台上の法則を理解するまで
語られる物語で観る側を引っ張って行ってくれる。
そして上手と下手のそれぞれのニュアンス、
舞台のルール、
さらには舞台全体を閲覧するような外の視座と
物語の法則のようなものに気づいた刹那、
舞台のニュアンスが魔法のようjに浮かび
とんでもなく面白くなってくるのです。
中央の壁を0軸として
立ち位置の座標てきなことや動きのベクトルが
演技や台詞にニュアンスのタグをつけて
そこに込められたものをくっきりと浮かび上がらせる。
通常の舞台であれば、
耳を研ぎ澄まして
キャラクターの想いを受け取っていくであろう重厚に演じられる場面が
重さも身も蓋もなく観る側に示される。
でも、そこには、物語の構造が描かれていて
ちゃんと観る側に残る。
たとえば、
ハムレットにしても、
その壁を行き来するだけで
想いや立場が観る側に伝わってくるし
ラスト近くにフォーティンブラスが上手から現れ
下手にはけていくだけで
したたかにニュアンスが浮かび上がってくる。
トロンボーンの音が語るもの、
さらには物語を見つめる視点が舞台の奥に置かれて
舞台の外側からの俯瞰を生み
単に物語の構造が戯曲のコンテンツにとどまらず
その舞台を包括する仕組みとして
観る側に渡されることで
舞台が座標情報とともに演じられているにとどまらず
観客にその感覚の視座とともに伝わってきて、
(私が座った場所からはほぼ音声だけだったけれど)
これ、面白い・・・。
終演後、劇場を出る前に、
舞台そばの客席に座って舞台を観たのですが、
見えてくる光景が中央と大きく違うことに驚く。
同じ舞台で同じように演じられているお芝居が
明らかに全く異なるニュアンスで伝わってくることが
容易に想像できて・・・。
理解が遅いといえば遅いのですが
ここに至って初めて
客席についての説明の意味を納得することができました。
日頃、普通の舞台を観ていても
座る位置で違うものが見えることというのはあるのですが、
この空間にはにはその違いをさらにあからさまに分光する
プリズムが据え付けてあるような・・・。
「ゆめみたい」という作り手の作意を
きちんと受け取ることができたかどうかは定かではありません。
でも、恣意的に薄っぺらい舞台の描き方だからこそ浮かび上がってくる
作品の飾られない本質的な部分は
とてもカジュアルに、しかも多層的に
舞台全体から観る側に流し込まれてきて、
がっつりと心に残ったことでした。
この作品、あちらこちらから観たいよなぁ・・・。
作り手や演じ手は大変なのかもしれませんが、
一日3回公演のブロック指定で通し券など作ってもらえると
もっと深くこの作品を深く捕まえることが
できるような気はするのですが・・・(←我儘)
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