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ミジンコターボ「儂が燃えて死ぬまでの噺」「スーパーソニックジェット赤子」個の編みあがりの安定と魅力

2011年11月6日午後に、ミジンコターボ、「儂が燃えて死ぬまでの噺」「スーパーソニックジェット赤子」の2作品を観ました。

会場は王子小劇場。

関西劇団のパワフルさと力の出し入れの細かさにがっつり魅了されて・・・。

なにか恐ろしく楽しい2ステージでした。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)

シンプルなステージ。

スタンダードだけれど高さが作られていて、
観客が役者を足元から観ることができる。

その上で、役者たちの気迫に満ちたお芝居が展開していきます。

両作とも

脚本・演出:片岡百萬両

・儂が燃えて死ぬまでの噺

男優8人の芝居。

本能寺の変の炎の中という設定で、
物語が立ちあがる。

男芝居の迫力にまず押されます。
でも、汗臭い感じはしない。武士の噺でありながら、
無骨な感じはせず、どこかに洗練があって・・。
その洗練が舞台にある種の軽さを創り、
笑いを導くスペースを創り出していきます。

役者にそれぞれの華があるのがすごくよい。
ぼけと突っ込みの切れはもちろんのこと、
所作にも、観る側に重さを感じさせない軽妙さと
ここ一番での力感があって。

物語の組み上がり方も表層のいい加減さとは裏腹に
したたかだと思う。
南蛮語(外来語)が出ると徹底的に指摘が入るあたりや
死が近ずくと次第に自縛霊が見えてくる下りが
物語を貫いて安定させ
観る側をそれぞれのシーンに編み込まれたものへと
集中させていく。

次第にトーンが変容していく物語が
笑いの添えものにならずに
観る側を着々と運んでいく。
ここ一番での踏み込みが上滑りせずに
きちんと密度を舞台に作り出していく。

なんだろ、懐が奥深いというか、
役者たちがココイチバンでのもう一歩を持ち合わせている感じ。

けっこう声を上げて笑ってしまう場面もあるのですが、
そこだけに観る側をおぼれさせず、
ラストシーンまできっちり運びきって。

出演:片岡百萬両 山田まさゆき 吉田青弘 鈴木洋平 菊池祐太
大塚宣幸(大阪バンガー帝国) 江本祥 武信貴行


尺は1時間15分、ダブルコール、
ボリューム感がありながらもたれない舞台・・・。
おもしろかったです。

・スーパーソニックジェット赤子

これ・・・、観ていてめっちゃ楽しかった。

大冒険エンターティメントといえばその通りなのですが、
冒険は役者の個々を見せるための
かりそめの姿のようにも思える。

物語を追う楽しさやはっちゃけ感は間違いなくあるのですが
それよりも、ひとつずつのシーンに
役者たちの魅力がてんこ盛りにされていて・・・。

ベタなように見えて、実は緻密にくみ上げたシーンがお芝居だとも思う。
集団で作りこむシーンの完成度が高く、
人数をかけたシーンでも舞台が煮崩れない。
だけど、役者が歯車のごとくパートをきちんと演じるというのとも
ちょっと違っていて、
個と全体のバランスをべたに単一にせずに
常に豊かな膨らみ感が舞台を満たすような関わり方が
それぞれの役者に生まれていて、
よしんばストーリーがぶっとんでいても
観る側が飽きたり醒めたりしないような密度というか熱が
全体の統一感のなかに常に醸し出されている。

加えて、どの役者にも、
自分が見せるところはを見せきるみたいな気概が感じられて
濃いのだけれど、
もたつきのない軽さとメリハリでサクサクとシーンを追っていけるのです。

出演:川端優紀 Sun!! 竜崎だいち 袋小路林檎(劇団PEOPLE PURPLE) 一瀬尚代(baghdad cafe')
南雲飛鳥(劇団往来) モリマリコ 片山誠子(ソラ豆) 高島奈々(七色夢想) 西分綾香
西村朋恵 丹下真寿美 竹田桃子(売込隊ビーム)


ほんと、1ダースを超える役者たちの
ひとりずつが骨太で
観ていて飽きない。
初見の役者さんも多いのですが、
埋もれきる役者さんがひとりとしていない・・・。
一方で、今秋、石原正一ショー、劇団ガバメンツ、そしてミジンコターボと
3作続けて拝見の片山誠子に今回もやられ、
再見の竜崎だいち、SUN!!、物語の骨格をささえる川端優紀などの色や個性にも
がっつりと魅せられて・・・。

まあ、関西の劇団が東京で公演を打つことは
費用や集客など大変なことも多いとは思うのです。
でも、地道に公演を打ちづづけていただくことは
首都圏、関西それぞれのお芝居を
それぞれに豊かにしていくように思える。

観る側のわがままかもしれませんし、
前述の石原正一ショーやガバメンツを観たときにもかんじたことではあるのですが、、
こういうクオリティや魅力を持った団体が
継続的に観ることができるのは首都圏の観客としても
とても素敵なこと。

ありふれた言い方ですが
頑張ってほしいし、
今回のようなチャレンジを少しでも応援したいなと思うのです。

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