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木ノ下歌舞伎「夏祭浪速鑑」幾重にも重なる楽しさや驚き

2011年12月16日ソワレにて木ノ下歌舞伎「夏祭浪速鑑」を観ました。

会場は横浜STスポット。
木ノ下歌舞伎については、以前「勧進帳」を同じ場所で観て、
その表現の魅力に嵌った団体。

今回、新しい演出の力を得て、
さらに魅力を持った舞台となっておりました。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください。)

演出:白神ももこ

監修・補綴:木ノ下祐一

美術:杉原邦生

出演:楠海緒 重岡漠 関亜弓 殿井歩 富松悠 松尾恵美 連木綿子

薄暗い劇場前のスペースで開演待ち。
で、いつもと違う楽屋口のようなところから入場すると、
いきなりそこはわくわくするような夏祭りの世界。
上方落語の「遊山船」で一気に世界が広がるときのような驚きがあって。
やぐらが組まれ、提灯がつられて
外の師走の風情や寒さなど
あっという間にどこかに消し飛んでしまう・・・。
作・演出や舞台美術までが
総動員という感じが観る側にわくわく感を作り出してくれる。
瓦版(パンフレット)もそこで購入して。

場のあったまりがあるから、
前半の物語の語り口の軽質さが
とても心地よく思えて・・・
マンガちっくな薄っぺらい表現から、
しっかりと見栄をきる態、
さらには役者達の身体を使ったニュアンスの作り方までが
心地よく受け入れられる・・・。
白神さんの人を喰ったような黒子ぶりなども
歌舞伎の世界を密室から
もっと広がりをもった位置まで解き放つ力になっていて。

そうしてみる側が
舞台に慣れてくると、
今度は舞台の文法が力を持ち始め
どこか上滑りに感じていた表現の切っ先までが
しっかりと観る側を引き込むようになってくる。
シーンごとの面白さが
物語の面白さへとランクアップしていく感じ。
前半・中盤・後半と
同じトーンで描くのではなく
遊び心と物語を紡ぐ志の比率が絶妙にコントロールされていて。
観る側としては歌舞伎の世界に対して身構えることなく、
無意識に物語に引き込まれていく感じ。
しかも、歌舞伎が場ごとに見せ場を作るように
この作品にも、
観る側を釘づけにするような
見せ場がいくつも作られていて・・・。
中でも終盤の「泥場」と呼ばれている部分の表現に
目を瞠る。
そこには、演出・振付・演じ手それぞれの
大向こうを唸らせるような
才のあふれ方を感じて・・・。

そりゃね、これを歌舞伎かって直球で問われると
ちょっと言葉に詰まったりもするのですが、
でも、単に、物語があってその筋書きが語られるのではなく
表現の手練を駆使して
その幹にたくさんの果実をつけて
観る側を楽しませる・・・。
そのスピリットには
おっかなびっくり初めて歌舞伎座に足を踏み入れたときに感じたのと
同じ肌触りがあって。

歌舞伎の技法は良いとこどりだけれど
それよりも
歌舞伎の豊かさが
この作品には取り込まれているような気がする。

いろんな部分でもっと洗練されていくべき余白はあるのでしょうけれど、
いたずらに歌舞伎の枠に縛られず
一方で歌舞伎の世界の広がりをしたたかにかもし出していく
理屈抜きでの楽しさが会場全体に満ちて、
しかも、ここ一番での光物もあって、
しっかりと観る側を凌駕する。
劇場に入ってから出て行くまで
あれやこれやで観る側をそらすことのない舞台は
とても魅力的に思えたことでした。

*** *** ***

余談ですが、今年一年の白神ももこさんの充実ぶりには
いまさらながらに目を瞠る。

3月にアトリエ春風舎で観た「母アンナの子連れ従軍記」では
物語に奥行きをつくり長野海ら出演者の魅力をしっかりと引き出し、
きらり★ふじみのツアー形式の公演では劇場自体に
世界を作りこむ・・・。
もちろんモモンガコンプレックスとしての魅力もあるのですが、
今回の公演などを観るにつけ
そこからさらに踏み出した彼女の才に
魅力にがっつりはまってしまって。

三番叟をはじめとする、来年の彼女の活躍から
ほんと、目が離せなくなりました。

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